電力業界のマジノ線 (2013/10/21) | |||
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わが国の石油や天然ガス、石炭といった化石燃料への依存率が最も高かったのは、第1次石油ショックに見舞われた1973年のこと。94.0%だった。これを教訓に、省エネやエネルギー多様化に努めた結果、東日本大震災の前には80%弱にまで下がっていた。 しかし、経済産業省が10月に発表した2012年度のエネルギー需給実績によると、この依存率は92.1%と、1978年度以来34年ぶりに90%を超えた。東京電力の福島第1原発の大事故のあおりでほとんどの原発が停まり、原子力エネルギーがゼロ近くに落ち込む一方、天然ガスの使用量が20%強、石油が5%弱増えたからだ。これに伴って電力業界が今年度に負担する燃料費の増加額は、原発代替分だけで年間3.6兆円(天然ガス1.7兆円+石油2.1兆円+石炭0.1兆円-ウラン0.3兆円、1ドル=98円)にのぼると試算されている。今になってみると、石油ショックへの対応の方が電力業界にとって容易だったろう。石油価格が4倍になっても電気料金値上げで乗り切れたし、かねてから進めてきた原発建設もこれを機に制定された電源3法で促進された。何よりも悪者はOPEC(石油輸出国機構)であって、電力会社ではなかった。 だが3・11以降、世の空気はがらりと変わった。悪いのは地域独占、総括原価に守られた電力業界。だから、電力自由化という大義名分の下、脱または縮原発、再生可能エネルギーの大幅な導入、スマート・グリッドの採用・・・などなどが当然視される。 そんな中、電気事業法改正案が臨時国会に提出される。6月に参院で廃案になっているから一部修正されての再提出となるわけだが、広域系統運用機関の新設、電力小売の自由化、発送電の分離という大枠は変わらないだろう。年内に策定されるはずのエネルギー基本計画は原発の位置付けが問題だが、行け行けどんどんというわけにはまいるまい。実質国有化された東電は別として、他の電力会社はこうした状況にどう対応するつもりなのか。まず中部電力が、次いで関西電力が首都圏での電力小売に乗り出すと表明した。自由化の担い手は新電力だけではありません、既存の電力会社も今度ばかりはやりますよ、とうたうことで、“電力業界いじり”に対する最後の抵抗線を構築しているように見える。 ということは、発送電分離はNOということになるのだが。
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