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「【『サピエンス全史』を語るよ 4 】 人類は “認知革命” によって地上最強の生物になった」
そういうのが、俺らサピエンスのポジションだと思っててください。
10万年前に、「僕らの祖先であるホモ・サピエンスの集団が、地中海にあるネアンデルタール人の集落を襲う」という事件がありました。
これは、ちゃんとそれを示すような化石とかが発見されてるんですね。
その結果、どうなったのかというと、もう、ボロ負けだったんですね。
サピエンスはあっという間に追い払われた。
これが10万年前の出来事です。
この7万年前からホモ・サピエンスの快進撃が始まったんですね。
さらに、4万年前には、太平洋を渡ってオーストラリアに到達します。
オーストラリアに行った時には、もうすでに、船とか、ランプとか、弓矢とか、服を縫うための針まで発明して、使いこなすようになっていたんですよ。
昔の教科書には、よく「道具が使えたから」ということが書いてあったんですけども、繰り返しますけど、100万年前には、ほとんどの人類種は道具を使っているんですね。
では、「言葉が使えたから」という理由はどうか?
今もコメントで「言葉」って流れてますよね。
このサバンナモンキーというのは、ちゃんと言語を持っているんです。
彼らは「気をつけろ。ライオンだ!」という言語を持っている。
と、同時に「気をつけろ。鷲だ!」という言語も持っているんですよ。
この2つの鳴き声は、別なんですね。
なので「気をつけろ。鷲だ!」という鳴き声を録音して、野生のサバンナモンキーに聞かせると、それを聞いた猿は一斉に上を向くんですよ。
全サバンナモンキーは、共通の言語を話しているようで、他所の土地で録音した「気をつけろ。鷲だ!」という言葉でも、みんな一斉に上を向くそうです。
つまり、人類だけじゃなく、サバンナモンキーというのも、かなり複雑な言語を持ってるんです。
サピエンスたちに起きたのは、遺伝子の突然変異によって脳内の配線が変わってしまって、言葉の使い方が変わったんです。
これを『サピエンス全史』では “認知革命” と呼んでいます。
しかし、僕らホモ・サピエンスは「ライオンはもういない」と言うことが出来るし、「朝はライオンがいたけど、今はもういない」と言うこともできる。
さらに、「今、川にライオンがいる。ということは、森は今、安全だ」と言うこともできる。
このように、言葉を繋いでいって論理的な構造を作れる。
それまでは、ライオンを倒した者というのは、実際に近くで見ていた者にしか「あいつ、ライオンを倒したんだ。すげえ!」って思えなかったんですけど。
そうじゃなくて、「あいつ、ライオンを倒したらしいよ」という噂を広めることもできるし、倒してもないのに、「俺、ライオン倒したよ」と言うことも出来る。
「あんなことを言ってるけど、本当か?」と言うことも出来るんですね。
これが、すごく大きな変化だったわけです。
これについては、今も人類学者の間で、わりと論争になってるんですけども。
実は、ホモ・サピエンスが言葉を覚え、認知革命を経て以後、話してきた言葉の大半は噂話らしいんですよ。
僕らがSNSとかで噂話をしたり、しょーもない話を拡散しているのは、実は人類の根幹に関わる行動であって、それが当たり前なんですね。
「噂話こそが人間を人間足らしめている要因だ」というふうに言われています。
虚構を使うことによって、サピエンスは群れのサイズを大きくすることが出来たんですね。
このダンバー数を超えると、集団は分裂して、近くにいる集団同士で殺し合ってしまう。
本当 言えば、ダンバー数を超える数の集団というのは生理的に受け入れられないはずなのに。
この虚構、さっき言った神様とかそういう概念を取り入れることによって、大きな集団を維持することが可能になったんですね。
そこで僕らが連帯感を感じることが出来るのは、認知革命によって、言葉から虚構を生み出し、それを信じることができるようになったからなんですね。
「この戦いに負けたら、お前の家族は敵に皆殺しにされる!」と言われたら…
…未来のことなんて誰にもわからないんですよ?
