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「岡田斗司夫のドイツ旅行記2 “ミュンヘン市街のなんちゃってゴシック”」
![ae2fb58390a4ec91d6ac94ec4d0268cfb2f06dd3](https://bmimg.nicovideo.jp/image/ch923/558488/ae2fb58390a4ec91d6ac94ec4d0268cfb2f06dd3.png)
これがその写真なんですけど。
大抵の観光客は、これを見て「わー! ヨーロッパだ!」とか、「古い! カッコいい!」とかって思うんですよ。
塔がとんがってますし、窓が細長くて、窓の上もとんがってるから、ひと目でわかるゴシックなんですけれども。
だけど この建物、実は建てられたのが19世紀半ばという明治時代の建物なんですよ。
こういった建築物は“ネオゴシック”と言われています。
そんな今から150年くらい前に作られたメチャクチャ新しい建物なんですけど、観光客はこれを見て、ありがたがって写真を撮ってるんですね(笑)。
で、「昔のものは良い!」ということで、新しく街を作る時にも、とにかく古く見える建物ばかりを建てたんですよね。
そうやって、“歴史ありまっせ感” を満載にした建物ばかりを造っていたので、明治時代の建物なのに、すごく風格ありげに見えるんですよ。
![90c0f4d4c571b3e26f38f2df07188c0887781519](https://bmimg.nicovideo.jp/image/ch923/558490/90c0f4d4c571b3e26f38f2df07188c0887781519.png)
この塔も、ゴシック建築だったら、普通は塔を建てたら上に鐘を付けるはずなのに。
「ドイツの技術力をみてください。精密機械でっせ」という事で、ここに世界最大の仕掛け時計を作って、3時とか4時に鐘が鳴る度に160体の人形が一斉に動き出すという、無駄にすごい仕掛けを作っているんです。
![a3783f2740295447eed8e421cbff0ae153d71708](https://bmimg.nicovideo.jp/image/ch923/558492/a3783f2740295447eed8e421cbff0ae153d71708.png)
この鐘がなる時は、この小さい広場に何万人もの観光客が集まって、本当に動けなくなるくらいなんですけども。
もう本当に、明治時代のパビリオン万博の考え方なんですね。
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だけど、そういうものが彫り込まれていないんですよね。
なぜなら この建物は、“なんちゃってゴシック建築” だからです。
ネオゴシックと呼ぶ人もいますが、僕はそんな言葉を認めません。
これは、なんちゃってゴシックです。
![2588b9b1de1650a5738e7baf3e4929cb0c8cc059](https://bmimg.nicovideo.jp/image/ch923/558494/2588b9b1de1650a5738e7baf3e4929cb0c8cc059.png)
下の方の、かろうじて見えたり人の手が届く範囲には、ちょっとだけ彫像が並べられているんですけど、上の方に行くと、もうスカスカになっていくんです。
こういった空いたスペースには、全てガーッと彫像を配置するのがゴシック建築なんですけども、
これは なんちゃってゴシックだから。
昔の建築物をなんとなく再現している“だけ”なんですよね。
ゴシックとしての詰めが甘い。
まあ、それでも、みんなはバンバン写真を撮ってるんですけども(笑)。
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時計台に近いところと、遠いところです。
時計台に近い方は、窓と窓の間の壁が滑らかです。
![ffa7931125640d61699d6107cad7e0d43e1eee41](https://bmimg.nicovideo.jp/image/ch923/558498/ffa7931125640d61699d6107cad7e0d43e1eee41.png)
しかし、遠い方を見ると、窓と窓の間の壁は煉瓦がむき出しになっているのがわかると思います。
![52e7d391a3aa6e4344d1eee672536cc4f1e37a85](https://bmimg.nicovideo.jp/image/ch923/558499/52e7d391a3aa6e4344d1eee672536cc4f1e37a85.png)
石だけで出来ているからこそ建築的な価値が高いと言われるんですよ。
ところが、後に、ルネッサンスの頃からローマの真似をして作った建物というのは、基本的に、もっと楽ちんなレンガを使ってプラモデル的に作った壁の表面に、“化粧板”としてパネルのように石の板を貼ってるんですよ。
とにかく明治時代頃に急いでゴシック風の建物を建てたもんですから、ある部分はレンガがむき出し、ある部分はちゃんと化粧板をはめているということになっているんです。
ここら辺も、ゴシック建築としてはすごく甘いと思います。
おかげで、街がかなり壊れちゃったんです。
これ、ミュンヘン一揆と言うだけあって、マジで“一揆”なんですよ。
その結果、政治運動をもっと先鋭化させて、ナチス党というのを作るんですね。
ベルリンというのがドイツの首都であるとするならば、ナチスの首都というのはミュンヘンなんです。
だけど、そのせいで連合軍から目の敵にされて、第2次大戦でも、もう徹底的に爆撃されたんです。
まあ、さっきの変態兄弟の教会みたいなものは奇跡的に残っているんですけど。
そのおかげで、街全体はぺちゃんこになってしまいました。
だから、こういったゴシック教会風の市庁舎というのを復興したわけですね。
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たとえば、階段がある斜めになっている廊下の部分では、壁や窓も斜めに切ってあるんですけど。
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だけど、途中で力尽きたんでしょうね。途中からは、完全にコンクリートで作っています。
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斜めの部分も、窓枠っぽい斜めの線を入れただけになってるんですよ。
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ちゃんと、ピサの斜塔みたいに螺旋階段が上まで続いている4層建ての塔なんですけど。
わかりますよね?
足場とか、みんなコンクリートなんですよ。
ああいうところに行くと、普通の人は「すごーい!」って喜ぶんですけど、ちょっとマニアックな人は、「こんなもの偽物だ」とか言うんですよ。
「ニューオリンズ風とか、ヨーロッパ風に作っただけの偽物だ。そんなもので喜ぶなんて、わかってないね」って言う人もいます。
まあ、そう言ってしまう気持ちもわかるんですけど。
でも、そんなことを言いだしたら、このミュンヘンの観光名所だって、もう “ド” のつく偽物なんですよね。
完全に、ゴシック的な建物をコンクリートで作っているだけなので。
これ、本当に中国にあってもおかしくないくらいの偽物建築なんですよ(笑)。
なので、「ディズニーランドを偽物と言う人は、もうちょっと勉強したらどうですか?」っていうふうに思うんですけども。
まあ、それを見つけられて、僕はすごい楽しかったですよね。
「うわー! 偽物だー!」って思いながら写真を撮るのが、すごい楽しかったです。
「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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