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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「岡田斗司夫のドイツ旅行記2 “ミュンヘン市街のなんちゃってゴシック”」

2018/02/13 06:00 投稿

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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/02/13
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今回は、ニコ生ゼミ2月4日(#216)から、ハイライトをお届けいたします。

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 岡田斗司夫のドイツ旅行記2 “ミュンヘン市街のなんちゃってゴシック


 僕が滞在したミュンヘンという都市には、18世紀の半ばくらいに作られたアザム教会なんかがあったんですけど。でも、大体の人は市の中心部に行くわけです。

 市の中心部には、別名 “ラートハウス” と呼ばれるミュンヘン新市庁舎という観光名所があるからですね。

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 これがその写真なんですけど。

 大抵の観光客は、これを見て「わー! ヨーロッパだ!」とか、「古い! カッコいい!」とかって思うんですよ。


 まあ、見て分かる通り、ゴシック建築の建物です。

 塔がとんがってますし、窓が細長くて、窓の上もとんがってるから、ひと目でわかるゴシックなんですけれども。

 だけど この建物、実は建てられたのが19世紀半ばという明治時代の建物なんですよ。

 こういった建築物は“ネオゴシック”と言われています。

 そんな今から150年くらい前に作られたメチャクチャ新しい建物なんですけど、観光客はこれを見て、ありがたがって写真を撮ってるんですね(笑)。

・・・

 どういうことかというと、さっき話したドイツ帝国が形成されつつあった時代、ドイツの人々は「ドイツとは何か? 自分たちのアイデンティティ-とは何か?」ということに悩んでいたんですよね。

 その結果、もう全員が復古主義に陥っていたんですよ。

 で、「昔のものは良い!」ということで、新しく街を作る時にも、とにかく古く見える建物ばかりを建てたんですよね。

 そうやって、“歴史ありまっせ感” を満載にした建物ばかりを造っていたので、明治時代の建物なのに、すごく風格ありげに見えるんですよ。

 それと同時に、この市庁舎の写真の端っこに写っている塔を見てください。

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 この塔も、ゴシック建築だったら、普通は塔を建てたら上に鐘を付けるはずなのに。

 「ドイツの技術力をみてください。精密機械でっせ」という事で、ここに世界最大の仕掛け時計を作って、3時とか4時に鐘が鳴る度に160体の人形が一斉に動き出すという、無駄にすごい仕掛けを作っているんです。

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 この鐘がなる時は、この小さい広場に何万人もの観光客が集まって、本当に動けなくなるくらいなんですけども。

 つまり、単にゴシックの建築を建てるだけじゃなく、「私達は精密機械を作れるんです」っていうウリを表現しようとしているんです。

 もう本当に、明治時代のパビリオン万博の考え方なんですね。

・・・

 しかし、この建物、なんせ後の時代になってから作った偽物だから、ゴシック建築としての詰めが甘いんですよ。

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(パネルを見せる。ミュンヘン市庁舎の塔の写真に赤ペンで印を書き加える)

 これを見ていただいたらわかる通り、本来だったら、この赤い丸をした所に、本を抱えていたり槍を持っていたりする聖人の彫像が入るはずなんですよ。

 だけど、そういうものが彫り込まれていないんですよね。

 
 なぜなら この建物は、“なんちゃってゴシック建築” だからです。

 ネオゴシックと呼ぶ人もいますが、僕はそんな言葉を認めません。

 これは、なんちゃってゴシックです。

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 下の方の、かろうじて見えたり人の手が届く範囲には、ちょっとだけ彫像が並べられているんですけど、上の方に行くと、もうスカスカになっていくんです。


 だけど、本来のゴシック建築に、こんな平べったい面があるはずがないんですよ。

 こういった空いたスペースには、全てガーッと彫像を配置するのがゴシック建築なんですけども、
これは なんちゃってゴシックだから。

 昔の建築物をなんとなく再現している“だけ”なんですよね。

 ゴシックとしての詰めが甘い。


 まあ、それでも、みんなはバンバン写真を撮ってるんですけども(笑)。

・・・

 おまけに、この建物自体、戦争で破壊されているんです。

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 これ、同じ建物の別の場所を撮った写真です。

 時計台に近いところと、遠いところです。


 時計台に近い方は、窓と窓の間の壁が滑らかです。

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 しかし、遠い方を見ると、窓と窓の間の壁は煉瓦がむき出しになっているのがわかると思います。