戦いに負けても、敵に皆殺しにされるかどうかなんて分からないですけども、その言葉を信じて戦うことが出来る。
これが、ネアンデルタール人に勝てた理由なんですね。
なぜかというと、ネアンデルタール人はホモ・サピエンスより力が強くて運動能力が高くて、手先も器用なんですけども、知ってる者同士しか信頼が出来ないんですよ。
群れの数の限界が150。
それ以上になるとお互いに反発しちゃうんですね。
なので、群れの数というのは150程度に限定された。
その上、守護神やあの世を信じてないので、負けそうになるとネアンデルタール人は撤退しちゃうんですよね。
当たり前ですけど、“種属の誇り” とか、“家族” のために命を落とすようなバカは、ネアンデルタール人には1人もいないわけですよ(笑)。
そして、「噂話と虚構によって、サピエンスは地球最強種になった」というのが、ここまでのまとめです。
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/05/03
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「【『サピエンス全史』を語るよ 4 】 人類は “認知革命” によって地上最強の生物になった」
ということで、ようやっとここからが本題です。
“認知革命” についてですね。
「なぜ、ホモ・サピエンス種は、他の種属を絶滅させるようになったのか?」という話です。
「なぜ、ホモ・サピエンス種は、他の種属を絶滅させるようになったのか?」という話です。
ホモ・サピエンスというのは、人類の中でも、特別 強いわけでも、賢いわけでもなかったんですよ。
さっきは “ドーベルマン” と言ったんですけども、僕が思うに、人類の中でのホモ・サピエンスのポジションというのは、おそらく “柴犬” なんですよ。
なんか、「ちっこいけど気が荒くて、やたらやかましい」という(笑)。
なんか、「ちっこいけど気が荒くて、やたらやかましい」という(笑)。
そういうのが、俺らサピエンスのポジションだと思っててください。
10万年前に、「僕らの祖先であるホモ・サピエンスの集団が、地中海にあるネアンデルタール人の集落を襲う」という事件がありました。
これは、ちゃんとそれを示すような化石とかが発見されてるんですね。
その結果、どうなったのかというと、もう、ボロ負けだったんですね。
サピエンスはあっという間に追い払われた。
これが10万年前の出来事です。
ところが、7万年前にも、同じネアンデルタール人の集落をサピエンスの一団が襲いました。
これどうなったかというと、今度は勝ったんです。
さらには、地中海どころか中東からアジアまで、ネアンデルタール人を次々と追い払った。
さらには、地中海どころか中東からアジアまで、ネアンデルタール人を次々と追い払った。
この7万年前からホモ・サピエンスの快進撃が始まったんですね。
そして、その快進撃は続いて、ついには僕らより強く賢いネアンデルタール人を、地球上から全部追い払ってしまいます。
さらに、4万年前には、太平洋を渡ってオーストラリアに到達します。
オーストラリアに行った時には、もうすでに、船とか、ランプとか、弓矢とか、服を縫うための針まで発明して、使いこなすようになっていたんですよ。
・・・
さっき話していた通り、250万年前から30万年前まで、サピエンスというのは、パッとしない地味な種属だったんですよ。
火を発見してから、ちょっとくらい行動範囲が広がったといっても、そこから先、20数万年間も、パッとしなかったはずのホモ・サピエンスに、一体、何が起こったのか?
なぜ、ここまで強くなったのか?
なぜ、ここまで強くなったのか?
「脳が大きくなったから」かというと、そんなことないんですよ。
他の人類種も、みんな脳が大きかったんです。
他の人類種も、みんな脳が大きかったんです。
昔の教科書には、よく「道具が使えたから」ということが書いてあったんですけども、繰り返しますけど、100万年前には、ほとんどの人類種は道具を使っているんですね。
「火を使いこなしたから」というのについても、さっきも言ったように、30万年前からいろんな人類種が火を使っています。
だから、それでもないんです。
だから、それでもないんです。
では、「言葉が使えたから」という理由はどうか?
