林先生っているじゃないですか。
「今でしょ!」の林先生ですね。
あの人が友達論というのを語っていて、それがちょっとネットのニュースで炎上していて面白かったんですけども。
昨年の11月に放映された『林先生が驚く 初耳学!』っていうテレビ番組があって、その中で友達論が話題になったそうです。
元々は『プレジデントオンライン』っていうオンライン雑誌に掲載された、『"小中学校の友人"なんてクソみたいなもの』っていう記事がテーマになってて。
林先生は「小中学校の友達なんて、クソみたいなもの」 というふうにおっしゃって、それが番組内でツッコまれたそうなんですね。
それで林先生が言い訳したのが、「いや、そういう意味じゃなくて、この統計を見てください」と。
東京大学とか、そういう いい所 に行っている人たちにアンケートを取ったら、「地元の友達と年に何回 会いますか?」と聞いたら、実は半分ぐらいの人がゼロって答えてるんですよと。
つまり地元の友達って、その小学校・中学校ぐらいの時には「この人たちとの関係が一生続いて、この人たちとの関係が全部だ!」って ついつい思うんだけども、長い人生で考えたら、もうそいつらと ほとんど縁が無いのが当たり前。
っていうのを話したそうなんですけどね。
で、コレに対して、僕も いつも友達とか、そういうのに関して話しているので、今日は そこら辺を追加で話してみようかなと思いました。
ま、結論から言うと、断言するのは難しいんですね。
俺は「友達なんてクソ」 っていう断言もムリだし、「いらない」 っていう断言もムリだし。
だからといって、「いや、違うよ! 友達は大事だ!」 っていう断言もムリだっていう。
この“断言”が、実は難しいんだって話なんですよ。
で、林先生 自体は、もうこれは一昨年ぐらいから何回も言ってるんですよ。
オードリーの若林との対談で、「林先生は友達は多いんですか?」 って聞かれたときに、林先生は「僕はゼロか、ギリギリ1。 授業でも言ってますよ。 人生で一番いらないものは、友達だって」 ってふうにガンガン答えててですね。
で、ここから先は理論武装に入ります。
「人間の属する共同体を、ゲマインシャフトとゲゼルシャフトに、僕は分ける事にしています」と。
ゲマインシャフトというのは血縁家族とか。
利益なんか関係なく集まってる。
だから友達同士なんかは、こっちです。
こっちにいるから「得するから付き合う」っていう友達なんか、いないじゃないですか。
利益を考えなくても、コイツ等といると楽しい。
これが、ゲマインシャフトですね。
ゲゼルシャフトというのは、利益を求めて人間が集まる。
ま、株式会社に人が集まるみたいなもんですね。
番組のスタッフというのは、一緒に利益を求めて戦う。
そういう人たちとコミュニケーションが取れて、良い結果が出て、そしたら視聴率が上がると。
そこに協力を惜しまない。
そこでの仕事仲間は、どれだけいてもいいと。
で、若林が「それは友達じゃなくて、仕事仲間ですよね?」と。
そしたら「みんなで苦労しながら、あーだこーだと言って、視聴率が1%でも上がったら嬉しいじゃないですか」って林先生が言って。
それで「ゲゼルシャフトでの仲間は必要だけど、ゲマインシャフトでの友達はゼロでいい」っていうふうに言います。
さて。
じゃあ、この林先生の言っている友達ゼロ理論というのは、元々はどこにあったのかっていうと、さらにその2年前。
2014年に『笑っていいとも!』に出たときに、林先生はタモリさん と対談してるんですね。
それでタモリさん と対談したときの、タモリさん の名言ですね。
「友達は いらない。諸悪の根源である」
これが、林先生の原作なんですよ。
タモリさん、凄いですよね。
諸悪の根源とまで言ってるんですけども(笑)。
でもタモリさんは、ちょっとニュアンスが違うんですよ。
『友達100人できるかな』っていう歌が嫌いだと。
何でかっていうと、「友達がいっぱいいる事の、何が誇りなんだ」と。
「友達の数が多いと人生が豊かになるなんて、とんでもない勘違いだ」と。
「確かに友達が集まって団体になると、楽しい」
「楽しい事は認める」
「だけど結局、その友達の“輪”以上の事が出来ない気がする」と。
すごいよね。
『笑っていいとも!』をやっていて、「友達の輪!」って言ってたタモリさんが、「友達の輪 以上の事が出来ない」ていうふうに言ってて(笑)。
で、「一人になったほうが、可能性が広がる」と説くと。
さらに「今は一人だと人間の価値が低く見られる」。
「学食で一人でご飯を食べていると、“アイツは最低の人間だ”というふうにイジられる」と。
「だから、それがイヤでトイレでご飯を食べるらしい」。
で、ボッチと呼んだり、便所飯と呼んだりするという風潮を嘆き、「一人が良い」、「一人で充分だ」と林先生に語ったという記録が残っててですね。
ま、これは、ちょっとずつニュアンスが違うんですね。
