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――本題に入る前に……小佐野さんも選考委員を務めるプロレス大賞が今年も発表されました。
――ああ、そうですよね。ZOOMかなんかで。
小佐野 そう。そういう事情もあって各部門の投票先は事前にメールで送ることになっていて。第1次投票の時点で過半数を超えていたら、その選手に決まっちゃうんですよね。
――従来はディスカッションを経て第1次投票。投票1位が過半数を超えてなかったら議論の末、第2次投票が行われるというシステムで。
小佐野 だから難しかった。いままではMVPを決めたら、次はベストバウト……という流れで投票するけど、今回はまとめて事前にメールするから。今回のMVPは内藤哲也だったでしょ。MVPに潮崎豪を推していた人は、他の個人賞には潮崎の名前を絶対に入れてない。
――ああ、なるほど。MVPでダメなら三賞に、という思惑が働かない。
小佐野 内藤がMVPになってしまったら潮崎推しだった人はやっぱりどこかの賞に潮崎を入れたくなる。じゃあ敢闘で、殊勲で……というやり方が今年はできなかったから。あと時間もそんなにかけられなかったし、いろんな規制の中でやるしかなかった。今年はスポーツ関係のこういった選考会が中止になってるけど、プロレス大賞はもう40何年もやってる伝統的なものだから途切れさせたくないという東スポの意向もあった。なので「不本意ながらオンラインの開催でお願いします」という話だった。今年は17人の選考委員だったので1票の重みも大きかったし、ちゃんとディスカッションできるようにコロナの収束を願うしかないよね。
――ZOOMだと議論は難しいですよね。
小佐野 慣れてない人もいるからね。会話に入り込んでいいものなのかとタイミングが難しいし、司会進行の方が「◯◯さんはどうですか?」と振ってくれたけど。それに接戦になっていれば議論になるんだけど、今回の審査員は少なめの17人だったので、第1次投票で9票入ったら決定。そこに文句をつけようがないというか。
小佐野 選考結果自体をいえば、ファンは「MVPはまた新日本か……」となっちゃうんだろうけど、どうしても大きい大会をやって注目を浴びている団体からの選出は多くなるよね。それだけ影響力を与えているってことだから。今年はコロナの問題で大会が開けたり開けなかったりしていたから、団体によっては苦しい面もあったんだけど。
――予定は大幅に狂いましたよねぇ。
小佐野 たとえば今年選出がゼロだった全日本プロレスは後楽園ホールが最大規模の会場で、大田区体育館規模でさえやってない。諏訪魔の三冠戦も後楽園だったし、どれだけの人間がこの試合を見ていたのかってことが問われるから。今年のノアは大きな会場でやったり話題性があったし、来年2月には10年ぶりに日本武道館でやる。やっぱり一般人でも見るような大会をやっていかないとプロレス界は発展していかないからね。
――団体の力が問われるわけですね。
小佐野 やっぱり選手だけの力だけではなくなってきてると思う。たとえば観客数十人の前で凄い試合をやっても、やっぱり評価の対象になりづらい。
小佐野 それに「凄い試合」ってたくさんあるから、その中からなぜ選ばれるのか。そこでわかりやすかったのはノアの潮崎vs藤田がベストバウトの候補に挙がったのは、今年ならではの試合だったからでしょう。
――30分以上の睨み合いは無観客だからできたことですよね。
小佐野 今年の潮崎はボロボロになりながらよくやっていたと思うよ。テーピングもあんなに巻いてね。拳王と60分フルタイムをやって、藤田和之や中嶋勝彦とも長い試合をやって、それで杉浦貴とは50分超えの凄い試合をやったでしょ。 場外戦はほとんどやってないからね。潮崎が1年を通して頑張ったけど、MVPを獲れなかった現実がある。それは潮崎だけの問題でもないよね。何年か前に全日本の宮原(健斗)が MVPを獲ると宣言して結局ダメだったけど、それはやっぱり本人だけの責任ではない。昔の大仁田厚みたいに電流爆破で突き抜けちゃったのであれば別だよ。あのときの大仁田は世間を巻き込んじゃったから。
小佐野 結果的に今回のプロレス大賞はブシロード系とサイバーファイト系が占めちゃったんだけど。さすが新日本は面白いよ。今回は内藤じゃなくて高橋ヒロムが MVPを獲ってもおかしくなかったし。
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