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大好評アジャ・コングインタビュー第2弾! 今回は日本中から憎まれたダンプ松本の人間味溢れるエピソードや、アジャ・コングが挑んだグローブマッチから感じられる全日本女子プロレスの「スーパーストロングスタイル」ぶりに迫ります! 




<前回のインタビュー>
アジャ・コング、デビュー30周年記念インタビュー「全女はAKB48やジャニーズだった」
http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1087876




──ご存知かどうかわからないですが、ウェブで「女性プロレスファンはお金を落とすのか、落とさないのか」というテーマが話題になってまして。 

アジャ ああ、ササダンゴがわけわからないことを言っているやつですか。

──ああ、ご存知なんですね(笑)。ササダンコさんはご自分の顧客データから今後の戦略を口にしただけで女性ファンに何かケチをつけてやろうという気持ちはなかったんだとは思うんですけど。 

アジャ そうでしょうね。どう考えてもササダンゴの場合は女性客がそれほど付きそうにないタイプですから。

──かつてアジャさんが男子の客を会場に引っ張ってきたときに、全女のフロントから「男子ファンはお金を落とさないから、連れてきても意味がない」と嫌味を言われたんですよね。 

アジャ そうそう。今回の件とは逆のことを言われましたね、全女の会社からは。

──当時の全女にはそういうデータが出ていたということなんですか? 

アジャ ビューティペアやクラッシュギャルズの時代もそうですけど、やっぱりお客の8割9割は女性なわけじゃないですか。グッズを買うのも当時は女性ファンが多かったから。あと一般論で考えるとね、男性も自分の趣味にお金を使うかもしれないけど、女性はたとえば宝塚とかでも使い方がハンパじゃないですから。

──世間でブームと言われるものは女性からの支持は得てますね。 

アジャ 会社には「女が集まるところには男が寄ってくるんだから」とも言われて。男を連れてくるなというよりは、女性が集まるところには必然的に男が集まるという感覚だったんですよね。

──逆に男性が集まっているところって、女性はなかなか入りづらいですね。 

アジャ ちょっとためらいますよね

──長与(千種)さんは全女の会場に男性ファンを連れてこようとしたけど、なかなか難しかった。そのハードルを飛び越えたのがアジャさんとブル中野さんの抗争ですよね。 


アジャ そこを意識してやったわけじゃないんですけどね。気づいたら結果的にそうなった。クラッシュと同じことはできないし、お客さんも望んでないだろうし。私と中野さんの抗争は、どう考えても女の子受けするものではなかったので。男子のプロレスを観ている層に「女子でもこんな凄いことをやってるのか!?」というきっかけは作ったと思うんですね。

――それが90年代の全女ブームに繋がるわけですよね。 

アジャ ただ、女の子にとっては、えぐすぎる内容なんですよね。だから会社から言わせると、お金落とさないこともそうだけど「プロレスラーのなり手がいな くなるだろう」と。

──ああ、あんまり激しすぎるとプロレスラー志望を敬遠させてしまう。 

アジャ そうそう。女の子が全女に入ってこないでしょ。

──「男子ファンを連れてきても……」発言にはそういう意味もあったんですねぇ。今回はその中野さんとの闘いに至るまでをうかがいます! まずアジャさんはクラッシュギャルズに憧れていたから、ヒールの極悪同盟には入りたくなかったんですよね。 

アジャ 全然入りたくなかったですね。

──
昔のアジャさんの記事を拾ってみると、「あの当時はダンプ松本さんを尊敬できなかった」という発言もあったりして。 

アジャ 尊敬できないというか、もともと私はクラッシュギャルズのファンで全女に入った人間ですから、ダンプさんはその対極にいる人なんですよ。当時は1516歳だったし、入って早々まだファン感覚も抜けてないから、もう「極悪同盟、大嫌い!」だったんですよね(笑)

──年齢的にはまだ子供ですよね。 

アジャ そんな状態で「おまえは今日から極悪同盟だ!」と命令されてもねぇ。子供だから気持ちが素直に顔や態度に出てしまうし、そうなるとダンプさんだっていい気はしなかったでしょうね。私なんかはとくに態度が露骨だったから。

──ダンプさんからすると、かわいくない後輩だったんですかね。 

アジャ そうだと思いますよ。でも、いま考えると、逆にダンプさんのほうが歩み寄ろうとしてくれていましたね。私の以前にも、あらゆる新人からそういう態度を取られていたでしょうから。だって、入ってくる新人なんて、だいたいみんなクラッシュのファンじゃないですか。極悪同盟は世間から本気で疎まれてる存在ですし。だからダンプさんの中では「極悪同盟はファミリーなんだ」「この中だけはみんな味方になろう」という感覚で後輩に接していたと思いますね。

