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我らが英雄ザ・ファンクスの凄み! ■小佐野景浩のプロレス歴史発見

2016/04/10 11:27 投稿

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  • 小佐野景浩

プロレスラーの壮絶な生き様を語るコラムが大好評! 元『週刊ゴング』編集長小佐野景浩の「プロレス歴史発見」――。今回のテーマはザ・ファンクス! 日本中を熱狂させたドリー・ファンク・ジュニア、テリー・ファンクの凄みに迫ります! イラストレーター・アカツキ@buchosenさんによる昭和プロレスあるある4コマ漫画「味のプロレス」出張版付きでお届けします!








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格闘技ぶらり途中下車〜WSOF発UFCファイトパス経由REAL行/総合格闘技就職ジャーナル


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先日ドリー・ファンク・ジュニアが来日して試合をやりましたが、まさか2016年にもなっても現役だとは、昔から取材している小佐野さんでも想像はつきませんよね。

小佐野 さすがに思わないよねぇ。ドリーは今年で75歳、弟のテリー(・ファンク)は72歳ですよ。たしかドリーはダブルアーム・スープレックスができるはずですけど(笑)。

――75歳の人間風車!(笑)。

小佐野 ドリーは私が小学生の頃から見ているプロレスラーのひとりで(笑)。初来日が69年ということは、私は小学2年生だから。

――小学2年生の小佐野さん……(笑)。

小佐野  ファンクスが揃って初来日したのは70年。なぜおぼえてるかといえば、その開幕戦が横浜文化体育館だったんです。その当時の私は横浜市の鶴見に住んでいて、友達が見に行ったのが凄く羨ましかったんですよ(笑)。買ってきてもらったファンクスが表紙のパンフレットはいまでも持ってます(しみじみと)。

――ファンクスの父親はドリー・ファンク・シニア。息子が2人揃って当時のプロレス界の頂点だったNWA世界ヘビー級王者に就いたのは、英才教育の賜物なんですかね。

小佐野 たしかに2人とも父親以上のレスラーになりましたよね。シニアはあくまでテキサス州アマリロのプロモーター兼エースの域は出なかった。

――超一流レスラーとは言いがたい。

小佐野 シニアってプロモーターになる前はレスラーをやりつつ、子どもたちを預かる寄宿舎の責任者の仕事をしてたんですよ。レスラーとして各地をサーキットをする生活は、自分の子どもたちのためにもよくない。だからといって、ひとつの地区に留まるのもいろいろと難しい。そこで寄宿舎の仕事を始めたんですね。その寄宿舎の子どもたちと一緒にドリーたちもレスリングをやるようになって。

――ドリーたちは寄宿舎の子どもたちに混じってレスリングをおぼえていったんですね。

小佐野 テリーもいつレスリングをやり始めたかはおぼえていないと言ってました。それくらい自然にレスリングをやっていたということですよね。成長した2人は学生時代にはアメリカンフットボールで名前を売っていて。当時のウェスト・テキサス大学(現ウエスト・テキサスA&M大学)はフットボールが強いことで有名で。

――でも、2人ともプロレスラーになったんですね。

小佐野 シニアは息子たちに大学を卒業しなきゃダメだと。で、2人ともフットボールシーズンが終わったらすぐにデビューして、ドリーはちゃんと卒業したんですけど、テリーは卒業できなかった。なんだかんだプロレスラーの父親の姿を見て育ったことも大きいんでしょう。地元アマリロでシニアは誰からも尊敬されていたみたいですから。

――いわゆる名士ってやつですね。デビューしたドリーは28歳の若さでNWA世界ヘビー級王者になりますが、これって相当凄いことですよね?

小佐野 いやあ、大変なことですよ。以前も話したようにNWA世界ヘビー級王者は各地区を回ってその土地のチャンピオンの挑戦を受けて、興行を潤わさなきゃいけない。あのときのNWAってほぼ全米を網羅した大組織でしたしね。

――超激務ですよね。腕は一流であることは当然にして、ルーズなレスラーには任せられない大役。

小佐野 なぜ若いドリーがチャンピオンになれたのか。こればっかりはホントに謎。ドリーはそれまでアマリロでのベルトしか獲ってなくて大したタイトル歴がないわけですよ。それが28歳で世界チャンピオンになった。キャリアわずか5~6年ですよ。

――ドリーは若くして全米を背負える腕があったということですね。凄いなあ(笑)。

小佐野 いまの若いファンにわかりやすく言えば、オカダ・カズチカがいきなり新日本プロレスのトップに立ったどころの話じゃないんです。推測するにNWAが時代を変えたかったという事情もあるんだと思う。ドリーがベルトを獲ったチャンピオンがジン・キニスキー。その前の王者があのルー・テーズ。ドリーという若手にベルトを託すことでNWAという組織の若返りをしたかった。

――ルー・テーズの色が強かったNWAを新しくするって凄い役目を任せられましたね……。

小佐野 だからって簡単にはチャンスはもらえない。そこで重要なポイントは、ドリーはデビューした頃からセントルイスで試合をしてたんですね。

――NWAの総本山ですね。

小佐野 あの当時はセントルイスで認められないとチャンピオンにはなれないという雰囲気はあった。NWA会長サム・マソニックがドリーの実力を認めて、有力プロモーターのひとりだったフロリダのエディ・グラハムもプッシュしたんじゃないかな。ドリーはフロリダでベルトを獲ったんですよ。お膝元のアマリロじゃない。

