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「映画『ドリーム』を宇宙マニアの観点からちょっぴりマニアックに紹介するぞ! ドロシー・ヴォーン編」
これが、元々のアメリカ版。原題は『ヒドゥン・フィギュアズ』といいます。
まあ、ここから先は、日本版のタイトルに合わせて「ヒドゥン・フィギュアズ」と言わずに「ドリーム」と言いますけど。
左からメアリー・ジャクソン、キャサリン・ジョンソン、ドロシー・ヴォーン。この3人の実話を元にした作品です。
これが、映画『ドリーム』の大まかな内容ですね。
ドロシー・ヴォーンは、実はこの原作本の主役なんですね。
アメリカでも『ヒドゥン・フィギュア』が評判になって、実際のドロシー・ヴォーンの紹介写真が出た時に、なんか顔がものすごく白いので「これ、本当に黒人か?」っていうふうに言われたんですけども。
実際は“インディアンと黒人と白人の3つの混血”だそうです。
ただし、混血率が高いので、あっちでは黒人扱いになっちゃうんですね。
まず「家族から黒人として、黒人文化の中で育てられた」っていうのもあるんですけども。白いかどうかよりも“白人でないかどうか”の方が、やっぱり当時のアメリカでは問われていたので。
そういう辺り、ちょっと今、アメリカでも少し議論になっているみたいなんですけども。
まあ、そういう、家庭環境はすごく良かった人です。比較的裕福な家で育ちました。この人が原作では主役です。
この3人ともそうなんですけど、とにかく子供の頃から数学の天才で、学校なんかも4年飛ばし5年飛ばしの飛び級なんか当たり前の超天才ばっかりなんですね。
ところが、数学の天才といっても、黒人で女性だから、どこにも勤めるところがなくて、学校の先生をやっていた。
そんな中、新聞広告で「ラングレー研究所では、とにかく算数のできる人を募集しています!」っていう広告がしょっちゅう載っていたんですって。
そう言われても、ラングレー研究所がどこにあるかもわからない。調べてみたらバージニア州だと。ドロシーにしてみたら、家からえらい離れたところだから、そこに勤めるとなると3人の子供を家に置いて、1人っきりで行くしかない。
そこで何をやっていたかというと、これから日本を爆撃するための“B-29”という秘密の爆撃機を作っていたんですね。
……また出てきた。このゼミではよく出てきますね、B-29(笑)。
だけど、その前の段階では、「空気抵抗がどうなっているのか?」、「揚力がどれくらいになるのか?」、「本当にこいつが飛べるのか?」、「こいつはどれくらいの重さの爆弾を積めるのか?」というのを計算で出すしかないんですね。
なので、あっという間に“ウェスト・コンピューター”(西計算手)というビルの中でトップの役職になってしまいます。
この「西」っていうのは「黒人」っていう意味なんですね。
東区画っていうのは白人たちのことです。
だから、「東京大空襲はドロシーのせい」とも言えます。
B-29なんかも、明らかにドロシーの計算がベースになっていて、それについては、当時の、もう本当にいろんな人の証言とかも残っていて、この本の中に書いてあるんですけども。
第2次大戦で、ドロシーはかなり頑張っていたみたいです(笑)。
というのも、1940年代に、すでに“ベル研究所”という、アメリカの電話を発明した研究所が、ラングレーに猛烈な売り込みを掛けて、ついに電子計算機の売り込みに成功するからなんですね。
ドロシーは、それを見てビックリします。
「計算する時に数式を入力する」と聞いて、僕らは「パチパチと指でボタンを押していくのかな?」って思うじゃないですか。
だけど、全然そうじゃなく“パンチカード”で入れるんですね。
パンチカードっていうのはどんなのかっていうと、マークシート方式ってあるじゃないですか。
あのマークシートの部分にパンチで穴を開けるみたいなものだと思ってください。
だから、1枚のパンチカードに10ケタとか14ケタくらいの数字しか入らないんですよ。
後に、もっと長細い穴になって、40ケタの数字が入るようになったんですけど、まあ、それでも“その程度のもの”です。
そういう紙の束を山のようにガーッと読ませなければ、計算結果が出てこないものなんですけど、ただし、計算を出すのだけはメチャクチャ速かったんですよね。
「今は西のリーダーというポジションだといっても、このままでは安心できない」ということで、ドロシーは、映画の中でも描かれているんですが、1冊の本を図書館から盗みます。
なぜ盗んだのかというと、当時の図書館には“白人しか入れないコーナー”があったからなんですね。
フォートランというのは何かというと、“フォーミュラ・トランスレーション”の略ですね。
