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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2017/10/09
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今回の記事はニコ生ゼミ10/01(#198)よりハイライトでお送りします。


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「今度の舞台はイロコイ連邦!? ハリウッド版 『君の名は。』 の内容を、妄想してみた」


 『君の名は。』の実写化、どういうふうに話そうかな。
 
 東宝が「アメリカのパラマウント・ピクチャーズとバッド・ロボットと共に実写化に向けて、開発をスタートさせた」という言い方をしている。


 ニュースで流れているのが、“開発”って書いてるんだ。

 これは“デベロップメント”の直訳で、映画はデベロップメント、いわゆる開発の段階から始まる。

 実は、この段階は、もうほとんど何も決まっていない。


 ただ、予算の枠が決まって、「この規模の作品でやろう」というのが決まってるだけなんですよね。

 なので、脚本がエリック・ハイセラーって人に決まっただけで、監督も何も決まってないんだ。


 エイブラムスはプロデューサーをやるんだけども、たぶん実際の内容は、今のところはエリック・ハイセラーに任せて、もうちょっと決まってから監督を選んでいこうと。

 つまり、「この内容で、この予算だったら、誰が監督を出来るだろう」というふうに探す立場にあるんだよね。


 で、僕がこのニュースを聞いた時に面白かったのが、「エイブラムス、パラマウントに怒られたんだろうなぁ」という事なんだよね。

 何かって言うと、エイブラムスは元々パラマウントと10年間で6本かな、「必ず映画を作ります」という契約をしていて、『スター・トレック』シリーズも、その中の一つだったんだ。

 ところがエイブラムスは、スター・トレック・シリーズを途中で放っぽり出して、スター・ウォーズの7をやっちゃったと。


 7をやって、パラマウントとしたら「ムカッ」としたんだけど、「まぁ、いいや」と思ってたら、「『9』もやることになった」って発表されて、パラマウントの上層部が激怒して、エイブラムスとケンカになったってニュースがあったんだけども(笑)。

 まぁ、こういう形で、落ち着けたかと。


 つまりエイブラムスは、パラマウントとの関係がちょっと危なくなったんだけども、「この世界で大ヒットしてるコンテンツを自分がプロデュースする」というヤツで、平和に収めてきたなぁというのが一つめ。

・・・

 二つめは、ハイセラー。
 エリック・ハイセラーっていうシナリオライターが、凄く面白いヤツなんだ。


 今年にエリック・ハイセラーの映画が二本 公開されていて、一本は僕らが大好きな『メッセージ』だよね。
 タコみたいな宇宙人が来て、不思議な文字で人間とコンタクトを取るというSF映画。

 シナリオ的にも凄く優れているんだけども。


 もう一本が『ライト/オフ』っていう。

 目の見えない黒人のおじいさんの家に強盗団の若者が忍び込んだら、それが元海兵隊の目くらの爺さんで、若者たちをバンバン殺しまわるっていう、誰に感情移入したらいいのか分からないようなホラー映画(笑)。

 あの、メッチャ怖いヤツがあったでしょ。
 あれなんだよ。

・・・

 ハイセラーっていうのは、ものすごくテンポを重要視する脚本家で、『ライト/オフ』って、その状況が開始するまでに15分程度しか掛かってないんだよね。

 そういうふうにやって、ドンドンドンドン話を進めるから、メチャクチャ上手いんだよね。

 だから、テンポが凄く早い人。


 『メッセージ』も、テッド・チャンっていうSF作家が書いた『あなたの人生の物語』っていうのは凄い名作なんだけども、「映像化、不可能」って言われてたんだ。

 それを、ちゃんと仕上げた手腕が凄い。


 あんな映画を作るときって、普通はテーマを捨てるんだ。
 ビジュアルの為に。


 『メッセージ』を、かなり優秀なシナリオライターが引き受けたら、絶対に“内容を優先する”か、“絵面を優先させる”かの、どっちかを取るんだよ。

 で、絵面を優先させるのがハリウッド流なんだけども。


 内容を優先させると、ちょっと救いの無い話になったり、後ろに行くにつれて絵が地味になるような作品になっちゃうんだ。

 けども『メッセージ』って、ちゃんと最初にも言った『メイドインアビス』にも出てくるような、“この世界の美しさ”を描いてる。


 たとえば一番 最初に、モンタナ州に、主人公の女性言語学者が連れて行かれるときに、ヘリコプターでバーッと行くときに、モンタナ州の山脈の吹き降ろす風で雲が出来てる。

 フェーン現象ってヤツだよね。


 フェーン現象で、向こうから来た風が山を登ってくるときに水分を出してしまって、降りてくるときに、イッキに雲になる。

 だから、雲がまったく無い山の向こうから来た風で、イッキに雲が出来て、それがモンタナの大陸をザーッと流れているところをバーンと見せるっていう。


 ああいうのを、切り替え、切り替えで見せて、“広い絵”と、ヘリコプターの中の“狭い絵”っていうのを交互に見せるという手腕は、本当に凄いんだよ。

・・・

 この『君の名は。』って、今から色々と言う人はいるだろうけども、これまでの『ドラゴンボール』とか『リング』とか『ゴースト・イン・ザ・シェル』などの、これまでの「日本の原作、アニメ・マンガものをハリウッドが実写化した」っていうのとは、まったく違うと思うね。


