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大晦日戦慄の圧勝劇を見せたリオ五輪レスリング銀メダリスト太田忍インタビュー!! RIZINバンタム級・台風の目となる怪物の凄みを12000字でお届けします!(聞き手/ジャン斉藤)



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昨年のRIZIN大晦日の中で太田選手の試合が一番好きなんです!

太田 本当ですか? それメチャクチャうれしいです。

――あれだけキャリア差のある祖根選手相手に汗もかかず……いや、実際には汗はかいてるでしょうけど、あんなふうに圧倒するなんてビックリしました。

太田 いやあ、全然、必死でしたよ。最初のかんぬきの投げで、祖根さんが首やっちゃったらしくて。

――ああ、そんなことが! あれ、危ない角度で投げてましたけど……。

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太田 危ないですね(キッパリ)。そのケガがあっての結果だと思うんですよ。祖根さんのスタンドはもっと強いし、スタンドの展開でバチバチ来られたら……皇治選手とキックルールで戦うくらいだから。立ち技はボクより全然レベル高いし。

――ケガがなかったら、もうちょっと苦戦してたんじゃないかと。

太田 毎回そう思いますね。久保(優太)さんのときも、組みのテイクダウンをしたときに久保さんがヒザの前十字をケガしちゃったみたいですし。ケガしていなかったら、もっと打撃が強いんだろうな、と。そういう運に恵まれたこともあってか、久保さんのときも今回も被弾してないですからね。

――太田選手って強気な選手に見えるんですけど、こうして話を聞くと謙虚というか。

太田 いえ、そんなことないですよ。もうちょっと強気な発言したほうがいいですか(笑)。

――会見やツイッターなんかでは充分に強気な発言してるような気がしてるんですけど(笑)。

太田 本当ですか(笑)。たしかに対戦相手にはけっこう言いますけどね。自分や周りを盛り上げるっていう狙いもあるし。ただ、試合内容的には何一つ満足してないだけで。

――すると、今回の試合も満足してないんですか?

太田 今回も、です。RIZINで戦っておいてこういうのもなんですけど、この試合でやった4点ヒザも、サッカーボールキックも、踏み付けも、RIZINでしかできない技なので。

――ああ、たしかに。これがユニファイドルールだったら使えないと。

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太田 ということですね。それ以外の有効打って、たぶんスタンドでのバックブローくらいじゃないですか。あれでダウンを奪って、あとパウンドぐらい。コントロールしながらヒザを打ってるのも、フィニッシュのサッカーボールキックや踏み付けも、全部RIZINルールだからできるものなので。そう考えたら、まだまだだなっていう。RIZINで戦ううえでは有効であるのかもしれないけど。

――もっとできたことがあるんじゃないか、っていう不満ですね。

太田 一本で極めたいですよね。まだフィニッシュできるようなパウンドを持ってるわけでもないし……ってなったらテイクダウンしてから一本を獲るっていうファイトスタイルを徹底したいんですけど、まだまだです。

――自分の理想形があるけど、到達してないってことなんですね。

太田 久保さんとやったときよりは、練習したことを出せたって感触はありますし、作戦どおりの試合はできたけども、それでも全然です。久保さんのときも実際にパスしようと思えば、いつでもできたし。でも、する必要がなかったから、ああいう展開になっちゃったけど。

――ちょっと話は外れるんですけど、対戦経験のある久保選手が大晦日にあんなことになっちゃいましたけど。

太田 バカでしょって言いたい、悪いけど。やったらダメですよ。ボクも自分のYouTubeで話したけど、受けなきゃいいじゃんってことだから。スポンサーさんに頭を下げて「すみません、試合が流れちゃいました」で済む話だから。ちょっと魔が差しちゃったんじゃないですか。ホントにバカらしいです。


――久保戦は判定勝ちでしたけど、試合展開が変わらずというところもあって。今回の破壊的な試合で、皆さん一気に手のひらを返す感じが見受けられますね。

太田 どうなんですかね。今回の勝ち方が派手だったから評価が上がったのはうれしいですけど、ここからですね。バンタム級GPに出ていた選手をひとりずつ潰していって。

――ひとりずつ潰す!(笑)。バンタム級GPがやっと終わってお疲れモードのところに、太田選手が「これからですよ!」って割って入ってきてる感じが面白いんですよ!

太田 みんな疲れてるでしょうけど、いまが叩きどきですよ(笑)。

――ただ、今回の試合も祖根選手ではなく、もうちょっとキャリアの近い選手とやりたいと思いませんでした?