フォーミュラというのは数字、数列のことです。つまり、“数式翻訳”という意味です。
フォートランはCOBOLと同じく、「世界初の」と言ってもいいくらいのコンピューター言語です。
機械語しかなかったところに、フォートランという様式であれば、いろんな形式のコンピューターであっても扱えるという、大変に進んだ言語です。
この本を図書館で、見つけるんですけども、黒人が入ってはいけないエリアにあったので、ドロシーは子供と一緒に行っているフリをして、この本を盗みます。
いつも「間違ったことをしてはいけないよ」と言い聞かせている子供から、「ママ、そんなことしていいの? 盗んだの?」って聞かれた時に、「ママは税金を払ってる。これは税金で買った本よ。あの図書館が間違ってるわ!」と言いながら(笑)。
「私たちがやっている仕事は、もうここから先細りだ」ということで、西の建物に入っている黒人女性を全員集めて、フォートラン教室を開いちゃうんですよ。
「私たちの何倍もお給料を貰っている、小奇麗なハイヒールを履いて真珠のネックレスをつけている白人のお姉さんたちはまだ気が付いていないけれども、これからは絶対にコンピューターの時代だから、みんなで勉強しましょう!」と言って、残業しているフリをして、みんなでフォートランを学び出すんですね。
当時のフォートランというのは、コンピューターを売っているベル研究所とかIBMの職員ですら知ってる人間が少なかった、本当に最新の理論だったんですよ。
その後、見事にラングレー研究所は「コンピューターを買ったはいいんだけど、誰も使えない」という状態が明らかになります。
もう、所長のアル・ハリソンは怒り狂っていたところに、ドロシー率いる西側のメンバーがぞろぞろっと行列を作って出向いて、コンピューター室を占領して、そこで働きだしてしまうという(笑)。
白人のお兄さん達は、彼女たちを追い出せもせず、「とにかく僕らが使えないコンピューターを彼女たちが使ってくれる」ということで、「どうぞどうぞ」というふうになる。
映画『ドリーム』、ぜひ見てみてください。
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いかがでしたか?
「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2017/10/03
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「映画『ドリーム』を宇宙マニアの観点からちょっぴりマニアックに紹介するぞ! ドロシー・ヴォーン編」
映画『ドリーム』が公開するということで、この原作本の翻訳版が、ようやっと先月に発売されたんですよ。
この原作ね、さっそく読んでみましたが、めちゃくちゃ面白いです。
(原作本の英語版)
これが、元々のアメリカ版。原題は『ヒドゥン・フィギュアズ』といいます。
これに関しては、確か去年の8月か9月にこの番組でも紹介しました。
たぶん、日本では一番早い紹介だったと思うんですけど、ただ、早すぎて1年前なんですよね(笑)。
たぶん、日本では一番早い紹介だったと思うんですけど、ただ、早すぎて1年前なんですよね(笑)。
ということで、今日はですね、このヒドゥン・フィギュアズの話をしようと思います。
まあ、ここから先は、日本版のタイトルに合わせて「ヒドゥン・フィギュアズ」と言わずに「ドリーム」と言いますけど。
・・・
まず、『ドリーム』とは何かというと、アメリカ初の有人宇宙飛行計画である“マーキュリー計画”を支えた3人の黒人女性の話です。
(3人の黒人女性が並んだ映画のポスター画像)
左からメアリー・ジャクソン、キャサリン・ジョンソン、ドロシー・ヴォーン。この3人の実話を元にした作品です。
ただ、「実話を元にした」と言ってもですね、原作が本当に長いノンフィクションなんですね。
「昔、知り合いがNASAで働いていた」という話を聞いた黒人のある女の人が、「え? 本当にそんなことあったの?」と思って調べたら、いくらでもそういう話が出てきた、というところから始まった、アメリカの歴史からはほとんど無視されてきた“隠れた存在”であった女性たちの話です。
実は“コンピューター”(計算手)と呼ばれる、昔の手回し式の計算機とか、暗算を使って、ロケットの軌道計算のような、航空学にとっても宇宙工学にとってもすごく大事な計算を、女性が支えていたんですね。
当時の女性は、数学で博士号を取っても、一番いい就職先は “学校の先生” 止まりだったんです。
そんな中、バージニア州ラングレーという土地に呼ばれて、NASAの秘密計画に参加するようになったという、一説によると5千人とも7千人とも言われる膨大な黒人女性の数学者たちの話というのがベースなんですね。
