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毎大会恒例! 笹原圭一RIZIN広報のインタビュー!!  今回はRIZIN大晦日について15000字の大ボリュームで振り返ります!(聞き手/ジャン斉藤)


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・【必読】笹原圭一広報「RIZINの判定基準について説明いたします」

・【RIZIN24の裏側】RIZIN広報・笹原圭一の1000倍返しインタビュー

皇治ロングインタビュー「どんな結果になっても皇治ワールドになるんですよ」




――
大晦日のRIZIN、メチャクチャ面白かったですね!

笹原
 でしょ?

――
「でしょ」(笑)。

笹原
 お正月早々自画自賛しちゃいますけど、RIZIN5周年の節目にふさわしい素晴らしいイベントになりましたね。RIZINサイコー!!!!!

――
水を差すようで申し訳ないんですけど……明日、地上波の視聴率の発表されてガックリきそうです(1月1日に取材)。

笹原
 そんな数字のことなんか忘れて、ボクはいまこの瞬間を謳歌しますよ!(笑)。

――
今回の大晦日は語るべきポイントが多すぎますよね。

笹原
 話すべきこと、伝えたいことはたくさんあった大晦日ですよね。まともに語ったら2時間近くかかりますよ。

――
というわけで、まずは違法動画の件からお願いしたいんですけど。

笹原
 今日くらいもっと気持ち良く話をさせてくださいよ! なんで新年早々どんよりするネタを話さなきゃいけないんですか!

――昭和・新日本プロレス方式で前座から徐々に温めていくというか……。これまでYouTubeには違法にアップされたRIZINの試合動画が溢れていましたけど、RIZINとしては何か対処はされてるんですか?

笹原
  もちろん、これまでも違法動画対応はやっていますよ。今回も専門業者を入れて取り締まりをしています。これは本当に痛し痒しなのですが、注目度が上がれば上がるほど違法動画が増えることもあって、もう違法動画をアップする人間に対して損害賠償を行なうところまで踏み込むしかないです。一時期ニコニコ動画にUFCの試合映像が違法にアップされていましたが、UFCが裁判を起こしてからは違法にアップされなくなりましたからね。

――
その裁判では被告に総額1000万円近くの損害賠償判決がくだされて……。また細かいネタですけど、萩原(京平)選手が1回目の本計量で100グラムオーバーした際にホテルの体重計と誤差があったとか。川尻達也選手がそれについて「体重計の誤差問題は、ホテルに計量で使う体重計かそれと同じ物を常に置いておけば、選手が自分で用意した体重計との誤差を確認できるので無くなる。UFCの時はそうしてた。RIZINの時もそうしてくれって言ったけど用意してもらえなかった。選手はいつもギリギリだからね。誤差で100グラムさえもキツい!」と。このツイートが話題になっていますね。

笹原
 まずRIZINの計量はこちらが決めた4時間の中でクリアすればいいという仕組みなんです。ですので、その時間前には本計量で使用する体重計に乗ることはできないんです。選手から「事前に測れないですか?」って聞かれるんですが、ホテルのツアーデスクに計量で使用する体重計に合わせた別の体重計を用意しているので「そちらを使ってください」と。なので基本的なやり方はUFCやベラトールと同じですよ。RIZINが用意したホテルに泊まっている選手たちはそのことをわかっているんですけど。

――
川尻選手は自宅通いだから知らなかったかもしれない。

笹原
 ただ、一発計量であれば予備計量室を用意して、1グラムも誤差のないくらい厳密な体重計を用意すべきだと思いますが、さっきも言ったようにRIZINは4時間の中でクリアすればいいんです。たとえばイリー・プロハースカとかは、あきらかにオーバー気味で体重計に乗ってオーバー分を確認して、その後サウナに入ったり、動いたりして落とすんですよ。ただ減量のシビアな選手が、その4時間の計量の前に体重計に乗りたい、という心理はよく理解できますけどね。

――
なるほど。RIZINってよく話を聞くと、なんてことないことで批判されまくりますよね(笑)。

笹原
 あたりまえですけど、計量は厳密にやっていますよ。今時、計量を適当にやっている団体なんかないですよ。

――さて、そろそろ本題に入りますが、なんといっても前半の主役はHIROYAvsシバターでした。YouTuberシバターの起用は予想以上の大ヒットだったんじゃないですか。

笹原
 こちらが思っていた以上にハネましたね。

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――
いつぐらいから計画はあったんですか?

