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昨年6月に新生K-1を退職した元K-1プロデューサーの宮田充氏。その後の動向が注目されていたが、昨年9月にREBELSとKNOCK OUTのプロデューサーに就任! KからKへ……キックボクシングという畑を耕し続ける 「K」の職人に13000字インタビュー!(聞き手/ジャン斉藤)



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――
新型コロナでどの興行も大変ですよね。

宮田 ホントそうなんですよ。何かいいアイデアがないかな、どっかマネできるようなことはないかなと……他のエンターテインメントやイベントを探ったりしてるんですけど。ボクらは切符を売って超満員にしてお客さんに「面白かった!」って喜んでもらって成立していたんですけど。

――UFCがスポーツの中でもコロナを乗り越えているのは、無人島を借りれたりする資本の力ですもんね。

宮田 あのスケールはマネできないですね。人数制限がある中で「イベントを開催しない」っていう選択肢もありますけど、おかげさまで今年のイベントは良い日程が取れているし、やっぱりジムさんや選手の立場からすれば試合なしは厳しいですよ。ムエタイでもトップ選手が引退するケースが出てきているみたいで。彼らは「職業ムエタイ」だから、試合がなければ無収入になってしまう。

――仕事としての格闘技。

宮田 彼らは、ほぼ毎月試合できていたじゃないですか。ラジャダムナンやルンピニー以外でも郊外でビッグマッチがあったり。でもそこは日本のトップも若手も変わりなく、試合ができなかったらファイトマネーが得られないわけですからね。とにかくいまの状況はイベントに救いがないですね。無観客にしろ人数制限にしろ、たとえばチケットを半分しか販売することができないからファイトマネーを半分にしますって、できないですし。選手がやることは一緒ですからね。

――減額はなかなか納得できないですね。

宮田 ボクらもツイキャスの有料配信をやってますけど、そうそう簡単には……。 一番怖いのは、格闘技を観なくなっちゃうことですよね。「あ、べつに観なくてもいいや」みたいな。

――生活習慣が変わってしまってますからね。

宮田 会場でライブ観戦を楽しむ文化が失なわれてしまう恐怖ですよね。やっぱりお客さんがたくさん観に来てくれるから、選手も運営も張り合いがあるわけで。ちょっと違うけど、暮れのアメ横なんかもそうですよね。 

――売り子のダミ声が飛び交う中を練り歩くのが楽しいわけですからね(笑)。

宮田 昔アメ横でバイトしてたことがありますけど、あの雰囲気だと、なんでも売れちゃいますから(笑)。

――アメ横も格闘技も熱狂空間をいかにして作り上げるのか、という。

宮田 このインタビューが掲載される頃にはどうなってるかわからないですけど、2月28日のREBELSファイナルの後楽園ホール大会がRISEさんとMEGAさんと被ってるじゃないですか。 こっちはずいぶん前から決まっていて、あとからMEGA2021が東京ドームをやるらしいぞと。でも、アメリカ時間に合わせて昼開催だって聞いてたんです。

――メイウェザーを筆頭に北米向けのカードでPPVを売ろうって戦略みたいですね。

宮田 REBELSは17時開場の18時開始だから、MEGAさんと被るのは、まあいいかと思ったんですけど。今度はRISEさんが横浜アリーナでやるという情報が入ってきて。 MEGAさんはMMA 中心になるんでしょうけど、RISEさんは同じ立ち技イベントなので、やっぱり影響ありますよね。前後の土日に空き日があれば日程変更したいなと思って動きましたけどダメでした。同日開催については、よくファンの方から「横の繋がりでなんとかならないのか」って言われますけど、横の繋がりがあっても、なかなか……。

――他の土日が空いてるとも限らないですし、他の興行に遠慮して回避することはできないという。

宮田 繋がりがあるところは連絡を取り合ってるんですけど、それでも被りがちで。それに年間でスケジュールを組んでますから、他と被ってるからズラすというわけにもいかないんですよ。

――ひとつズラすと年間日程も狂ってしまう。MEGA2021は延期するという話ですけど(後日延期を正式発表)、規模が大きいところほど外国人の招聘問題で延期せざるをえないというか。

宮田 1月のK-1さんもそうでしたね。

――宮田さんが昨年6月まで在籍されていた K-1は『K’FESTA』が2年連続コロナで大変な目に……。

宮田 あぁ……去年も大変でしたね。あのときは一般のニュースで報じられたこともあって騒ぎになって……なんか、よく覚えてないんですよ。大変だったことは覚えているんですけど(苦笑)。

――ハハハハハハ。コロナの最中、宮田さんがこうやってリスタートするのも凄い話ですね。

宮田 去年の6月にK-1を辞めて……本当はこの業界から足を洗おうと思ってたんですよね。

――あ、そうだったんですか!