お話のクライマックスとしては、ジョン・グレンという、アメリカでは英雄になっているほどの大変有名な宇宙飛行士が、地球を周回して、アメリカで最初の宇宙飛行士になる手助けをしたというお話になっています。
これが、映画『ドリーム』の大まかな内容ですね。
・・・
では、そんな3人の女の人の中から、右端に立っている、ちょっとぽっちゃりしたドロシー・ヴォーンの場合から話を始めます。
ドロシー・ヴォーンは、実はこの原作本の主役なんですね。
だけど、あんまり黒人っぽくないんですよ、実は。
後で実際の本人の写真を出しますけども、そういう資料とかを見ると、ドロシー・ヴォーンって、もうほとんど白人なんですね。
ちょっと毛がチリチリしているだけで。「黒人差別を描いた映画だ」って言いながら、あんまり黒人ぽくない。
後で実際の本人の写真を出しますけども、そういう資料とかを見ると、ドロシー・ヴォーンって、もうほとんど白人なんですね。
ちょっと毛がチリチリしているだけで。「黒人差別を描いた映画だ」って言いながら、あんまり黒人ぽくない。
アメリカでも『ヒドゥン・フィギュア』が評判になって、実際のドロシー・ヴォーンの紹介写真が出た時に、なんか顔がものすごく白いので「これ、本当に黒人か?」っていうふうに言われたんですけども。
実際は“インディアンと黒人と白人の3つの混血”だそうです。
ただし、混血率が高いので、あっちでは黒人扱いになっちゃうんですね。
まず「家族から黒人として、黒人文化の中で育てられた」っていうのもあるんですけども。白いかどうかよりも“白人でないかどうか”の方が、やっぱり当時のアメリカでは問われていたので。
そういう辺り、ちょっと今、アメリカでも少し議論になっているみたいなんですけども。
まあ、そういう、家庭環境はすごく良かった人です。比較的裕福な家で育ちました。この人が原作では主役です。
・・・
実際に、第2次大戦中だった1943年から、このぽっちゃりお姉さんのドロシーは、ラングレー研究所に勤務していました。
この3人ともそうなんですけど、とにかく子供の頃から数学の天才で、学校なんかも4年飛ばし5年飛ばしの飛び級なんか当たり前の超天才ばっかりなんですね。
ところが、数学の天才といっても、黒人で女性だから、どこにも勤めるところがなくて、学校の先生をやっていた。
そんな中、新聞広告で「ラングレー研究所では、とにかく算数のできる人を募集しています!」っていう広告がしょっちゅう載っていたんですって。
そう言われても、ラングレー研究所がどこにあるかもわからない。調べてみたらバージニア州だと。ドロシーにしてみたら、家からえらい離れたところだから、そこに勤めるとなると3人の子供を家に置いて、1人っきりで行くしかない。
「でも、自分の力を活かしたい」と、そう思った彼女はラングレーへ行くんですが。
そこで何をやっていたかというと、これから日本を爆撃するための“B-29”という秘密の爆撃機を作っていたんですね。
……また出てきた。このゼミではよく出てきますね、B-29(笑)。
B-29っていうのは、当時はその形も秘密だったんですけども、これをラングレーにある、超高速の風洞の中に入れて実験する予定だったんです。
だけど、その前の段階では、「空気抵抗がどうなっているのか?」、「揚力がどれくらいになるのか?」、「本当にこいつが飛べるのか?」、「こいつはどれくらいの重さの爆弾を積めるのか?」というのを計算で出すしかないんですね。
さて、ラングレーに行ってみてわかったんですけども、このドロシーは、当時のラングレーの男性女性を全て含めた中で、最も計算能力が高かったんですね。
なので、あっという間に“ウェスト・コンピューター”(西計算手)というビルの中でトップの役職になってしまいます。
この「西」っていうのは「黒人」っていう意味なんですね。
東区画っていうのは白人たちのことです。
まあ、このドロシーが頑張ったおかげで、日本は大変な目にあったんですけれども(笑)。
だから、「東京大空襲はドロシーのせい」とも言えます。
B-29なんかも、明らかにドロシーの計算がベースになっていて、それについては、当時の、もう本当にいろんな人の証言とかも残っていて、この本の中に書いてあるんですけども。
第2次大戦で、ドロシーはかなり頑張っていたみたいです(笑)。
・・・
ただ、ドロシーについてのそういう話は、映画の中では全然 描いてないんですよ。
そんな人生でありながら、彼女にも不安はあったんですね。
というのも、1940年代に、すでに“ベル研究所”という、アメリカの電話を発明した研究所が、ラングレーに猛烈な売り込みを掛けて、ついに電子計算機の売り込みに成功するからなんですね。
ドロシーは、それを見てビックリします。