太田 いや、でも、RIZINに出させてるもらっているわけですから。これがRIZIN以外ではなく、パンクラス、DEEP、修斗あたりでデビューさせてもらっているんだったら、キャリアの近い選手とやるべきなんでしょうけど。RIZINはいろんな面でプロとして扱ってくれているわけですし、今回、勝つことによって、またそれなりのステップアップができることは自分の中でわかってたので、祖根さんでよかったんじゃないかなって。ファイトスタイル的には相性のいい選手ではあると思っていたんです。祖根さんはオールラウンダーって言われてましたけど、どちらかといったらスタンドに強い選手というイメージがあったし、ここはクリアしなきゃいけないでしょ?って。

――チャレンジマッチというわけじゃなくて、勝たないといけない試合だったっていうことですか。

太田 ちょっと失礼ですけど、クリアしたい、クリアすべき相手ではあるなっていう。自分のレベルを測る上でもそうですし、祖根さんをクリアすることで次の試合が組みやすくなると思うし。

――たしかにマッチメイクの幅が一気に広がりましたね。

太田 試合をして結果を残さないと、マッチメイクもしにくいと思うので。これで上の選手と組んでもらいやすくなるし、ボクはもう28歳で、そんなに時間はないので。35歳ぐらいまでできるとしても、あと7〜8年しか残っていない。となったら、行けるとき行かないと。

――ちなみに今後のRIZINで戦ってみたい選手っていますか?

太田 それは次戦ですか、それとも将来的に?

――次戦ですね。

太田 現実的に考えたら、金太郎くん、瀧澤(謙太)くんとか。

――最高の組み合わせです!

太田 そこをクリアしたら、また上の段階に行けると思うので。自信ありますよ(キッパリ)。

――金太郎選手は腰が強くてテイクダウンが難しいと言われてますけど……。

太田 強いだろうけど、まあって感じです。そこらへんとの試合は、みんなが求めているとこだと思うし。そういう意味ではバンタム級GPのオファーがあったけど、出なくてよかったなと思いますね。

――GPのオファーはあったんですね。

太田 ありましたよ。でも、客観視したら、いまの自分が出ても勝てないだろうなって。1回戦は6月だったから所(英男)さんとの試合のケガは治ってますけど、そのケガがあったことでちゃんと練習はできていなかったわけですし。それなのにトーナメントに出ても勝てるわけがないから。

――そこは冷静な考えですね。

太田 そこはちゃんと自分をマネジメントできないと。そうじゃないと単なるアホじゃないですか。べつに相手を選んでるわけじゃないですよ。オファーが来たら誰とでもやります。でも、トーナメントは断っても、べつに。

――実際に所英男、祖根寿麻とキャリア差のある相手とやってるわけですからね。

太田 全然やります。誰とでもやるし、試合が決まったらちゃんと勝つための準備をして戦います。

――ただ、あのときにトーナメントに出るのは違うと。

太田 いま出てもな……ということですね。だったら、ちゃんと段階を踏んで、しっかり作ったうえでやればいいかなって判断ですね。時間がないとはいえ、まだ焦らなくてもいいかな。これが1年後だと話は違ってきますけどね。

――それは先ほどもおっしゃっていた年齢的にも、ってことですね。

太田 はい。

――マネジメントという点ではデビュー戦で所選手とやったことはどう考えていたんですか? マッチメイクの話題性はありましたが、デビュー戦にしては高すぎる壁でしたよね。

太田 1戦目で所さんってホントにキャリアの差もあるし、MMAの練習を始めて2ヵ月ぐらいでの試合だったので。

――2ヵ月だと所選手相手じゃなくてもなかなか厳しいですねぇ。

太田 東京オリンピックは2020年の予定で、ボクがRIZINに出たのは2020年の大晦日。2期連続オリンピック出場はできなかったけど、年末の最後の最後、勝ってぶち上げたら、話題を持っていけるだろうって考えが自分の中にあって。

――ああ、そんな狙いがあったんですか。

太田 だから大晦日に出たかったんですよ。そうしたら、オリンピック延期になって2021年になっちゃった。ただMMAデビューしただけ(苦笑)。

――ハハハハハハ。そういうストーリーがあると、太田選手の大晦日出場がすごくわかりやすいですね。

太田 所さんが全然強いことはわかっていたし、MMAの洗礼を浴びたというか。試合前は「やってやる!」って気持ちだったけど、腕を折られて半年ぐらい練習できなくなって。そこは、しんどいなと思いながら、最初は所さんでよかったんじゃないかっていうキャリアにしたいと思っているし。

――先ほどの話でいうと、修斗、DEEPやパンクラスとは違う舞台で、自分をどう磨いていくかっていうところですね。

太田 そうですね。勝てれば一番よかったかもしれないですけど、あそこで徹底的にやってもらったから。いまもまだ悔しい気持ちもあるし、やり返したいって気持ちもあるし。いまでは所さんとプライベートで仲よくさせてもらっているんですけど。最終的にこのデビュー戦だったから、いまの俺があるというようなキャリアにしていきたいですね。いまちゃんとMMAを理解して考えたら、けっこうとんでもない相手だったなと思いますね。

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