──ダンプさんからそういう態度を感じる場面があったんですね。 

アジャ ありました。当時の巡業はベビーフェイスとヒールのバスは別々なんですけど、途中パーキングに寄ったりしても、基本的に新人は何も食べられなかったりするんですよ。でも、ダンプさんは「余ったから、食べな」って極悪同盟のメンバーには分けてくれたりしていましたね。しかも、自分のぶんより多めに。

──ムチャクチャ優しいですねぇ。 

アジャ バスの中にある冷蔵庫にはダンプさんの飲み物がいっぱい入っていたんですけど、「このバスに乗る子だったら、冷蔵庫に入っているものは誰が飲んでもいいよ」という決まりで。いつもダンプさんが飲み物を補充したんです。いま振り返るともの凄くいい人なんですよねぇ。

──極悪同盟のメンバーとはファミリーの絆を深めようとしていたんですね。 

アジャ ダンプさんだって、もともとはビューティペアに憧れて入った人ですから。でも、ヒールという仕事を大人な考え方でやられていたんだと思います。あの当時のダンプさんは2829歳だったはずだから、そのへんは割り切ってできたんでしょうし、まだ子供だった自分の葛藤も理解できたと思うんです。だから「せめてここの仲間だけは味方でいよう」という感覚だったんだと思いますよ。

──当時のダンプさんは日本中から憎まれていて、外も一人で歩けない状態ですよね。 


アジャ とても一人では歩かせられないので、必ず付き人と一緒でしたね。やっぱりクラッシュの敵役だから、道を歩いていても石を投げられますし。

──石を投げられるってよっぽどですよねぇ。 

アジャ 試合中もトイレットペーパー、卵、石……いろんなものが飛んでくるので。私たちは常に見張って、投げたヤツをつかまえなきゃいけなかったんです。

──そんな状態だと、せめて極悪同盟の中では絆を深めようとしますね。 

アジャ だから巡業の移動途中に動物園に寄ったりしてましたもん。

──極悪同盟が行く動物園!(笑)。 

アジャ ベビーフェイスの若手はすぐに会場に入って、リングを作って練習したりするんですけど。極悪のほうは「今日はあとから会場入りする」ってことで、巡業中に観光旅行みたいなことをしていましたよ。そこは完全に女子感覚で(笑)。

──ヒールのトップとしていろいろと気を遣ってたんですね。ダンプさんは後輩イジメをしてなかったそうですし。

アジャ でも、当時の自分の中ではやっぱりダンプさんは嫌いだったんで、ちょっとでもイジられると「やっぱりこの人は悪い人なんだ……」と思っていて(笑)。

──うーん(笑)。 

アジャ ダンプさんからすると凄く扱いづらかっただろうなと思います。いま考えると本当に申し訳なかったですね。

──アジャさんはヒールとしてどうしてもテンションが上がらなかったわけですね。 

アジャ まったく。自分の中では「ダンプ松本がいるから、極悪同盟があるんだ」と思い込んでいて、ダンプさんが引退すれば極悪同盟もなくなるし、そうすれば私もベビーフェイスに戻れると思っていたんです。だから、ホントに申し訳ないですけど、ダンプさんの引退の日を指折り数えていましたし、引退の日が決まるとカレンダーにもはなまるをつけてましたよ(笑)。

──
ハハハハハハ! 

アジャ ダンプさんが引退された日も先輩はみんな泣いているけど、逆に泣けない自分を「どうしようかな……?」みたいな。なんせ明日からバラ色の日々が始まると思っているんでね。ダンプさんから最後に何か言葉をかけてくださったと思いますけど、私はそれすらも覚えてないですね。最低ですね、本当に(苦笑)。

──ところが、ダンプさんが引退してもアジャさんはヒールのままなんですよね。 

アジャ そう!(笑)。会社は「ブル、おまえが極悪同盟のトップをやれ」という。ただ、やっぱり中野さんもダンプさんを尊敬する部分と、自分が目指すプロレスはこれじゃないという考えがある方だったので、最初は断ったらしいんです。当時の中野さんは20歳前後で、一番脂が乗っていた時期でしたし、自分のやりたいプロレスをやらせてくれと。となると「じゃあ、誰がヒールの若手を引っ張ってくれるの?」ってなったときに、初めてダンプさんに守られていたということがわかるんですよね。

──そこでダンプ松本の偉大さに気づいた。 

アジャ ダンプさんがいた頃は、ベビーの先輩たちと関わることがなかったこともあって好き勝手できたんです。さっきパーキングで飯食う話をしましたけど、ベビーの若手なんて一口も食えないわけですよ。バスの前でずっと立って待ってなきゃいけないわけですから。

