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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2017/11/23
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今回の記事は、11月12日に『シン・ゴジラ』地上波初放送を記念して行われた実況放送からハイライトをお届けいたします。


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 「『シン・ゴジラ』の爽快感は俳優やプロデューサーのクリエイティヴを許さない作り方から生まれている」


 (本編時間0:00:00~ 映画冒頭)

 まずは、昔のゴジラシリーズと同じように、「東宝」のテロップが流れる。

 『キングコング対ゴジラ』あたりの、カラーになった頃から始まった、オプティカル合成でやってる時代の東宝マークだね。

 最近の東宝映画で、このマークをこんなに長い秒数で見せる作品は珍しいよね。

 そして、初代の『ゴジラ』と同じ、「東宝映画作品」という製作会社名を一枚看板で出して、その後で「シン・ゴジラ」というタイトル。

 その後の映倫のマークは、どうやっても入れなきゃいけないものだから、ど真ん中に小さく入れるという。これは、庵野の「映倫のマークを意地悪く入れる」という、いつものやつだよな(笑)。


 そして、タイトルがあけると、いきなりプレジャーボートのシーンから始まる。

 ああ、やっぱり展開が早いよね。

 漂流したボートの映像がまず流れて、そして「デッキに人はいません!」、「遺留物有り!」という台詞が続く。

 そして、いかにもこれを見てくださいという感じで映し出される、並べられた靴。
 これは「この靴の持ち主は自殺した」っていう印だね。

 なんでこんな位置に靴を並べてるのかというと、船の後ろの方にこれを並べちゃうと、船内にカメラが入った瞬間に、ネタがバレちゃうからだ。


 そして、次の瞬間、バーンと水蒸気が上がる。
 
 この辺から、「ある人が船から飛び降りて、そのおかげでゴジラが現れた」っていう因果関係が示されてる。

 で、また、すぐさまアクアトンネルの事故が起きる。


 すごいね。

 映画が始まってから、まだ2,3分だというのに、もう、ゴジラがドンと出てくる。

 本当にテンポがいいんだよ。あらゆる映画って、これくらいのテンポでなきゃダメだと思うんだけど。

 ここからの状況説明のためのナレーションも、一つ一つのセリフがメチャクチャ被ってるよね。

 『シン・ゴジラ』では、こういう場面では、最初のセリフに被せ気味に、次のセリフを入れてるんだけど、これがスピード感を生んでいる。

 普通の邦画って、どうしてもこういうセリフを聞かせようとしちゃうんだよ。

 ナレーションとかがあったら、絶対に言葉を被せずに、セリフを言い終ってから0.5秒くらいの間を置いて次のセリフを入れるものなんだけど。

 このセリフの入れ方は上手い。

 このニコニコ動画みたいなカットも、セリフ、下のテロップ、画面上に流れるコメントっていう、情報量がとにかくすごいよね。

 こういった圧倒的な情報量で緊迫感を生み出す画面作りは本当に上手いよ。

・・・

 (0:18:50~ 自衛隊の防衛出動を検討するシーン)