宮田 いま52歳なんですけど、なんか他の仕事やれないかなって。何も先のことを考えずに辞めちゃったので。

――何かボンヤリながらも次が決まってたわけじゃないんですね。

宮田 ズバリ言って、「バイトか!?」って感じの辞め方でしたよ(笑)。

――宮田さんは学生時代、全日本プロレスのスタッフ出身で。ある意味で王道イズムのある新生K-1のプロデューサーでもあった宮田さんが、12月の記者会見では、新日本イズムあふれるUインターの1億円トーナメントをオマージュするかのような煽りを仕掛けて。

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Uインターの1億円トーナメントのことは各自調べよう! (C)Def Fellow


宮田 たしかに全日本では末端のスタッフとして働いていましたけど、自分自身、馬場さんのイデオロギーってそんなに意識したことないんですよ。そういう記事を高崎(計三)さんが書いてたんでしたっけ。いわゆる「新生K-1は全日本プロレスである」と。

――犯人は高崎さんですね(笑)。

宮田 2013年から始まった新生K-1は代々木第二体育館から始まって、そのうち大会場でビッグマッチがやるようになって、アマチュアもやって……というオーソドックスなやり方で。他団体に対してのスタンスは……馬場・全日本だったかもしれないですけど。

――90年代の全日本プロレスは基本的に鎖国主義で。

宮田  ボクはK-1時代、他団体や他イベントを意識したことがまったくなかったんですよ。REBELSというイベントがあって、KNOCK OUTが始まったってことはもちろん知ってましたけど。山口(元気)代表から、REBELSとKNOCK OUTのプロデューサーのお話をもらってから、選手のことを勉強し始めて。

――そのREBELSを封印してKNOCK OUT一本でやっていくかたちになりましたね。

宮田 それはボクのほうから提案させていただきました。REBELSとKNOCK OUTにはそれぞれ2つのルールがあって。ヒジ打ち有効のREDルールと、ヒジ打ち禁止のBLACKルール。 BLACKはクリンチからのブレークが早めで、RISEさんやK-1さんに近いスタイルですね。で、同じグループに4つのカテゴリーがある、4人のチャンピオンを認定して進んでいく方向は厳しいと思ったんですね。

――ああ、なるほど。見る方からすると混乱しかねないですし。

宮田 あとはズバリ、REBELSという言葉には「反逆者たち」という意味があるんですけど、KNOCK OUTという言葉のほうがわかりやすいかなって。

――キックボクシングのイメージがつきやすいですね。

宮田 KNOCK OUTはブシロードさんから始まって、撤退後に山口代表が引き受けて、という流れがありましたけど、ここからもう一度積み直してもいいんじゃないかと。

――それでREBELSというイベントは封印して3月から一本化すると。

宮田 よく「廃止」って言われますが、あくまでも前向きな形での「封印」です。封印というのは解くためにあるものだとボクは思っているんですけど、REBELSはファイナル大会をちゃんとやる。Uインターって最終大会ありましたよね?

――ありましたね。

宮田 リングスもありましたよね。でも、格闘技って「これが最終回だ」っていうイベントってあまりないですよね。

――結果的に「あれが最後だった」というケースがほとんどですね。

宮田 ボクが長年関わっていた全日本キックは、2009年6月21日の後楽園大会が最後でした。その頃には全日本キックの中でKrushというイベントもやっていたんですけど、あの日のメインは、石川直生が前田尚紀を挑戦者に迎えてスーパーフェザー級のタイトルマッチで、チャンピオンのドロー防衛。最後に坂本龍一の「カクトウギのテーマ」を流して大会は終わったんです。

―― ドローといえば「カクトウギのテーマ」ですけど、いまのファンはさっぱりわからないです(笑)。

宮田 ハハハハハハハ。その翌22日の午前中に全日本キックの代表が逮捕されてしまったという。それで全日本キックは消滅。「ああ、昨日の大会が最終回だったんだ……」となっちゃいました。

