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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「『ラピュタ』『ガンダム』を題材に“アニメの読み方”を教えます!<後編>」

2017/10/11 06:00 投稿

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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2017/10/11
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今回の記事はニコ生ゼミ10/01(#198)よりハイライトでお送りします。


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「『ラピュタ』『ガンダム』を題材に“アニメの読み方”を教えます!<後編>」

 前号からの続きです。


 『ラピュタ』の、弾を込める描写に込められた意味だったら、知識でわかるんですけども。

 「ランバ・ラルのちょっとした仕草に隠された、内面の緊張」というレベルになってくると、実際にアニメーションを作ってないと、ちょっとわかりにくいところはあるんですよね。

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(パネルを見せる。ラルとハモンがドアからブリッジに入室するシーン)

 これは、『機動戦士ガンダム』の第12話「ジオンの脅威」での、ランバ・ラルとハモンの初登場シーンですね。

 ここにドアがありますが、このドアは最初は閉じてるんですね。初登場シーンでは、このドアが開いて、まずハモンが先に入ってくるんですよ。

 入ってきたハモンは、自分が開けたドアの横に立つ。すると、ランバ・ラルが後ろからゆっくりと入ってきて、その後、ハモンはドアを閉めてから彼の後ろについていくんですね。

 これもですね、なぜこんなシーンを入れるのかというと、「このハモンという女性が、いかにクレバーか」を表現するためなんですよ。


 このクレバーっていうのはどういう意味かというと。

 2人の関係を傍から見ると「戦場に恋人を連れてきている」ということになります。

 この場合、連れてきているランバ・ラルはいいんですよ。
 しかし、連れられているハモンが周りからどのように見られるかは、彼女自身の一つ一つの行動で変わってきます。

 もし、ここで、偉そうに自分が先に入って行ったりすると、それを見ていた部下たちは「嫌な女!」と思うでしょう。

 「俺達が忠誠を誓い、俺達が信頼を寄せ、俺達が一番信じているのは、あくまでランバ・ラル様であって、その彼女のお前じゃないよ!」って思われるんですね。

 なので、ハモンは、思いっきり、極端なほどに「ランバ・ラル様!」と彼を立てることによって、部下たちのそういう気持ちを和らげてあげているんです。

・・・

 そういう目で見ると、この12話は面白いです。

 生まれて初めて地球に下りたジオンの兵隊が、雷を見て「きっと連邦軍の新兵器だ!」って慌てるシーンがあるんですね。

 ランバ・ラルは、「そんなことで、うろたえるな!」って怒るんですけども。ハモンは、最初に驚いた部下 以上に怖がって見せるんですね。

 彼女がランバ・ラルの背中に手を当てて、「あなた……」みたいなことを言うと、ランバ・ラルは「安心しろ」と言うんですけども。

 この1クッションを入れることによって、地球の雷というものを知らなかった部下に対して、ランバ・ラルはそれ以上、怒らなくて済むんですよね。


 こういう、“ハモンという女の人のものすごい上手いポジション取り”っていうのも、大人になったからわかる『ガンダム』の見方みたいなもので。

 僕もね、これを初めて見た20歳の時には、こんなの全然わからなかったんですよ。
 
 ただ、「うぉー! カッコいい!」とか「大人っぽいじゃん!」って思っただけだったんですけども。

 いざ大人になってきてから見たら、「ああ、この辺の演技って、こういう意味があるんだ」ってわかったんですね。

・・・

 『ガンダム』に関してはこんなもんなんですけども。

 『ラピュタ』についても、同じように「自分で動いてみたらわかるシーン」というのがいっぱいあるので、「もう10回も見たから、ラピュタは見なくていいや」なんて思わずに、見てみてください。


 僕が思うに、ラピュタは、本当に隅から隅まで上手くできた作品なんです。

 すべてが完全にコントロールされているし、作画にも全部、意味がある。

 たとえば、ティディス要塞で「パズー君、これを持って帰りたまえ」と言われて金貨をもらったパズーが、ガーッと走って、それを投げ捨てようと腕を振り上げるシーンにどんな意味があるかというと…

 …いや、まあ、あれは、明らかに“やり過ぎ”なんですけど(笑)。


 宮崎さんとしては、「パズーという少年にとって、あれだけの金貨というのは、おそらく、生涯あの炭鉱で働いても得られないだけのお金なんだ」ということを、それ以前のシーンで、自分や親方が働いている貧乏な鉱山というのを散々見せることで表現してるんですね。

 「この鉱山からは、なんにも出ない!」って言ってるし。

 「なので、“純金の金貨”なんてものを与えられた時に、パズーというのは、それを地面に投げ捨てられるような子じゃないんです」と。

 宮崎さんは、これを言いたいために、パズーに「感情のままに放り投げようと腕を振り上げるんだけど……できない!」みたいな動きを派手に取らせているんですね。


 だからといって、本当に、あんな大げさなポーズを取らなくてもいいと思うんですけども(笑)。

 まあ、これが、宮崎駿の演技であり、さっき言った安彦さんの演技とは違うところなんですね。

 安彦さんの演技っていうのは“ためる演技”なんです。ランバ・ラルが見せたような「指を組んでじっとためる」という演技なんです。

 それに対して、宮崎さんは、「チクショー! シータ、俺は金のためじゃねえ! こんなもの!」ってやりかけてから、グーッとこらえるという極端な演技を、まだ『ラピュタ』の頃はやってたんですけど。

 これが、『風立ちぬ』くらいからは、自然な演技になってくるんですね。

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 「なんか演劇っぽい」(コメント)

 その通り!
 今、コメントで流れた通り、宮﨑駿の付ける演技は演劇っぽいんです。

 いわゆる「思っていることは全部、身体全体で表現しなければいけない」と思いこんでいる“ドイツ表現主義”なんですね。

 やはり、あの世代の先生方は、みんなこれを身に着けているので、ラピュタにもそういうシーンがいっぱいあります。

 でも、だからこそ、ガンダムに比べれば読み取りやすい作品でもあるんですね。


 みなさんも、今度また3年もしないうちに、金曜ロードショーで『ラピュタ』を放送すると思いますので、ぜひ見てやってください。
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