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 これ、何かというと、実はローマ時代の建物というのは、石を積みあげて壁を作っているんですね。

 石だけで出来ているからこそ建築的な価値が高いと言われるんですよ。


 ところが、後に、ルネッサンスの頃からローマの真似をして作った建物というのは、基本的に、もっと楽ちんなレンガを使ってプラモデル的に作った壁の表面に、“化粧板”としてパネルのように石の板を貼ってるんですよ。

 この建物は、そういった製法が統一されていないんですね。

 
 とにかく明治時代頃に急いでゴシック風の建物を建てたもんですから、ある部分はレンガがむき出し、ある部分はちゃんと化粧板をはめているということになっているんです。

 あとは、たぶん、戦争の爆撃の影響もあって、復元具合がバラバラだったりもすると思うんですけど、こういうふうに中身が見えちゃってるわけですね(笑)。

 ここら辺も、ゴシック建築としてはすごく甘いと思います。

・・・

 なぜ、こんなに爆撃されたのかというと、実はミュンヘンというのは、世界でも最初期に空爆を受けた都市なんですね。

 なんと、第1次大戦の時代に、当時は複葉機で、爆弾なんか4個くらいしか積めないような飛行機で、フランスから3回も爆撃を受けた。

 おかげで、街がかなり壊れちゃったんです。

 さらに その後、第1次大戦が終わって、ドイツが大不況だった時代に、アドルフ・ヒトラーという人物が現れて、有名な“ミュンヘン一揆”というのを起こします。

 これ、ミュンヘン一揆と言うだけあって、マジで“一揆”なんですよ。

 まあ、そのミュンヘン一揆にヒトラーは負けるんですけども。


 その結果、政治運動をもっと先鋭化させて、ナチス党というのを作るんですね。

 なので、ナチスの首都というのはミュンヘンなんですよ。

 ベルリンというのがドイツの首都であるとするならば、ナチスの首都というのはミュンヘンなんです。


 だけど、そのせいで連合軍から目の敵にされて、第2次大戦でも、もう徹底的に爆撃されたんです。

 まあ、さっきの変態兄弟の教会みたいなものは奇跡的に残っているんですけど。

 そのおかげで、街全体はぺちゃんこになってしまいました。


 だから、こういったゴシック教会風の市庁舎というのを復興したわけですね。

・・・

 この建物の裏手に回ると、こんなふうになっています。

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 これ、途中までは、頑張って作ってるんですよ。

 たとえば、階段がある斜めになっている廊下の部分では、壁や窓も斜めに切ってあるんですけど。

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 だけど、途中で力尽きたんでしょうね。途中からは、完全にコンクリートで作っています。

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 斜めの部分も、窓枠っぽい斜めの線を入れただけになってるんですよ。

 この辺の、「途中まではきっちり作ったけど、力尽きました」みたいなダメな感じというのが、俺、結構好きなんですよね(笑)。


 裏側にも、メチャクチャカッコいい塔があるんですよ。

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 これなんですけども。

 ちゃんと、ピサの斜塔みたいに螺旋階段が上まで続いている4層建ての塔なんですけど。

 もう力尽きて、はっきりとコンクリートで作ってるんですよね。


 わかりますよね?

 足場とか、みんなコンクリートなんですよ。

・・・

 要するに、これらは“ディズニーランド”なんですよ。

 たとえば、ディズニーシーに行くとベニスの街とか、ディズニーランドに行ったらニューオリンズの街っていうのが作ってありますよね。

 ああいうところに行くと、普通の人は「すごーい!」って喜ぶんですけど、ちょっとマニアックな人は、「こんなもの偽物だ」とか言うんですよ。

 「ニューオリンズ風とか、ヨーロッパ風に作っただけの偽物だ。そんなもので喜ぶなんて、わかってないね」って言う人もいます。

 まあ、そう言ってしまう気持ちもわかるんですけど。


 でも、そんなことを言いだしたら、このミュンヘンの観光名所だって、もう “ド” のつく偽物なんですよね。

 完全に、ゴシック的な建物をコンクリートで作っているだけなので。


 これ、本当に中国にあってもおかしくないくらいの偽物建築なんですよ(笑)。

 なので、「ディズニーランドを偽物と言う人は、もうちょっと勉強したらどうですか?」っていうふうに思うんですけども。

 まあ、それを見つけられて、僕はすごい楽しかったですよね。

 「うわー! 偽物だー!」って思いながら写真を撮るのが、すごい楽しかったです。

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