今もコメントで「言葉」って流れてますよね。
でも、実は、言葉は人類だけのものじゃないんです。
・・・
「蜂だって言葉を持ってる」とか、「イルカも喋る」ってよく言われてるんですけど、最近では、そういった動物の言葉というのも、だいぶわかってきたんです。
それらの動物の言葉というのは、実は、わりと細かいんですよ。
たとえば、これは “サバンナモンキー” というお猿さんです。
「スカイブルーの金玉を持つサル」として有名なんですけども。
見てわかる通り、金玉がメチャクチャ綺麗な色をしていますよね(笑)。
見てわかる通り、金玉がメチャクチャ綺麗な色をしていますよね(笑)。
このサバンナモンキーというのは、ちゃんと言語を持っているんです。
彼らは「気をつけろ。ライオンだ!」という言語を持っている。
と、同時に「気をつけろ。鷲だ!」という言語も持っているんですよ。
この2つの鳴き声は、別なんですね。
なので「気をつけろ。鷲だ!」という鳴き声を録音して、野生のサバンナモンキーに聞かせると、それを聞いた猿は一斉に上を向くんですよ。
全サバンナモンキーは、共通の言語を話しているようで、他所の土地で録音した「気をつけろ。鷲だ!」という言葉でも、みんな一斉に上を向くそうです。
次に「気をつけろ。ライオンだ!」という鳴き声を録音して、他のサバンナモンキーに聞かせると、全サバンナモンキーは一斉に木に登るんですね。
つまり、人類だけじゃなく、サバンナモンキーというのも、かなり複雑な言語を持ってるんです。
・・・
じゃあ、7万年前の出来事とは何だったのかと言うと。
サピエンスたちに起きたのは、遺伝子の突然変異によって脳内の配線が変わってしまって、言葉の使い方が変わったんです。
言語自体は、イルカでもサルでも、おそらく犬でも猫でも、クジラでも、サバンナモンキーでも、持ってるんですよ。
ただ、その使い方がガラッとかわってしまった。
ただ、その使い方がガラッとかわってしまった。
これを『サピエンス全史』では “認知革命” と呼んでいます。
たとえば、サバンナモンキーは「気をつけろ、ライオンだ!」と言うことはできるんだけど、「もう大丈夫だ。ライオンはもういない」と言うことは出来ないんです。
しかし、僕らホモ・サピエンスは「ライオンはもういない」と言うことが出来るし、「朝はライオンがいたけど、今はもういない」と言うこともできる。
さらに、「今、川にライオンがいる。ということは、森は今、安全だ」と言うこともできる。
このように、言葉を繋いでいって論理的な構造を作れる。
おまけに、「あいつはライオンを倒した」という噂話ができるんですね。
それまでは、ライオンを倒した者というのは、実際に近くで見ていた者にしか「あいつ、ライオンを倒したんだ。すげえ!」って思えなかったんですけど。
そうじゃなくて、「あいつ、ライオンを倒したらしいよ」という噂を広めることもできるし、倒してもないのに、「俺、ライオン倒したよ」と言うことも出来る。
「あんなことを言ってるけど、本当か?」と言うことも出来るんですね。
これが、すごく大きな変化だったわけです。
更に大きな変化として、「我々にはライオンを倒したリーダーがいる! → 我々の守護神はライオンだ! → だから、我々はライオンのように勇敢で他の部族より強い!」ということを信じられるようになったんです。
こんなふうに、言葉の使い方が変わり、それによって物事の認識に変化が起こってきた。これを “認知革命” と言います。
・・・
ややこしくなったのでまとめました。
まず、「気をつけろ、ライオンだ!」という言葉。
これは、サバンナモンキーでも言えるんですよ。
次に、「ライオンは今、どこにいるだろう?」という言葉。
これは、サバンナモンキーでも言えるんですよ。
次に、「ライオンは今、どこにいるだろう?」という言葉。
言葉を想像化することによって、サピエンスは言葉遊びや論理というのを覚えた。
そして、大事なのは3番目ですね。
「彼はライオンを倒したらしい」という噂話。
「彼はライオンを倒したらしい」という噂話。
これについては、今も人類学者の間で、わりと論争になってるんですけども。
実は、ホモ・サピエンスが言葉を覚え、認知革命を経て以後、話してきた言葉の大半は噂話らしいんですよ。
僕らがSNSとかで噂話をしたり、しょーもない話を拡散しているのは、実は人類の根幹に関わる行動であって、それが当たり前なんですね。
「噂話こそが人間を人間足らしめている要因だ」というふうに言われています。
さらにすごいのが、この4番目の「ライオンは我が部族の守護神だ!」という、虚構を使えるようになったことです。
虚構を使うことによって、サピエンスは群れのサイズを大きくすることが出来たんですね。
・・・
チンパンジーの群れのサイズというのは「だいたい20頭~50頭」と言われてまして、それを超えると秩序が不安定になるそうです。
それ以上の数になると、不満を持った個体が他の個体を誘って群れを出て、別の群れを作るので、100頭を超える群れっていうのは、野生のチンパンジーではほとんど確認されていない、すごくレアなケースなんですね。