――全日本キックは「カクトウギのテーマ」で幕を閉じた。

宮田 そうなんですよ(笑)。クイズにできますよ。「全日本キック最終大会で最後に流れた曲はなに?」って。

――正解率1パーセントですよ!(笑)。

宮田 今回は前向きにREBELSの最終大会をやろうと思ってます。メインイベントの後に『REBELSファイナル記念セレモニー』も行います。あっ、1億円トーナメント的なプロモーションの話ですけど、一応、会見前にはそれぞれの選手の窓口の方に連絡はさせていただきました。

――「こういう出場オファーを出させてもらいます」と。

宮田 実際に出てもらえるかどうかはともかくとして、コミュニケーションを取らせてもらいたいなっていう気持ちがありました。まあ、ご挨拶ですよね。RISEの伊藤さんやTEAM TEPPENの那須川(弘幸)さんともお話をさせていただきましたし。そうやってやり取りさせてもらうことで何か生まれてくることもあるのかなっていう。

――あの会見を取っ掛かりにしてるわけですね。

宮田 ボクの中でタブーはなくなりましたね。 いままでタブーがあったわけじゃないんですけど(笑)。

――はい(笑)。タブーというかK-1にはK-1のやり方があってということですね。

宮田 そうですね。タブーがなくなったというか、タガがハズレたって感じかな。ターザン山本さんが『週刊プロレス』を辞められたときも、そう見えていたし。

――突然ターザン! あのオッサンの場合は年がら年中タガが外れてるような気がしますけど(笑)。

宮田 そういえばターザンカフェが突然なくなりましたよね。

――ターザンカフェも強制終了だったので最終回はなかったですね(笑)。

宮田 ハハハハハハハ。自分も含めて、なんかみんなターザンカフェの存在を忘れてましたよね。読む習慣がなくなっていました。山本さんが全日本キックやKrushの会場によく来てもらってた頃は、 弟子の歌枕(力)さんの誤字や誤記が炸裂していて面白かったんですけど。

――「カクトウギのテーマ」より説明が面倒くさい話ですね(笑)。

宮田 あの頃のターザンカフェは2ちゃんねるとも連動していて盛り上がっていて。

――いまでも5ちゃんねるにはターザン山本のスレッドはありますからね。 たぶんターザンウオッチャー以外は追いつけない世界になってるはずですけど(笑)。

宮田 まだあるんですか!? やっぱりターザン山本さんを見つめ続けることが人生な人たちが、まだたくさんいるってことですね……。まあタガが外れたといっても、イベントの要職に就かせていただいているので、毎日けっこうバタバタしながらやらせてもらっています。まずは2月28日にREBELSファイナルがあって、その次の3月13日のKNOCK OUTの大会まで、どれくらい景色を変えられるかというところがポイントですね。

――統合の件もそうですけど、宮田さんはわかりやすく見せていこうという意識が強いですね。

宮田 わかりやすい方が、気軽に観てもらえるかなあって。そういえば最近は、記者会見が少なくなりましたね。 リリースで済ますこともできるんでしょうけど。 いまは会見やらないところのほうが多いですよね。

――新型コロナ抜きにして考えても選手を集めるのがめんどくさいし、あとはご存知だと思いますけど、そんなにマスコミは集まらないですからね。

宮田 たしかに取り上げてくれるメディアは少なくなってきてますかね。バウトレビューの井原(芳徳)さんも、やつれてしまって……。

―― 井原さんは10年前から、あんな感じですよ(笑)。

宮田 熊久保(英幸)さんも無残なことになってて。

―― なんの話ですか。

宮田 熊久保さんとは同い歳なんですよ。たしか彼は53歳になってたかな。

――えっ、ウソですよね? 熊久保さんって60代だと思ってました。

宮田 失敬なっ!

――どちらかといえば、宮田さんのほうが失敬のような……。52歳という年齢でまたイチからイベントを磨くって精神的にも肉体的にもハードですよね。

宮田 どう思います?

――RIZINが始まったとき、笹原(圭一)さんはPRIDEのときのように若さでは突っ走れないとは言っていて。まあそれでもRIZINはけっこう爆走してますけど(笑)。

宮田  笹原さんは40代でしたっけ?

――熊久保さんと同じ53歳です(笑)。

宮田  失敬ですけど、全然同い歳に見えないですね(笑)。
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