当時の電子計算機というのは、まだまだ役に立たないんですよ。
遅いし、手間が掛かるし。
遅いし、手間が掛かるし。
「計算する時に数式を入力する」と聞いて、僕らは「パチパチと指でボタンを押していくのかな?」って思うじゃないですか。
だけど、全然そうじゃなく“パンチカード”で入れるんですね。
パンチカードっていうのはどんなのかっていうと、マークシート方式ってあるじゃないですか。
あのマークシートの部分にパンチで穴を開けるみたいなものだと思ってください。
だから、1枚のパンチカードに10ケタとか14ケタくらいの数字しか入らないんですよ。
後に、もっと長細い穴になって、40ケタの数字が入るようになったんですけど、まあ、それでも“その程度のもの”です。
そういう紙の束を山のようにガーッと読ませなければ、計算結果が出てこないものなんですけど、ただし、計算を出すのだけはメチャクチャ速かったんですよね。
・・・
入力するのに手間が掛かる。
それをまた、書き出すのにも手間が掛かる。
ただし、計算だけはやけに速い。
「これ、私、ヤバいぞ」と。
それをまた、書き出すのにも手間が掛かる。
ただし、計算だけはやけに速い。
「これ、私、ヤバいぞ」と。
「今は西のリーダーというポジションだといっても、このままでは安心できない」ということで、ドロシーは、映画の中でも描かれているんですが、1冊の本を図書館から盗みます。
なぜ盗んだのかというと、当時の図書館には“白人しか入れないコーナー”があったからなんですね。
彼女が手にしたのは『フォートラン(FORTRAN)』というタイトルの本。
フォートランというのは何かというと、“フォーミュラ・トランスレーション”の略ですね。
フォーミュラというのは数字、数列のことです。つまり、“数式翻訳”という意味です。
フォートランはCOBOLと同じく、「世界初の」と言ってもいいくらいのコンピューター言語です。
機械語しかなかったところに、フォートランという様式であれば、いろんな形式のコンピューターであっても扱えるという、大変に進んだ言語です。
この本を図書館で、見つけるんですけども、黒人が入ってはいけないエリアにあったので、ドロシーは子供と一緒に行っているフリをして、この本を盗みます。
いつも「間違ったことをしてはいけないよ」と言い聞かせている子供から、「ママ、そんなことしていいの? 盗んだの?」って聞かれた時に、「ママは税金を払ってる。これは税金で買った本よ。あの図書館が間違ってるわ!」と言いながら(笑)。
・・・
そうやって、フォートランの本を図書館から盗む。
盗むだけならともかく、これを同僚に教え始めるんですね。
盗むだけならともかく、これを同僚に教え始めるんですね。
「私たちがやっている仕事は、もうここから先細りだ」ということで、西の建物に入っている黒人女性を全員集めて、フォートラン教室を開いちゃうんですよ。
「私たちの何倍もお給料を貰っている、小奇麗なハイヒールを履いて真珠のネックレスをつけている白人のお姉さんたちはまだ気が付いていないけれども、これからは絶対にコンピューターの時代だから、みんなで勉強しましょう!」と言って、残業しているフリをして、みんなでフォートランを学び出すんですね。
当時のフォートランというのは、コンピューターを売っているベル研究所とかIBMの職員ですら知ってる人間が少なかった、本当に最新の理論だったんですよ。
その後、見事にラングレー研究所は「コンピューターを買ったはいいんだけど、誰も使えない」という状態が明らかになります。
もう、所長のアル・ハリソンは怒り狂っていたところに、ドロシー率いる西側のメンバーがぞろぞろっと行列を作って出向いて、コンピューター室を占領して、そこで働きだしてしまうという(笑)。
白人のお兄さん達は、彼女たちを追い出せもせず、「とにかく僕らが使えないコンピューターを彼女たちが使ってくれる」ということで、「どうぞどうぞ」というふうになる。
こういうのが、ドロシーの物語ですね。なかなか格好いい話なんですよ。
映画『ドリーム』、ぜひ見てみてください。
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「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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よい質問は、よい回答にまさる、と言われます。
みなさんの質問で、僕も予想外の発想ができることも多いです。
だから僕は、質疑応答が大好きです。
みなさんからの様々な質問をお待ちしています
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