「お金はいらなくなる? 岡田斗司夫に学ぶ経済のパラダイムシフト」
一連のVALU騒動や専門家の時間を売買するサービスTimeBankがスタートするなど、今や「評価経済」の仕組みは着々と整備され、経済的な規模もより巨大化するのではないかと期待されています。
そこで評価経済社会の提唱者にして先覚者である岡田斗司夫さんに、あらためて評価経済社会の現状とその中で生きるコツを伺いました。
<すべての行動は可視化され、評価基準となる>
――今一度、評価経済社会とはどんな社会なのか教えてください。
「評価」が通貨のような意味合いで社会に流通する状態のことを言います。
貨幣経済以前は、不動産を借りる時に知り合いだから貸してもらえるような縁故社会でした。
その後、貨幣経済になりお金を出せばそれなりの部屋に住めるようになった。
お金を持っていれば、オールマイティに強かったんです。
ですが、これから評価経済が浸透してくると、部屋を汚したりゴミをちゃんと出さなかったりする人には誰も部屋を貸してくれなくなります。
すると家賃はスライドして、いやな家主の賃貸物件は家賃が下がるし、ルーズな住人の家賃は上がっていきます。
これらの評価が透明化されてオープンに流通しているのが、評価経済の第一段階です。
――評価経済社会が実現すると、お金はいらなくなるということでしょうか?
縁故社会が貨幣経済においても残ったのと同じように、評価経済社会になっても貨幣経済はそのまま残ります。
評価経済が貨幣経済の上に乗っかるだけです。
お金で評価は買えないけれども、評価があればお金はいらなくなるという優越関係ははっきりします。
貨幣経済社会でもお金さえもっていればいいというわけではないように、評価経済でも紙幣が淘汰されるわけではありません。
――1995年には『僕らの洗脳社会』を刊行され、2011年にはそのアップデート版である『評価経済社会』で評価経済へのパラダイムシフトが起こりつつあると指摘されています。
刊行から数年経った現在、どのような状況にあるのでしょうか?
貨幣経済から評価経済への大きい流れは50年くらいのスパンがあると考えていて、僕らはまだ5年目くらい。あと45年間の道を残しています。
『僕らの洗脳社会』出版後から、今までで最大の変化はやはり「ネットの普及」ですよね。
VALUやメタップスのTimeBankも出てきてはいますが、そこでしか使えない通貨が無限に生まれてきているということに過ぎません。
一カ所で得た評価がどこでも通用するようにならないと、評価経済社会とは言えません。
特定のコミュニティでの通貨や自分の時間を売買するといった評価の流通基盤が整った後で、今度は評価経済における統合通貨の必要性と交換比率の話題が出てくる。
そうして評価経済社会の第二段階に入るのですが、そこまでに10年はかかると見ています。
次号に続く
コメント
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有利になるなら評価されたい人がいる一方で、他人に評価されたくなかったり、評価する仕組みの導入や手間をかけたくないという人もいるでしょう。「評価経済」的なオプションが増えるとしても、そればかりにはならないと思います。
家賃の増減のクダリは監視社会みたいですね。似たような仕組みが自動車保険で導入されています。急発進や急停車する頻度が引くドライバーの保険料が安くなるというものです(一例:ソニー損保)。サービスの提供者にとって有利な行動をする対価として、料金を割引せよという一部のユーザーの潜在的なニーズに応えたものと言えるでしょう。でも、今のところオプションに留まっています。