笹原
 けっこうギリギリです。本当に直前です。もともと計画していた亀田和毅vs皇治が土壇場で飛んでしまったことで、皇治選手の相手を探さなきゃいけないし、そのカードに代わる別の目玉を用意しなきゃいけなくなったんです。

――
そこでシバターを投入しようと。

笹原
 そうなんです。皇治vsシバターの案も挙がる中で、皇治選手の相手は最終的に五味(隆典)選手に決まったんですけど、シバター選手の試合も組もうと。

――
亀田参戦が消えなかったらシバターはなかったかもしれないと。

笹原
 じつはYouTuberを出す計画はシバター選手以前からあったんです。アメリカの人気YouTuberローガン・ポールのボクシングの試合がDAZNで驚異的な数字を取ったときに、●●●にRIZINに出られないかとオファーしたんですよ。

――
そんな計画が!ローガン・ポールのDAZNボクシングマッチというと一昨年のことですね。

笹原
  そうしたら「やってもいいですけど、ギャラは5000万です」って言われて、速攻で「失礼しました〜」って感じで電話を切ったんです(笑)。

――
影でいろいろと動いてるんですね(笑)。

笹原
 その前段があって今回のシバター選手の参戦があるという流れですね。

――YouTubeの起用に、対戦相手は当日発表の「X」とかなりギャンブルな仕掛けでしたよね。それにあのシバターのキャラクターからすると、「まともに試合をするわけがない」と見切る人間もいる中で、RIZINにもリスクがあったと思うんです。

笹原
 いや、リスクしかないですよ(笑)。まぁでも、シバター選手がこちらが思っている以上に格闘技に対して真摯だったということが、今回の成功の鍵だったと思いますよ。

――
RIZINとシバターは信頼関係が築けていたということですか?

笹原 いや、信頼関係が築けていたかというと、そこはわからないんですけど(笑)。

――
なるほど(笑)。言い方を変えて格闘技に対する信頼はあったというか。

笹原
 ああ、それは確実にあったと思います。 シバター選手のやりたいことと、RIZINがやりたいことに多少の齟齬はあったんですけど、格闘技に対する愛があったことで、最終的にはうまくまとまったんじゃないかとは思いますね。

――
YouTubeっぽい企画に収まらず、RIZINのカラーに染まったことは大きいですよね。

笹原
 YouTubeには「◯◯をやってみた」という企画が多いですけど、それってある意味最初から「YouTubeの中で見られる程度のオチ」ということを、みんなわかったうえで見ているじゃないですか。

――
視聴者が“神の視点”を持ちがちですよね。

笹原 それがYouTubeから飛び出して、衆人環視のもとリアルタイムで行なわれるという刺激ですよね。「RIZINで試合をやってみた」が本当に実現したらどうなるのか?と。どんな結末が訪れるのか誰もわからないドラマを、緊張感を持ってリングの中で見せられたんじゃないかと思いますね。

――
仕掛けを張り巡らせたことで「いったい何が起こるんだろう?」という興味の惹き方は凄かったですね。

笹原
 対戦相手の名前を出さず、RIZINからも基本的に情報発信しないでおこうと、最初から決めていたんですよ。

――
「どうせシバターが勝手に騒いでるだけだろ?」と誰も本気しない中、榊原さんの「カード順が決まりました」というツイートで初めてシバター参戦が明らかになって。そこで榊原さんがシバターに何も触れていないことが妙におかしくて(笑)