タモリさんが言ってる事は、友達っていうのは、良いもので素晴らしいものなんだけども、その輪の中にいると、その“輪”以上の事が出来ないので制限になると。
逆に、一人になる事を恐れていたり、差別されたりすると、友達の輪っていうのを自分から求めてしまって、自分を見失ってしまう。
この“見失う”っていう事が、タモリさんが一番恐れている事なんですよ。
それに対して林先生が言っているのは、メチャクチャな理論武装(笑)。
ゲマインシャフトとゲゼルシャフトに分ける事によって、機能集団としての仲間は欲しいけども、単なる意気投合する友達というのは いらないと。
で、僕もどちらかというと林先生 型の考え方なんですけども、こういうものって断言すると、だいたい間違いになっちゃうんですよ。
僕が そうゆうふうに思うきっかけっていうのは、大前研一っていう人がいるんですけども。
大前研一が昔、都知事に立候補するという きっかけになったのが、国富論っていうベストセラーを書いたからなんですね。
その国富論の中では、徹底的な国際分業というのが書かれていた。
たとえば「日本の農家は、米を作る必要なんか無い」と。
米を作るのは、もっと肥沃な大地で、人間がいっぱいいて、地面自体も広い所で作った方が安いに決まっていると。
「安い海外で作れ」
「日本の農家は、米を作るのは止めろ」と。
同じように、日本の漁業は魚を取るのなんか止めてしまって、日本の漁業はレジャーに特化して、すべてヨットとかに貸し出した方がいいよと。
何でかっていうと、日本の海岸線って あんなに広いのに、それをわずか数十万人の漁業組合の連中が独占して、普通の人間が魚を釣るのも、ボートをするのも、いちいち漁業組合の許可を取らなきゃいけないと。
これが日本の発展をどれぐらい邪魔してるかっていうのを、熱く熱く熱く熱く語ってるんですよね。
で、この大前先生の国際分業論っていうのは、原則的に間違ってないんですよ。
原則的に間違ってないんですよ。
これをもし非難するんだとしたら、東京に住んでいる人間は、田舎で米を作っている事に関して、言い訳が出来ないわけですよね(笑)。
僕ら日本も、日本人の中で分業をしてるから、基本的に分業論っていうのは否定が出来ないわけなんですけども。
しかし、この国際分業論という原則と、現状は違うんです。
大前さんが言っているのは、完全な自由貿易が成立している事が前提なんですね。
つまり完全な自由貿易が無くて、今みたいに貿易障害があったり、関税があったり、もしくはその国によって政治統治の違い方っていうものがある以上、原則的に正しい事でも現状では無理すじになっちゃうわけですね。
で、林先生のゲマインシャフト論も、原則的には、ぜんぜん間違ってないんですよ。
ぜんぜん間違ってない。
友達なんか、いらない。
仲間だけで充分。
僕も、そう思います。
原則的には間違ってないんです。
けども、それは林先生とか、林先生みたいなタイプの人にだけ当てはまる事なんですよ。
林先生は、僕の言う四タイプでいうと“司令型”なんですよね。
で、司令型の林先生たちっていうのは派閥を作るから、ゲゼルシャフト(職能集団)を作るのに すごく向いてるので、それを肯定的に語りがちなんですよ。
それに対して、たとえばタモリさんとか、あとは内田樹さんなどは“法則型”なので、孤立を好んでしまうんですね。
なのでゲゼルシャフト、いわゆる林先生が褒め称える「一緒に視聴率を上げよう」という仲間すら否定するんですね。
法則型ですから(笑)。
で、注目型は、僕みたいな人間とか、あとは小倉智昭さんとかもそうなんですけども、孤立を嫌がるから、逆にゲゼルシャフトに向いてるんですね。
職能集団みたいなので、どんどん人を集めるのに向いてると。
で、カズレーザーとか、ちょっと古い例になるけど筑紫哲也さん。
この辺は理想型なんで徒弟制度を求めるから、ゲマインシャフト、いわゆる血縁集団とかに向いてると思います。
人間ってね、断言に憧れてるから。
カッコイイ断言を聞くと、林先生みたいな「友達はクズだ」とかいうのを聞くと、「その通りに生きたい」とか、「そう生きなかったから、自分はダメなんだ」というふうに、ついつい考えちゃうんですよね(笑)。
でも、断言っていうのは面白がるのが丁度ぐらいですから。
自分に向いている断言を取り入れるのは良い事ですけどもね。
林先生とタモリさんと、二人とも言ってる事は同じながら、それを言っている動機が まるで違うっていうのを考えると、あまり そういう断言っていうのを本気で受け取っても しょうがない。
面白がるぐらいが丁度だ、というのが分かると思います。
僕が時々 断言するのも、その程度のニュアンスで聞いてもらえばいいと思います。
コメント
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林先生やタモリさんなら「断言」して炎上しても、怖くないからちょっとうらやましいですよね。