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「RIZINと競技運営」を語る16000字インタビュー
が大好評だった福田正人RIZIN&DEEP審判部長に「おしゃべりアベマ野郎」こと大沢ケンジ師匠が判定基準をテーマに直撃! ジャッジがよく理解できてMMAが10倍面白くなる対談の後半戦です!



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福田
 ジャッジが難しい試合をいくつか用意したんですよ。大沢さんにぜひジャッジしてもらおうと。

大沢 うわあ〜、これは大変だ。ちゃんと「10-8」をつけられるかなあ(笑)。 ここまで聞いたジャッジの基準の話って、ダメージを本当に意識してるんだなってことですね。テイクダウンや上をキープしていることがもっと重要視されてるのかと思っていたから。

福田 どちらの選手が、相手により大きなインパクトを与え、試合を終わらせようとしていたかってことですよね。インパクトはダメージを言い換えたものですから、最も重要な要素はダメージだっていうことです。打撃が当たったとしても、単なる攻撃はアグレッシブネスで評価されるときもありますし、ダメージの定義は簡単ではないですね。

大沢 そこを理解してないと「手数が多かったから」「コントロールしていたから」という理由で「このラウンドを取った」と思い込んじゃうケースが出てきちゃうってことですね。 

福田 RIZINに関しては試合全体にわたっての評価なのでラウンド毎に評価する10点法とは判定基準の各項目の定義というか、重みの部分については異なってくるかと思います。たとえばダメージでいえば、RIZINの場合はパンチでふらついたという1シーンでは、試合全体の中ではダメージとしては簡単に評価できないかと思います。10点法であれば、一つのラウンドの中での評価なので、1シーンでもダメージの項目で評価することがあるかもしれませんが。

大沢 全体評価の場合は10点法と違って、評価が勝敗にそのまま直結するわけですよね。

福田 そうですね。なので、RIZINの場合は全体を通じての試合への影響度ですから、ラウンド毎での影響度ではないので、よっぽどのダメージでないとダメージの項目では評価できないのかと思います。たとえば昨年のRIZINバンタム級GP決勝戦、堀口恭司選手と石渡伸太郎選手の試合で、1ラウンド終盤に堀口選手がパウンドで追い詰めましたよね。あそこまでの攻撃じゃないとダメージとしては評価しづらいということですね。

大沢 あのシーンくらい決定的な場面を作らないといけないと。

福田 RIZINの判定基準はまずダメージで評価します。ダメージで差がない場合はアグレッシブネスで評価します。アグレッシブネスでも差がなければ、マスト判定なのでジェネラルシップで必ず差を見い出すというスタンスで、各項目を段階的に評価するという点ではユニファイドと同じです。

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福田
 ジョン・マッカーシーも「ダメージが同じで、優劣をつけることが難しい場合には、次の評価項目であるアグレッシブネスを見なさい。さらに、これも全く同じなら、ケージ・コントロールを見ないさい」と段階評価の仕組みを明言していました。でも、各項目の濃さや重みというのは、試合全体にわたっての中のものとラウンド毎の短い時間の中でのものとでは異なってきますよね。

大沢 たとえばジャブやロー、ミドルなんかの打撃でコツコツと攻める選手と、パンチをぶん回す選手が戦ったとしますよね。コツコツ攻めても、フラッシュタウンで2回腰を落としたりした場合はどうなるんですか。

福田 状況にもよりますが、あくまでもその攻撃によって選手はどのような状態になったかですよね。試合への影響度が感じられない状態であれば、いまのRIZINではダメージでは差をつけづらい傾向があるかと思います。アグレッシブネスやリングジェネラルシップで判断していくのかと思います。

大沢 もうちょっとハッキリした差をつけないと、ダメージとして最大評価されないってことですね。

福田 全体評価ではなく10点法の場合は、フラッシュダウンを2回取ればラウンド内のことですから、そのラウンドの中ではダメージの項目で評価するジャッジはいるかもしれません。そういった部分で、全体評価と10点法の違いが出てきますね。