笹原
 たとえばあそこで社長がシバターを事務所に呼んで「格闘技を舐めるな!」「本気でRIZINに上がる気はあるのか?」と劇場型にしたら、いかにも……って感じで緊張感は保てなかったと思うんですよ。

――
一気に“作り物”感が出てきちゃいますね。

笹原
 正式発表前にシバター選手がRIZIN参戦を煽る動画を上げ続けていましたけど、そこまで再生回数は伸びてなかったんですよね。10万回程度で。ただ、社長が試合順だけ発表して、シバター参戦のことに一切触れずにいれば、絶対にみんな騒ぎ出すと思っていたんですよ。

――
実際みんなシバター参戦で持ちきりでしたね(笑)。

笹原
 そうなんですよ。出場選手も試合順決定のツイートをするんですけど、どの選手のリプライにも「なんでシバターが!?」みたいなリプが付きまくっていて。あの那須川天心や朝倉海のツイートにすらそうでしたからね(笑)。

――RIZINサイドがとくに何も触れず、対戦相手も「X」と正体不明だったことでミステリーが深まって。しかし、よく正体がバレませんでしたね(笑)。

笹原
 みんなに「正体は誰だ?」と推理してもらって当日の試合ギリギリまで楽しんでもらいたかったんですね。いまは何でも簡単に情報が出回っちゃうんですけど、よく当日まで漏れませんでした。

――偶然にもピーター・アーツが来日してて 「アーツがXじゃないか」と噂になったり(笑)。

笹原
 そうなんです。なのでピーターの曲を流して入場させて、そのままセコンドつかせよう!とか話していたんですよ(笑)。

――
ハハハハハ! 3人くらい登場して「いったい誰が戦うのか」となっても面白かったかも。

笹原
 シバター選手が騒いで、RIZINがシレっと発表して、みんなが騒ぎ出すところまではイメージできていましたけど、実際のリングの上では何が起こるかわからないので、そこは試合をする2人も、運営側も完全にガチンコというか、ギャンブルでした。

――
これっばかりは筋書きのないドラマですもんね。シバターがあっけなく秒殺される可能性もある中で。

笹原
 そこはシバター選手が頑張りましたよ。このカードって本来ならば、今回オープニングマッチでやった高校生対決のように本戦でやるべきではなかったかもしれません。実際にそういう使い方をする可能性もあったんですけど、本戦の中に普通に入っていたほうが絶対に面白くなるんじゃないかと。そうすることでたばシバター選手をオープニングセレモニーに出すことができる。で、結果的にはあのセレモニー終了後、控室に戻ってきたシバター選手がむちゃくちゃ興奮してて。「ウォォォォォォ!」みたいな感じで咆哮していたようなんです(笑)。そりゃ、朝倉兄弟、那須川天心、堀口恭司なんかも出るセレモニーで自分を紹介されればテンションが上がるに決まってますよね。

――
以前は「後楽園ホールで試合できたら男としてアガリ」なんて言い方がされましたが、いまはさいたまスーパーアリーナかもしれない(笑)。

笹原
 あそこでシバター選手のスイッチが入って、試合でもあそこまで頑張れたんだと思います。 

――
シバターを「迷惑系YouTuber」というイメージを持ってる方は多かったと思うんですけど、前日会見のインタビューとか今回のRIZIN劇場を通して「人間シバター」が見えてきたところもありますよね。「格闘技オタクしか見ないカードばっかりやってどうするんだ?」という出場動機も明確でしたし。

笹原
 RIZINのリングってその選手本人の人間性がむき出しになるじゃないですか。もちろんそうしないと興味をそそられないし、試合は絶対に面白くならない。そこはシバター選手の人間性が垣間見せられたし、魅力は伝わったんじゃないかなと思いますね。

