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北米MMAを知り尽くした男・水垣偉弥がここ最近のMMAシーンを語りまくります(聞き手/ジャン斉藤) ☆この記事はDropkickニコ生で配信されたものを再構成したものです

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――
今日は水垣さんに鶴屋怜選手のUFC第2戦を語っていただく予定だったんですけど、もはやUFCフライ級恒例となってしまったカード消滅という事態になってしまって。それでもニュースは充実しているので、いろいろとお話を聞かせていただきます。まず水垣さんがUFCで対戦したことのある天才ドミニク・クルーズが2月20日に引退試合を行うはずがケガで欠場。そのまま引退することになってしまいました……。

水垣 ずっとケガに悩まされていた選手なので、ドミニクらしいといえば、らしいんですけど……最後の試合は見届けたかったですよね。

――
ドミニク本人も悔いが残りますよね。今回のケガは肩の脱臼ということですけど、そこが治ってからまた試合をする……という次元じゃないってことなんですかね。

水垣
 おそらくそうじゃないですかね。以前も肩をやってるし、もうクセになってるというか、全然ダメなんでしょうね。ヒザも3~4回手術してるし、最後まで調整したけど、もう無理だという
判断なんだと思ってます。

――
ドミニクはUFC在籍15年間で10戦しかやってないんですよね。

水垣
 そうかあ、試合数自体は少ないんですね。ボクとやるときも1年半空いていて、ケガ明けの一発目だったんです。そのあともタイトルを取ったけど、またケガで1~2年空いてますし。ケガで休んでる期間のほうが長いですよね。

――
試合をやりたくてもできない。ケガとずっと向き合う生活だったわけですね。

水垣 ボクはドミニク・クルーズが最初のヒザのケガで長期離脱しているときに彼のジム(アライアンスMMA)に練習に行ってるんですよ。当然ケガをしてるんで練習は全然できないんですけど、シャドーとかできることをやっていて。あとずっと若い選手に激を飛ばしたり、いろんな手伝いをしたり。ボクがジムのファイターとガチスパーをやるってなったときはボクのところにきて、グローブの紐を全部結んでくれました。それでスパーリングを見て、終わったあとアドバイスを言ってくれたり。常にジムにいて、リーダーシップをとってたんですよね。それが日課だと思うので、本当にストイックな人だなって感じましたね。

――
格闘家の才能に「練習ができる」ことがありますよね。どんなに強くても練習ができないと上にはいけない。そこは本人の心がけがありますが、もうひとつの才能「ケガをしない」は、持って生まれたところもあるんですか?

水垣
 まず身体が丈夫というのが大事ですね。そのぶんいっぱい練習できますし、それも才能だと思います。

――
水垣さんは現役時代にケガで気をつけていたことはあります?

水垣
 ボクはスパーリングのときは、試合でしか使わない領域をなんとなく線を引いてやってました。スパーでも解放しちゃうと、たぶん解放癖がついちゃって、試合でしか使わない力を常に使ってしまって、ケガが多発すると思うので。ガチスパーでも「ここまでしかやらない」と決めてましたね。

――ガチスパーでもガチではないと。

水垣 だからなのかボクは大ケガってほとんどないんですよね。でも、その線引きが難しいところです。線を引きすぎても、たぶん一流にはなれなくて、ボクはそこが届かなかったところだと思います。もうちょっと線を超えたほうがよかったんじゃないかなって思ってて。

――
練習で解放するからこそ得られるものもあるってことですね。

水垣
 それが行き過ぎちゃうと、今度はケガで泣かされるようなことになっちゃうと思いますし……そこはすごくセンスが問われる大事な部分だと思いますね。ボクはボクシングのスパーではけっこう解放してたんです。ただ組みやレスリング、サブミッションで開放すると、やっぱりヒザ、首、腰をケガしやすくて。そこはある程度、超早めにタップしたり、無理しないで全然頑張らないことを意識してましたね。

――
打撃と組み技ではケガのリスクが違うのは、後者のほうが予想外のケガが起きやすいってことですね。水垣さんが無理しないことを心がけていても、相手が解放するタイプだったりする場合もあるわけじゃないですか。

水垣
 「こいつは危ないな……」と思ったらすぐにやられます(笑)。

――
ハハハハハ!

水垣
 だけど、やられてムカついて、ムキになっちゃったりするときがあるんですけど、そういうときは反省をして「今度はやられちゃおう」って(笑)。

――
「練習番長」みたいな危ない相手との練習は回避することもあるんですか?

水垣
 いやあ、それもなかなか難しいんですよね。ボクの場合は練習に行かせてもらうことのほうが多かったので、出稽古先で相手を選別するのはやっぱり失礼じゃないですか(笑)。そこはある程度やるんですけど、自分の身は自分で守るしかないので、無茶しないでやることを心がけてましたね。

――それはそれで緊張感のある練習ができるってことですよね。常に油断できない。

水垣
 でも、週2回でも緊張感の高い練習ばっかりやってると集中力も持たないと思うんですよ。ケガの要因にもなりますし。あとはスタミナをつけるためにのスパーリングは絶対にやらないようにしてました。それをやっちゃうとケガをしやすくなります。体力をつけるときは、走ったりとか人とコンタクトしないような練習をしてました。そういう分け方もすごく大事だと思います。でも、ドミニクにケガが多かったのは、身体の使い方が独特だからですよね。

――
打撃でも組みでもどこから攻撃をしてくるかわからない変幻自在のシャッフルスタイル。

水垣
 あのフェイントやステップはすごくヒザに負担がかかりますよね。普通の人だったらフェイントじゃないだろう、動きは止められないだろう……というところから止まったり、動きを変えたりするんで。だから相手はフェイントにひっかかるし、動きが読めないんですけど。正しい身体の使い方ではないので、そのぶんケガをしやすい。

――
ヒザが壊れるわけですよね……。

水垣
 あのステップができる才能がある選手がいたとしても、勧めるかは微妙ですよね。ケガする可能性がすごくありますから。

――
選手生命と引き換えに悪魔的な強さを手に入れたわけじゃないですけど……スイッチは定着してるけど、ドミニクほどのシャッフルの使い手は出てきてないですもんね。

水垣
 やっぱり身体に負担がかかるものですからね。

――
だからこそあのドミニク・クルーズのシャッフルは、当時のMMAにとっては革命的なことだったんですね。

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