劇場版の「エヴァンゲリオン」を見た眠田直氏は、TV版以上にカヲル君がよかったと大喜びしていた。
眠田家では、奥さんまでカヲル君萌え萌え(注:ラブラブである、という意のオタク用語)状態で、夫婦して盛り上がっているらしい。
でも僕には、カヲル君に萌え萌えなんていう気持ちが、さっぱりわからない。
「カヲル君って、要するにキザで不思議な美少年だろ。オレの中ではあんな奴、『ちびまる子ちゃんの花輪君』の声で喋ってるぜ」と僕が言うと、まわりにいたオタク達全員の目が点になった。
確かにそう言われてみれば、カヲル君の声優には、花輪君の声がピッタリなカンジがする。
「ヘーイ、ベイビー。歌はいいねぇ。インドの歌はもっといいけど」とか、いかにもいいそうじゃないか!
が、さすがオタクたち、すぐに立ち直ると、口々に、「じゃあ、まるちゃんはアヤナミ?」「アスカはタマちゃんか!?」とか、大騒ぎになった。
「違う。みんなちっとも判ってないね。アスカは、『私、加持さんが好きなの、ウフーン』と無理矢理つきまとうキャラ、要するに、みぎわさんだよ。」と僕は決めつけた。
こうなるともう止まらない。
「無口で何を考えているのかわからないアヤナミは、暗くてお笑いマニアの野口さんだね。」
「いつもいじけて心の中でボソボソ文句ばかり言っているシンジ君は、永沢くんかな。でも友達に卑怯と言われて悩んでばかりいる、唇の青い藤木くんの方がいいかもな」
話は、どこまでも盛り上がる。
「トウジがハマジって、ハマリすぎでつまんないな」
「第三使徒サキエルは、バカの山田だな。あいつがガハガハ、大口開けて笑っている顔って、人間離れしてるもんね」
「碇ゲンドウは、父ヒロシしかないかな。わがままで、『てやんでぇ、ゼーレのシナリオなんか知ったことかい!』とか言いそうだし」
「ミサトは、面倒見はいいけどすぐ怒る、まるちゃんのお母さん」
「リツコは、いつもクールなまるちゃんのお姉ちゃん。ごくたまにセンチになったりするとこもピッタリ」
一番の傑作は「初号機は、まるちゃんのおじいちゃん。せっかく発進したのに敵との戦闘が無かった時は、『初号機、心の俳句』を寂しく詠む」
エヴァファンの心は、笑いながらもガラガラ崩れていった。う〜ん、みんなの夢を壊すのって楽しいなぁ。
オタクは昔から、スターウォーズをトレンドドラマの配役で考えてみたり、といった遊びには熱心だ。
「アヤナミは広末涼子」
「榎本加奈子に赤いプラグスーツを着せたい!!」なんて決めている奴も多いだろう。
春先になると、いきなり知らない人に語り始めたりする困ったオタクもいる。
エヴァまる子ちゃんの後、話は、ファイブスター物語の配役に流れていった。
熱狂的なファンの僕は、「クローソーは中山エミリだよね」と提案したが、みんなの意見は違った。
「アマテラスはローリー寺西」
「デコース・ワイズメルは木村一八」
「コーラス3世は藤岡弘」
「ナイト・オブ・ゴールドは愛染恭子(リーゼント、全裸に金粉付き)」
「ジュノーンはジャイアント馬場」
あああ、今度は僕の夢が壊されていくぅ〜。
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