――
地上波でも前半戦で30分近く尺を取って。

笹原
 事前にシバター選手の入場シーンを流す・流さない問題もあったんですよ。もともと皇治戦が実現したら生の可能性もありましたし。まぁ詳しくはシバター選手のYoutubeをみてください(笑)。彼の主張が全面的に正しいとかではないですが、まぁRIZINといろいろと揉めていたことはわかると思います(笑)。
 
――でも、皇治戦ではなくなって生中継は消滅と。

笹原
 撮って出し(録画放送)でも、生放送でも選手の入場を流すことは当然確約はできないんですよ。

――
入場を流す意味がない試合になるかもしれないですし。

笹原
 そうです。なのであの入場シーンがほぼ流されたのは、シバター選手が肝心の試合を頑張ったからこそですよね。

――
そこでゴッドアングルが起きたいうか、 HIROYA選手のタップ事件ですよね。

笹原 これも凄い展開ですよね。

――
一度はドローということで試合後にお互いがマイクで健闘を称えあったわけじゃないですか。しかし、映像検証の結果、HIROYA選手が腕十字でタップしていた……とドロー裁定が覆ってシバターの勝利。 

笹原
 あの試合後に競技運営陣から「タップの疑いがあるので、すぐに吟味したい」という報告があったんです。実際にルールでも、『試合の裁定をその場で決するのに適さない事態が発生した場合、審判員は試合結果を保留し、競技運営機構の審議に預けることができる』という項目があるんです。なので試合映像を見返して、レフェリーやサブレフェリーから聞き取りをして検討した結果、タップを見逃したわけじゃなくて、試合を止めることができなかったと。誤審ですね。

――
レフェリーが誤審を認めるってかなり珍しいことですね。 

笹原
 そうなんですよね。正直ボクとしては「ドローのままでいいじゃん」っていう気持ちもあったんですけど、競技運営陣としては「この裁定は正さなくてはいけない」と。

――
ガチですね!

笹原
 ボクも映像を見返したらたしかに一理あると。でも、最初にその報告を聞いたときに、このタイミングで裁定を変更することの反響の怖さがあったんですよ。

――
ネガティブな反応が返ってくるかもしれない、ってことですよね。

笹原
 そうです。それにドロー決着でHIROYA vsシバターという作品ができあがったわけじゃないですか。それなのにじつは……とアナウンスをしなきゃいけない。競技運営陣からすると自分たちの非を絶対に認めたいっていうことなんですよ。

――ガチですね!某・谷川貞治さん体制だったらスルーしますよ(笑)。でも、意外と裁定変更は受け入れられてましたね。

笹原
 そうなんですよね。

――
ボクは裁定変更が発表された瞬間に「これで To Be Continue になった!」と前向きに受け止めたんですよ。物語はまだ続くというか。 HIROYA選手には当然悔しい感情があると思うんですけど。

笹原
 HIROYA選手にも裁定変更の説明はしました。本人は「タップはしてない」と納得していませんでしたけど、判定に異議や不服がある場合は抗議文を出すしか方法はないんです。 

――
HIROYA選手の姿勢も正しいですよね。某・所英男さんぐらいになったら「これはおいしい展開だな」って思っちゃうんでしょうけど(笑)。 

笹原
 1回きりの参戦だったかもしれないシバター選手が、図らずも物語は続くかもしれないってことですよね。この先どう転んでいくかは我々にもわからないですけど(笑)。 

――
話を聞くとYouTuberを出したから盛り上がった、というわけではないですね。それぞれの計算や動機があって、流れもある中で、 そして予期せぬハプニングも次々に起きて。

笹原
 有名人が出たからって、それだけでは絶対に響かないですよ。そこでその人が何を考えて戦っているのか、何を懸けて戦っているのかを伝えられないと絶対に面白くないですよね。

――
五味隆典vs皇治も急遽マッチメイクしたわりには手応えがあったというか、揉みごたえがあったというか……金玉の(笑)。

朝倉海vs堀口恭司、朝倉未来vsドミネーター、平本蓮vs萩原京平、そして武尊来場…などを振り返る15000字インタビューはまだまだ続く!
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