 この、会議で人が喋っている画面に法律の条文が被るのは面白いね。

 「延々延々、法律に振り回されて話が進まない」という場面で、その前提となっている条文を画面にバッと出すというのは、実はギャグなんだよな。

 でも、それ以上に、これをやることで画面全体の見栄えが変わる。

 『シン・ゴジラ』では、とにかくアブノーマルな構図や、こういった見た目の移り変わりというのを最優先して画面を作っているんだ。

 なぜなら、この映画って、放っておいたら部屋の中で人が話しているだけのシーンばっかりになっちゃうんだよ。

 面と向かった会議のシーンというのは、緊迫感があるように見えるんだけども、これをずっと続けてたら、すぐに単調化するんだ。

 だから、今の、法律の条文がそのまま表示されるみたいな、見た目的に面白い場面を入れているんだね。


 で、次は総理を含めて、防衛出動するかどうかの話し合いのシーン。

 この総理の「防衛出動は大変だぞ!?」みたいな日本のドラマ的なセリフの言い方、僕はやっぱりダサイなって思うんだけど。

 そう思った瞬間に、カットがパンと切り替わっちゃうでしょ?
 これを演じている俳優さんは、こういうの、すごく嫌がるよね。

 演じている俳優としては、「悩んでいる中、決心する」というところまでをワンカットで見せたいはずなんだよ。

 それが演技だから。

 こんなふうに細切れにされると、演技なんて見せられないんだけども、ここでは細切れにしちゃってるよね。

 つまり、「俳優を使い倒している演出」だというのが、ここでわかる。

 俺はね、これが邦画の新しい形、映画の新しい形だと思うんだけど。
 まあ、実際に演じている俳優としては、こういうのを嫌がるよね。


 次に、総理に「自衛隊を出すか否か」の結論を迫る人達の顔がどんどんアップになっていき、それにつられるように、総理を映すフレームもどんどん顔に寄って行く。

 そして、カットが切り替わって「防衛出動を総理が宣言」というニュースが流れる映像に変わる。ここもいいね。

 総理役の俳優さんが「では、宣言する!」みたいに、苦渋の決断を下すところは画面に映らないじゃん。

 これも、やっぱり俳優としては、やりがいがない。

 かわいそうにな、本当に(笑)。

・・・

 (CM中)

 お、CMになった。やっぱり面白いね。

 この前、『関ジャム完全燃SHOW』を見てたら、ゴジラの音楽担当のプロデューサーの おばさん が出てたんだ。

 みんな、もう『シン・ゴジラ』の話を聞きたくてしょうがないんだけど、でも、そのおばさんは、すごく言葉を濁すんだよね。

 それはなぜかというと、『シン・ゴジラ』っていうのは、映画の音楽担当プロデューサーが、まるで仕事させて貰えなかった映画だからなんだよ。

 というのも、これは今、世の中に出ている資料とかにも書いてるんだけど、現場では、とにかく庵野の演出は不評だったんだよね。

 撮影の現場では、俳優から出てきた不満、スタッフから出てきた不満を、樋口真嗣が全部「まあ、まあ、まあ、」ってやってたんだけども。

 これは、音楽に関しても同じだったんだよね。


 打ち合わせをする場合、監督が「このシーンは『怪獣大戦争』の曲で」とか、「ここは『エヴァ』の音楽で」って言うと、たぶん、音楽プロデューサーも「じゃあ、私がそこで音楽を差配して」とか言うと思うんだけど。

 庵野監督は、そういう、現場のスタッフの「じゃあ、ここは私の担当で」みたいな頑張りや、クリエイティブを一切許さないんだ。

 「あんたらのそんなクリエイティブなんか要りません。ここは『怪獣大戦争』のまんまでいいです」とか、「ここは『エヴァ』の音楽を入れます」みたいに。
 
 こういうことをすると、現場の管理職というか、間に入ってクリエイターとかを使ってる人らの仕事が、綺麗になくなっちゃうんだよね。


 これ、俺にしてみれば、「うわあ、それは嫌な監督だろうな」と思う反面、「ざまあ見ろ!」って思うんだよな。

 だって、日本の音響監督とか音楽監督とかって、ほとんど仕事なんかしてないんだから。

 クリエイターと監督が直に打合せをすれば済むのに、間に何人も何人も偉い人が入ってくるから、ろくなものが出来ないというか、“間に入って手柄を取りたがるヤツ”が多いんだけども。

 そこらへんを全部ぶっ飛ばしちゃったっていうのが、『シン・ゴジラ』を見ている時の爽快感にも繋がってると思うんだ。

 これは、同時に、さっきから話している、「どうせ、日本の俳優なんか、ほとんど演技が下手なんだから、演技なんかさせなくていいんだよ!」……って、庵野君がそう思ってるかどうかは知らないけど、俺はそう思ってるんだよ(笑)。

 そういう日本の俳優的な演技をバーンとやめさせるという、この作り方にも繋がってるよね。


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