大沢 いやあ、ルールの違いで評価が変わるのは面白いですね。

福田 たとえば2ラウンドの試合で、1ラウンド目はA選手が手数の多さで「10-9」だったとして、2ラウンド目はB選手がテイクダウンからパウンドで追い詰めたけど「10-8」まではいかなくて「10-9」の評価だったとします。結果「19-19」のドローなんですが、ファンからすれば2ラウンドの印象が強いから「B選手の判定勝ちなんじゃないの?」と疑問が出やすいですよね。

大沢 10点法だと、そういうズレは出てきやすいですね。あるラウンドでパンチでダウンを奪って「10-9」、他のラウンドでは手数の差で「10-9」だったりすることはあるし、ラウンド毎をの中身は明らかに違うのに同じ点差になるようなケースもあると。 

福田 なので、ユニファイドは「3本勝負」という考え方をしたほうがわかりやすいかもしれないですね。全体評価のRIZINは1本勝負。

大沢 あー、その言い方はわかりやすいですね〜。ユニファイドルールは3ラウンド中2ラウンドを取ったら勝ちだよと。ときおり「10-8」やKO・一本勝ちというボーナスも飛び出すけど、基本は「10-9」の取り合いだと。

福田 まあ、「3本勝負」って昔のプロレスを見てないと伝わりづらいですけど(笑)。それを踏まえて大沢さんに模擬ジャッジをしていただければと。最初に見ていただく試合は、RIZINバンタム級GP1回戦の大塚隆史vsアンソニー・バーチャックです。全体評価(RIZINルール)と10点法(DEEPルール)それぞれでジャッジをお願いします。

大沢 わかりました〜。

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昨年7月に行われた大塚vsバーチャックは判定の難しい試合となった。©RIZIN FF


福田
 いかがでした?

大沢 10点法だったら1ラウンド目は、ポジションからのパウンドを評価してバーチャックですね。ややダメージも与えてたと思いますし。

福田 1ラウンド目は「10-9」でバーチャックということですね。

大沢 2ラウンドは大塚がトップを2回取ったし、打撃数の多さで「10-9」で大塚。3ラウンドはスタンドのヒット数で大塚かなあ。これも「10-9」。

福田 10点法だと「9-10、10-9、10-9」、トータル「29-28」で大塚選手の判定勝ちということですね。

大沢 RIZINルールでの全体評価なんですが……これ、全体評価だとダメージはどちらもつかないですよね。

福田 この試合内容だとつけづらいですよね。

大沢 そうすると、次はアグレッシブネスの項目での評価ですよね。

福田 一本やKOを狙う積極的な攻撃があったかどうか。

大沢 アグレッシブネスもどちらも評価できない……と見たんですけど。となると最後のジェネラルシップ。トップをキープしてる時間でいえば大塚。RIZINの全体評価でも大塚の判定勝ちなのかなと。

福田 なるほど。実際のジャッジでも、2名がジェネラルシップを評価して大塚選手、残りの1名がアグレッシブネスを評価してバーチャック選手だったんですよ。「2-1」で大塚選手の判定勝ち。

大沢 あー、なるほど。自分と同じジャッジをしたのが2名。

福田 これが10点法だった場合も「29-28」で大塚選手の勝ちになっていた可能性は高いのかもしれません。でも、勝敗結果は同じでも、全体評価と10点では、「ダメージ」「アグレッシブネス」「ジェネラルシップ」の各項目の評価内容は異なってきたかもしれませんね。

大沢 当日のジャッジ1名がアグレッシブネスを評価したことをどう見てるんですか?

福田 1ラウンド目にバーチャックのサッカーボールキックがあったじゃないですか。

大沢 あー、そこはボクもどう見るか悩んだんですよぉ。

福田 あの攻撃はダメージには至らないけど、コントロール以上の打撃だと評価したんじゃないかと思います。

大沢 あのサッカーボールは1シーンですけど、全体評価だと1シーンの攻防って試合全体の中では薄れてこないですか?

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