それ以上の数になると、不満を持った個体が他の個体を誘って群れを出て、別の群れを作るので、100頭を超える群れっていうのは、野生のチンパンジーではほとんど確認されていない、すごくレアなケースなんですね。
これは、人類も同じです。
人類の中で最強だったネアンデルタール人ですら、群れの数は150が限界であった。
人類の中で最強だったネアンデルタール人ですら、群れの数は150が限界であった。
この150という数を、聞いたことがある人もいるかと思いますが、社会学では “ダンバー数” と言います。
これは、「人類がなんとか意思統一が出来るギリギリの数」と言われてるんですね。
これは、「人類がなんとか意思統一が出来るギリギリの数」と言われてるんですね。
このダンバー数を超えると、集団は分裂して、近くにいる集団同士で殺し合ってしまう。
しかし、この「我々の守護神だ」とか「我々は神に守られている」という虚構を取り入れることによって、ダンバー数である150を超える数の集団を組織することが可能になった。
他所の部族であっても、たとえば “聖なる誓い” という約束みたいなものとか、もしくは “神の啓示” みたいなものを通じて手を組むことができるんですね。
他所の部族であっても、たとえば “聖なる誓い” という約束みたいなものとか、もしくは “神の啓示” みたいなものを通じて手を組むことができるんですね。
サピエンスたちは、ライオンが守護神の部族とかですね、鷲が守護神の部族というのがいたとしたら、たとえば休戦して共に戦ったりも出来る。
お互いにトーテムみたいな守護神像を褒めあったり、または互いの娘を交換して嫁にやったりとか、いろんな手段で、群れを巨大化することが出来る。
お互いにトーテムみたいな守護神像を褒めあったり、または互いの娘を交換して嫁にやったりとか、いろんな手段で、群れを巨大化することが出来る。
本当 言えば、ダンバー数を超える数の集団というのは生理的に受け入れられないはずなのに。
この虚構、さっき言った神様とかそういう概念を取り入れることによって、大きな集団を維持することが可能になったんですね。
たとえば、僕らはダンバー数を超える人数であっても、「ある野球チームのファン」であったりですね、もしくは「日本人」であったり、もしくは「〇〇県民」であったりということで、連帯感を感じることが出来る。
ところが、日本人とか県民のような概念というのは、単に「そこで生まれた」という過去の現象を指しているだけで、物理的な根拠のようなものは何もないんですよね。
そこで僕らが連帯感を感じることが出来るのは、認知革命によって、言葉から虚構を生み出し、それを信じることができるようになったからなんですね。
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おまけに、噂話によって、ホモ・サピエンスは実力以上の力を出せるようになります。
たとえば、守護神に選ばれた者が、「この戦いで死んだら、地上よりもっと素晴らしい場所に生まれ変わることができるぞ!」と言えば、なんと、それを信じて死ぬまで戦うことが出来るんですよ。
「この戦いに負けたら、お前の家族は敵に皆殺しにされる!」と言われたら…
…未来のことなんて誰にもわからないんですよ?
戦いに負けても、敵に皆殺しにされるかどうかなんて分からないですけども、その言葉を信じて戦うことが出来る。
これが、ネアンデルタール人に勝てた理由なんですね。
なぜかというと、ネアンデルタール人はホモ・サピエンスより力が強くて運動能力が高くて、手先も器用なんですけども、知ってる者同士しか信頼が出来ないんですよ。
群れの数の限界が150。
それ以上になるとお互いに反発しちゃうんですね。
なので、群れの数というのは150程度に限定された。
その上、守護神やあの世を信じてないので、負けそうになるとネアンデルタール人は撤退しちゃうんですよね。
当たり前ですけど、“種属の誇り” とか、“家族” のために命を落とすようなバカは、ネアンデルタール人には1人もいないわけですよ(笑)。
結果として、ネアンデルタール人は撤退を繰り返し、それを効果的に包囲していったホモ・サピエンスたちにやられてしまったというわけです。
まとめると、認知革命とはなにかというと、「突然変異による脳の配線替え」ですね。
そして、「噂話と虚構によって、サピエンスは地球最強種になった」というのが、ここまでのまとめです。
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「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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よい質問は、よい回答にまさる、と言われます。
みなさんの質問で、僕も予想外の発想ができることも多いです。
だから僕は、質疑応答が大好きです。
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