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「【『パシフィック・リム』解説 3 】 イメージの源流は “クトゥルフ神話” だった」
まあ、10年くらい前に美術館が鑑定した結果、「ゴヤの弟子の作品だ」と分かったんですけども。
『巨人』という名の絵画作品なんですね。
こういうふうに、下には人が住んでる村落があり、その地平線の向こうには雲よりも遥かにデカい人間がいて、何かと戦っている。
これ、完全にファイティングポーズを取ってますよね。
つまり、太平洋の淵である沿岸部が襲われるという意味なんです。
サンフランシスコとか、マニラとか、日本とか、オーストラリアとか、香港とか、襲われるところは全部、パシフィックのリムなんです。
なので、そういうタイトルの映画になっています。
“イェーガー計画” という、対巨大怪獣ロボット計画の資金が膨れ上がり、「こんな計画は役に立たないから辞めろ!」と言われたことがあったんです。
その委員会の会議中に、イギリス代表の人が「今後、人類は海岸線より200km奥で暮らすことにすればいい。そうすれば、怪獣が海岸から襲ってきても大丈夫だし、イェーガーなどという巨大ロボットは必要ない!」と言い放つんですよ。
映画の中では、イェーガー計画を主導していたペントコストという黒人の司令官は、そんな話を文句ありそうな感じの顔をしつつも黙って聞いてるんです。
「ふざけるな。イギリスのどこに海岸線より200km奥の土地があるんだ? だいたい、お前らはパシフィックのリムにいないじゃねえか! 大西洋じゃねえか!」と。
こんなふうに、ガンガン毒づいているシーンがあって、僕は結構、好きなんですけども(笑)。
まあ、核兵器を使えば、実は倒せるんですけど。
ただ、怪獣1頭を倒すのに、核ミサイルが3発必要なんですね。
なので、怪獣が出てくる度に核ミサイルを3発も当ててたら、地球上に人類が住める土地がなくなってしまう。
「だから、巨大ロボットなんだ!」というふうに、ギレルモ・デル・トロ監督たちのチームは考えました。
怪獣というのは生き物ですから、とにかく予測不能の動きをするんです。
そんな中で、飛行機のような、ちょっと当たったら壊れたり落ちたりするような華奢な兵器では近づくことすら出来ない。
おまけに、プラズマ砲を使うわけで、ヘリコプターよりも、もっと重い荷物や電源を運べるような兵器でないと困る。
そして、戦車よりも丈夫でなくてはいけないし、その上、戦艦より素早く動けるものでなければならない。
この映画の中で、“イェーガー” というロボットは、右腕に仕込んだ “プラズマ砲” というのを、本当に怪獣の身体のギリギリの位置でぶっ放せる、そういうスーパー兵器として作られているんです。
「なぜ、至近距離でなければいけないのか?」については、後で説明します。
だから、当初はメチャクチャ デカくデザインされてました。
最初、デル・トロ監督は「エンパイアステートビルよりデカい」と言ってたんですよね。
つまり、身長450mくらい。
ロボットも怪獣も、それくらい巨大で、人間なんてとても敵わない神話的な存在として描き、そういうのが殴り合って戦う映画というのを、やりたかったと。
でも、「それは流石に無茶だ」と言われて、何度もデザインが直されて、今現在の100mを切るくらいというサイズに、怪獣もロボットも収まってきたんですね。
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