大会後恒例!RIZIN広報・笹原圭一さんのRIZIN大晦日総括17000字です!(聞き手/ジャン斉藤)



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RIZINアゼルバイジャンに見えた「PRIDE.1」■笹原圭一

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――
笹原さん、大晦日は最高でした! ……でも、朝倉海vsアーチュレッタの計量オーバーでギリギリまでドタバタするのもRIZINらしいなと。

笹原 今回は全カードも早めに決まってケガによる欠場者も出なかったので、何事もなく大晦日当日を迎えられるのかと思っていたんですけどね……どうもウチには「地獄のプロモーター」だけじゃなくて「悪魔のシナリオライター」もいるみたいです(笑)。

――
タイトルマッチの1つが体重オーバーで消滅の危機って、たしかに最悪のシナリオですよ!

笹原
 アーチュレッタは早めに来日して調整してたんですけどね。

――
本人は試合後に明かしていましたけど、じつは体調不良だったと。いつくらいから危険信号を感じていたんですか?

笹原
 体調不良の件は試合後の彼のコメントで我々も初めて知ったんですよ。だからそういう予兆も全然わからなかった。前日の写真撮影のときにも本人から「いま65キロ。残り4キロだから順調だよ」と聞かされて、佐伯さんも「いやぁ、これで体重の不安もないからフアン・アーチュレッタじゃなくてアンシン・アーチュレッタだがや!ガハハハハ」とか余裕ぶっこいていたんです。

――
「安心ですメロン」ことアンデスメロンのような体型の佐伯さんが!(笑)。

笹原
 ただ前回の試合(扇久保博正)でも本当にフラフラだったので、ボクは全然楽観視していなかったんです。で、蓋を開けてみたら当日に水抜きしても全然落ちなくて、1.2キロ落ちたところで汗が止まってしまったと。

――
それで2.8キロオーバー。

笹原
 アーチュレッタは今回が初めての計量オーバーなんですよね。だから舐めているとか落とす気がなかったとかじゃないと思うんです。いままではずっとやれてきたけど、年齢とか何かしらの壁に当たってしまったんじゃないかなと。体調不良も影響したかもしれないし。

――計量オーバーはタイトルマッチで起きちゃうと扱いがますます厄介ですよねぇ。

笹原
 競技だけで考えたら2・8キロオーバーなら「中止です。以上!」なんですけど、プロモーターはそれじゃ済まないんですよね。なかにはそういう判断をするイベントもあるかもしれませんが、ボクはそれは競技に逃げているとしか思えない。

――
中止することが「競技に逃げているとしか思えない」と。

笹原
 もちろん競技的側面を否定しているわけじゃないでよ。それはもちろん大事ですし、大前提です。ただなんか都合のいいときだけ「競技」を持ち出すのは卑怯だなって思うわけです。RIZINは競技性ももちろん追求していますけど、同時にエンターテインメント性も追求して、かつそれを同時に成り立たせられると思ってやっている。だから今回もギリギリまで、試合を実現させるために動いたってことです。

――UFC279の大シャッフルじゃないですけど、プロモーターはどんな手段を使ってもギリギリまで粘らないといけないってことですね。

笹原
 競技的なところを大きくはみ出さないように、ギリギリのところで踏み留まりながら調整をする。お客さんはもちろん、スポンサーさんや配信するプラットフォームに対しての責任もそうですが、我々がやれることをやり尽くさなきゃ、それこそイベントに熱なんて生まれようがないですし。

――
バンタム級で2・8キロもオーバーしてるわけですから、試合を実施するならペナルティを課さないと朝倉海が圧倒的不利になりますよね。

笹原
 ただ、難しいのはそのペナルティの設定なんですよ。あまり追い詰めるとアーチュレッタの心が折れちゃって「もう試合は無理」って言い出す可能性だってある。アーチュレッタは自分が悪いと自覚しているし、試合をする気持ちが折れなかったので話し合いができたんですけど、両選手のあいだに入って落としどころを探すのは本当に骨が折れました。

