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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2017/10/30
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今回の記事はニコ生ゼミ10/22(#201)よりハイライトでお送りします。


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「“ブレードランナーは実は面白くない”説」


 『ブレードランナー』の話をする時の、いわゆる“あるあるネタ”の中に、「劇場公開時はヒットしなかった」っていう話があるよね。

 これは、僕らも知ってることじゃん?


 これについて、よく「公開当時は、この映画の良さを、みんなわからなかったんだけど、後々評価された」みたいな文脈で語られるんだけども。
 
 俺が思うに、これ、違うんだよね。


 たとえば、同じように「公開当初は評価されなかった」というものには、途中で打ち切りになっちゃった『機動戦士ガンダム』とか、『カリオストロの城』があるけど、これらの作品とは文脈が違う。

 なぜかというと、『機動戦士ガンダム』は再放送で人気が出たんだ。


 つまり、一度 放送されたテレビアニメを、そのまんまの形で、もう一度テレビで流したら、見るべき人がちゃんと見て、人気が出た。

 『カリオストロの城』も映画館で何回も何回も再上映されて、徐々に人気が上がってきた。

 一番 最初の公開時の見せ方はともかく、同じメディアで何度も見せていたら、ちゃんと人気が出たんだ。

 だけど、『ブレードランナー』の人気が出たのは、ビデオテープが発売されてから、なんだよね。
 つまり、映画館では一貫してウケなかったんだ。

・・・

 じゃあ、なんでヒットしなかったのか?

 これは、俺の仮説なんだけども……それも、かなり冒険的な「『ブレードランナー』は実は面白くない説」という仮設なんだけど。

 みんな、友達とか、自分の嫁とかにこの映画を見せようとして、「面白くない」って言われたことがあるんじゃないかな?

 『ブレードランナー』って実はあんまり面白くないんだよ。

 いや、俺は、すっごい好きなんだよ?

 こんなに語るほど好きなんだけども。今回、冷静に考えてみたらわかったことなんだけど、あの映画って、面白くないんだよね(笑)。

 
 なんせ、リドリー・スコットは「俺がやりたかったのは西部劇だ!」って言ってるんだけども、主人公のデッカードが退治したのは女だけなんだよ。

 それも後ろから撃ってるんだよね。
 
 肝心の敵であるレプリカントの強いヤツとかには、劇中で一度も勝っていないんだよ。


 だから、まったく主人公に共感できないし、カッコイイセリフから、アクションシーンでの活躍まで、見せ場は全部、敵役のレプリカントが全部もっていっちゃう。

 そういう部分で、爽快感とかクライマックスにも乏しいから、映画としては、実は70点くらいの面白さなんだ。

・・・

 だったら、どうしてビデオが出てからあんなにヒットしたのかというと。「『ブレードランナー』とはオタク向けディズニーランドであるから」なんだ。

 まあ、オタク向けということはないんだけども。


 いわゆる、“映像で作った異世界”みたいなものが好きな人のためのディズニーランドみたいなものであって、なんかね、体験するものなんだよね。


 ディズニーランドが日本でオープンした時、ディズニーのアニメなんて誰も見てなかったんだよ。
 いや、いまだにミッキーマウスとか、ディズニーアニメを熱心に見ている人って少ないんだけど。

 ただ、ディズニーランドという世界はみんな好きじゃん?

 『ブレードランナー』というのも、それと同じような、世界没入型という、わりと珍しいタイプの作品なんだよ。


 “カウチポテト”という言葉が流行った時代、家で1人でポテトチップを食べながら、延々と解像度の高い大きなモニターで、『ブレードランナー』の映像を何度も見るっていう人がいっぱいいた。

 この『ブレードランナー』を繰り返し見るっていうのは、たぶん、その当時の人にしてみれば“聖地巡礼”なんだと思うんだ。


 「心の中でいつか見たいと思っていた風景を何度も体験する」というのに近いんだ。

 だから、そういう世界に対する憧れみたいなものを持っていない人にとっては、あの映画って、2時間も続く、わりと退屈でつまらない映画なんだよね。

・・・

 『ブレードランナー』は実は面白くないというのはね、この映画を知る上で、わりと大きなポイントだと思うんだよね。

 重要なのは「にもかかわらず、こんなにヒットしたのはすごい!」という話なんだ。

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 (パネルを見せる)

 こういう、異世界の風景。

 ビル全体に女の人の顔がフワッと映し出されていて、その後に「強力わかもと」の広告が出てくる。
 そんなビルの間を、空飛ぶ車がガーッと飛んで来る。

 これを「美しい!」という感性で見れる人って、やっぱりね、全人口の10%もいないでしょ、正直。
 
 『君の名は。』とは違うわけだよ(笑)。

 『ブレードランナー』という作品について、評価はいくらでもできるんだけど、こと“映画としての面白さ”といういう意味でいえば、中の上に届いてないんじゃないかというふうに思うな。


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