──立って待ってる! ご飯も食べずに。 

アジャ そうですよ。先輩たちが戻ってくるのを、ただひたすら立って待っているだけ。動物園なんてもってのほかで(笑)。だからよく同期のベビーの子には「いいよね、極悪は」と羨ましがられましたよね。こっちは「ベビーフェイスというだけバラ色じゃん!」と思ってましたけど。もちろん、極悪もそれなりにムチャも言われたりはしてますけど、ベビーでいるよりは100倍、200倍ぐらいマシだったと思います。

──極悪同盟のほうが天国だった(笑)。 

アジャ その当時の全女はデビル雅美さんがトップでしたけど、ダンプさんは特別な存在で。私たちがたまにベビーの先輩に呼ばれて怒られても、ダンプさんが「なんか間違ったことがあるなら、まず自分に言ってくれ」って、直接怒られないように盾になってくれていたんですよ。

──ダンプさんは親分肌だったんですね。 

アジャ もう、チョー親分肌!

──中野さんがダンプさんの後を引き継げないと断わったのはわかる気がしますね。荷が重かったというか。 

アジャ ダンプさんはクラッシュと同世代で、先輩はデビルさんだけでしたからね。中野さんになると、クラッシュやJBエンジェルス(立野記代、山崎五紀)も先輩になるわけですから。

──どうしても格が落ちちゃいますね。 

アジャ でも、中野さんは会社から「おまえが一人でやっていくのはいいけど、残ったアイツらは全員やめるしかなくなるぞ」と脅されたらしいんですよ。だから最終的に「自分がやるしかない」ということでヒールのトップになることを決めて。

──会社もムチャクチャな説得をしますね(笑)。 

アジャ 中野さんの意地として、極悪同盟という名前で同じことをするのはイヤだ、と。だから獄門党という名前に変わりましたし、やっぱりダンプ松本を超えたいというのはあったと思うんで、どういうヒールスタイルにするのかと凄く試行錯誤したと思いますよ。その中でも、ベストバウトを取れるヒールだといいんじゃないかというのが中野さんの考えでしたね。

──ヒールといえば、凶器攻撃で反則をするというのが主流だった80年代後半に、その発想ってどこから出てきたんですかね。 

アジャ それまでの全女のヒールはレフェリーの阿部四郎を巻き込みながら、悪さのかぎりを尽くすというスタイルで「ヒールに技はいらない」と言われていた時代ですからね。ただ、中野さんの付き人をさせてもらっていた私から見ても、やっぱり中野さんはプロレスに対して真剣な方だし、男子のプロレスにもけっこう詳しかったんですよ。

──獄門党としてやっていくうえで、中野さんからは方向性について何かお話はあったんですか? 

アジャ 「いままでとは違ったヒールのスタイルでやっていこうと思うから、それに賛同するんだったらついてきてほしいし、賛同できないんだったら無理についてこなくていい」。そうハッキリ言われました。でも、そこで「賛同しません」と言ってもどうにもならないし、私は中野さんを尊敬していたので。中野さんに賛同しないわけはないと思いましたね。

──コンセプトではなく中野さんについていこうと。

アジャ そこまで真剣に考えていなかったです。とりあえず、全女にいられればいいの時代だったんで。プロレスラーになっただけで満足していましたから。クラッシュギャルズがいる、ダンプ松本がいる、ブル中野がいる……。その同じ会社にいる人間というだけで満足でしたね。しかも、そこにいれば生活ができるぐらいの給料はもらえるし、試合をやって人前に出れば自分の欲も満たせるし。そこそこやって目立たなければいいし、変に目立って先輩に怒られてつぶされるのはイヤ。出る杭が打たれるのは見ていましたから。

──北斗さんがまさにそういう扱いでしたね。

アジャ よけいなことはせずに、その他大勢として静かに暮らしていればいいやって。適当なところで試合ができれば満足でしたから、いまで言う自称プロレスラーの走りみたいなもんですよ

──獄門党に変わっても、極悪同盟時代の自由なスタイルは引き継げたんですか? 

アジャ やっぱりそこはねぇ、言い方が悪いですけど、要はダンプさんがいなくなって集団として一つ落ちるわけじゃないですか。中野さんがいくら頑張ったところで、新人時代を知っているベビーの先輩からすれば「あんなピーピー言っていたガキが何言ってんだ!」の世界ですから。だから逆にね、いままでの極悪同盟に流れていたゆるーい空気を一変したのが中野さんでしたよ。練習もチョー厳しくなりましたからね。ダンプさんの頃は遅れて会場入りできましたけど、早めに会場入りして練習するという。


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