――
無理な設定にすると生命に危険も出てきますよね。通常の試合と違ってタイトルマッチだとキャッチウエイトにすればいいわけでもないから、話はややこしくなりますし。

笹原
 RIZINだとタイトルマッチで計量オーバーが起きてしまった場合、それでも試合を実施するときは、オーバーしたほうが勝ってもノーコンテストで王座空位のまま、というふうにしてますけど、そのルールに対していろんな意見があるのはよくわかるんですよ。「これで完璧だ!」なんて1ミリも思ってないですし。

――
というか、どこの団体の計量オーバー問題も絶対的な正解ってないんですよね。

笹原
 原理原則としては、どのカードも平等で等しく重要なんですけど、さっきの競技の話と同様にそこにあぐらをかいてちゃダメで、現実的にはタイトルマッチや注目カードは他のカードと比べると当然重たくなることを認めたうえで、その重さも加味して判断しないといけないと思います。

――今回に関しては朝倉海、アーチュレッタ、主催者3者ともに「試合を成立させたい」という前提があるから交渉はまとまったということですね。

笹原
 ギリギリで歩み寄った結果、試合1時間前に戻しの体重制限を設けることで両者合意できたんですけど、ただ開始時間って、前の試合の終了時間にも左右されるから、いつとは明確には決まってないんですよね。なので2試合前の平本蓮vsYA-MANが始まったら、我々主催者、海選手陣営の確認のもとアーチュレッタが体重計に乗るという話になったんです。

――
試合1時間前に計量って前代未聞ですよね。

笹原
 リカバリーやアップの時間を考えると相当シビアです。ただ、当然海選手サイドからしたら、戻しの体重にこだわるのもよくわかりますし。

――
THEMATCHの那須川天心vs武尊のときは4キロ戻しの62キロルールでしたよね?

笹原
 そうです。ただあのときは試合3時間前でしたし、その条件はずいぶん前に合意できていましたから。今回は本当にギリギリのタイミングで両者合意して、約束の時間にアーチュレッタの控室に体重計を持ち込んで、海選手のセコンドのいる前で計量してクリアしたんですよ。で、これどこかで見たことのある光景だなと思ったら、天心vsメイウェザーのときのバンデージ騒動が起きた部屋だったんですよ。

――
会場入りが遅かったメイウェザー側が天心のバンテージをチェックできてないから、もう一度巻き直せと言い出した騒動ですね。

笹原
 バンテージを巻くのって最低でも30分くらいがかかるのに、メイウェザー軍団が「もう一度やれ」と言ってきかなかったあの部屋ですよ(苦笑)。

――
起きてほしくないトラブルが起きてしまったけど、みんなで歩み寄ってなんとか成立したという。

笹原
 どんな方法がいちばん正しかったかはわからないです。海選手もアーチュレッタも言いたいことはあったと思うし、ボクらもどちらかに無理やりはやらせたくはない。でも、最後まで諦めないで面白いものを作りたい、届けたいという執念だけでしたよね。

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――
試合当日に協議は持ち越し……と聞いて試合はもう難しいと思ってました。アーチュレッタが勝つつもりで試合を捨てなかったのがせめてもの救いでしたね。

笹原
 それは自分が置かれた状況への怒りもあったんじゃないですか。いちばん悪いのはクリアできなかった自分なんですけど、すべてを受け入れるしかないという覚悟が決まった。レッドカードスタートだから判定になれば絶対に負けになるので倒しにいくしかない。自分を奮い立たせるために怒りで自分に火を付けたんじゃないですかね。

――
ラウンド終了のゴングが鳴っても攻撃の手が止まらなかったのは、そのスイッチが……。

笹原
 当然あれはやっちゃいけないことです。あの行為を擁護する気はないですけど、でも人間って追い込まれたときって冷静さを保てないってことですよね。

――
猪木さんは常々「怒りをエネルギーに変えろ」と言ってましたけど。

笹原
 「アーチュレッタ、オマエは何に怒ってるんだい?」「全日に行った武藤です!」……中西学のように言うわけないんですけどね(笑)。

――
猪木問答!(笑)。

笹原
 海選手もこんなシチュエーションで試合をやることになって、やっぱり怒りはあったと思いますよ。しっかりKO勝ちで白黒つけたことはすごく大きいですよね。

――
その朝倉海はUFC行きを現実的に掲げてますけど、RIZINとの話し合いが必要ということはRIZINとの契約がまだ残っているということなんですか?


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