 エイブラムスが予算をかけて、まずエリック・ハイセラーを押さえたという所で、本気度がメッチャ分かる。


 で、今度から「アニメ版の『君の名は。』」っていう言い方になっちゃうんだね(笑)。

 「原作版の、」と言うのかな、アニメ版の舞台は、新宿と飛騨高山の方じゃん。


 この大都会と田舎って、日本人にとっての風景。
 日本人にとって田舎が懐かしい風景かっていうと、実はそうじゃなくて。

 新宿の街も、自分たちがいるんだけども、『君の名は。』で描かれるような“美しいもの”と、僕らは思ってなかったわけだよね。


 信号を描かれても、歩道橋を描かれても、「俺たちって、こんなキレイな世界に住んでたんだ」って教えてくれたのが、あの映画なんだけども。
 それと同時に、田舎っていうモノの美しさみたいなものを伝えてるから。

 これを、どのようにハリウッドが映像化するのかなんだよ。


 まぁ、たぶんアメリカが舞台になるとは思うんだけども。


 新宿は、ニューヨークかロサンゼルスだと思うんだよ。

 もう一つの飛騨高山あたりの山奥っていうのを、普通にアメリカのオレゴン州の山奥とか、モンタナ州の山奥って考えるんじゃないんだろうなぁって思うんだよね。


 というのは、思想性・メッセージ性を必ず入れたがるから。

・・・

 これは妄想なんだけども、俺が「アメリカのハリウッド版の『君の名は。』で、やるんじゃないかな?」って思ってるのは、イロコイ連邦ってヤツなんだ。


 イロコイ連邦っていうのが何かっていうと、ニューヨークの北の方にあるんだけども、カナダとの国境にまたがるインディアンの居留地なんだよ。

 分からなかったらウィキで調べてみて。


 で、六つの部族がまとまったインディアン国家。

 “インディアン国家”と言ったのは何かっていうと、実はコレは国家なんだよね。


 別名“シックス・ネイションズ”と言われると。
 六つの部族が集まってるからシックス・ネイションズなんだけども。

 成立したのが1600年代と、すごく古いんだ。


 それまではアメリカのインディアンっていうのは、ずーっと内紛、内紛、内紛だったのが、「イギリス人達が入植してきて、アメリカ大陸を侵略している」という事で、「一つにならなきゃ」って事で。

 かなり早い段階で、言葉も違えば、お互いの祖先の神、いわゆるトーテム・ポールも違うようなものすごい仲の悪いインディアン達が六部族 集まって、一つの国家を作ったというのは画期的な出来事で、ものすごい優れた仕組みになってたんだって。

 16世紀から17世紀あたり。


 どれぐらい優れてるのかっていうと、ベンジャミン・フランクリンがイロコイ族のところに見学に来て、長老達から「これはどうやって会議とか決めてるんですか?」と聞いたら「こういう仕組みだ」というのをやって「なるほど! その方法があったか!」と言って、“アメリカ合衆国”という仕組みを考えたっていうぐらい、すごい優れてる仕組みです(笑)。


 で、このイロコイ連邦、別名シックス・ネイションズっていうのは、国連にも認められている国家。

 アメリカ国内にある、国家 内 国家なんだよね。


 立法、課税、通貨、外交という、独自の権利をアメリカとは別に持っていて、交戦権も持ってるんだ(笑)。

 交戦権を持ってるから日本とも戦争できるし、アメリカとも戦争できるという、ものすごい所なんだけどもね。


 ここだったら、アメリカの原風景でありながら、「一方でアメリカ人が抑圧してきたもの」という事で、サンフランシスコかロサンゼルス対イロコイ居留地、シックス・ネイションズの男女の話とかにして。

 で、そこに隕石が落ちて、という話にすると、すごく上手く回るんじゃないかな。


 僕は「エリック・ハイセラーだったら、これぐらい、やってくれるんじゃないかな?」という期待で、話してるんですけどね。

・・・

 まぁ、下手したら舞台はそのまま日本のまま。
 
 エイブラムスは、「やる事があるから、もう日本のままでいいじゃん」と言って、オール日本ロケで、なぜか中国人俳優を使ってやるかも分からないし(笑)。


 逆に、ここから売り上げの事を考えて、中国を舞台にして、北京とド田舎でやるかも分からない。


 中国って、戸籍制度っていうのがあるよね。


 戸籍制度っていうのは何かというと、日本と違って農村に生まれたヤツは“農村戸籍”といって、一生、町に出て来れない。

 町に生まれたヤツは“都市戸籍”というヤツで農村に行かなくて済むという、エゲつない差別構造を生む文化が中国にはまだ残ってるんだけども。


 そこら辺まで描けたら、メチャクチャ面白いんだけども。


 僕としては、イロコイ居留地ですね。

 エイブラムス監督!

 この番組を見ていたら、ぜひともご検討ください(笑)!


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