――それはエディが認めたからこその王者交代劇ですね。

小佐野 エディ・グラハムは、のちにNWA世界王者になるジャック・ブリスコを抱えてたんだけど。エディ・グラハムとしても「いずれはドリーとブリスコでNWA……」という青写真を描いてたはずなんだよね。そしてセントルイスにはハーリー・レイスもいるし、各地に将来を担う選手が出てきてた時期だったんですよ。

――なるほど。ドリーが王者になれば、若手のブリスコやレイスも活きてきますね。

小佐野 各地にいたであろう有望なレスラーが台頭しやすい状況がドリー戴冠によりできつつあったということですね。ドリーはレスリングがしっかりしているし、ヒールもできる。反則で暴れるんじゃなくてレスリングヒールだけどね。相手に対して上から目線で、鼻につくイヤミったらしい感じ。テーズもよくやってたけど、ロープブレイクの際にパンチを入れたりとかね。

――あの若さでそういった老獪なテクニックも身につけたんですねぇ。

小佐野 テリーはそのドリーについて回ることが多かった。まずはテリーがドリーの挑戦者と前哨戦をやることによって、短いキャリアで経験を積めたんです。ファンに顔も覚えてもらえるし、テリーがNWAのチャンピオンになれたのはそこが大きいですね。しかもテリーもフロリダでジャック・ブリスコからベルトを獲ってますからね。

――エディ・グラハムはお抱え選手をかわいがるだけじゃなくて、大局観を持ってマッチメイクできたんですね。

小佐野 そこは相手あってのプロレスですから。ドリーがフロリダをサーキットしたとき、最初はブリスコとタッグマッチをやってたんだけど、そのうち1週間ずっとシングルになって。

――1週間シングルマッチ(笑)。

小佐野 だからブリスコは日本でドリーとやったことをおぼえてないんですよ。もうやりすぎちゃって(笑)。

――お腹いっぱいだったという(笑)。

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作/アカツキ


――ドリーと違ってテリーにはハチャメチャなイメージがありますけど、よくNWA王者の責務をまっとうできましたね。

小佐野 そうなんですよね。ドリーも時間を守れないイメージがあるからよくやれたなって。できそうにないディック・マードックはついにチャンピオンになれなかったけど(笑)。

――どこまでルーズだったんですかね(笑)。

小佐野 ご存知のようにテリーは激情型。日本でテリーをインタビューしたときにちょっとトラブルになったことがあって。テリーが来日前に南アフリカでハルク・ホーガンとシングルマッチをやったんですけど南アフリカの出来事だから日本に正確な情報が入ってこないんですよ。

――勝敗や内容がよくわからない。

小佐野 新日本プロレスに出るために先に来日していたホーガンは「自分が勝った」と言うんですね。で、そのあとに来日したテリーを取材したら「両者リングアウトだった」と言うんです。だから私が「ホーガンは自分が勝ったと言ってますよ」と伝えたら、テリーがメチャクチャ怒り始めて(苦笑)。

――うわあ(笑)。

小佐野 最初は話題作り、キャラとして怒ってるのかって思ったんですよ。そうしたら「部屋に来い!」と。付いて行ったらスケジュール表を見せられたんですよね。「これが俺のスケジュールだ。ホーガンに伝えてこい。場所はどこでもいい。おまえの目の前でぶちのめしてやる!」

――面倒なことになりましたねぇ。

小佐野 こっちの英語が拙いから、うまくホーガンのことをフォローできないし。そのうちテリーが冷静さを取り戻してその場は収まったんだけど。でも、そのあとテリーがホーガンが泊まってる京王プラザに殴り込みをかけたと聞いてね、ビックリしましたよ(苦笑)。

――あ、それは有名な事件ですよね!

小佐野 そうでしょ。有名でしょ。

――あの事件はいろんな説がありますけど、小佐野さんの取材が原因だったんですか!(笑)。


小佐野 だから当時は「じつは取材でこんなことがあった」なんてこと言えずに黙ってたんですよ(笑)。新日本から怒られちゃうでしょ、私がテリーを炊きつけたと思われますから。

――そう見えちゃいますよねぇ。

小佐野 テリーはマスコミに凄く協力的でありがたいんですけど、あの性格ですから。インタビューしてても昔のことを思い出したりして泣くからね(笑)。

――そこは大仁田(厚)さんっぽいんですかね。

小佐野 そこは似てるね。アメリカ武者修行中の渕正信と大仁田厚、どっちをチャボ・ゲレロのNWAジュニアヘビー級のベルトに挑戦させるかってなったときに、テリーは大仁田を選びましたからね。そこは何か感じるものがあったのかもしれませんね。

――テリーは83年に日本中を熱狂させて引退しましたよね。そのあとの復帰自体も含めてあの引退は復帰ありきなものだったんですか?

小佐野 いや、あの時点でテリーは本当に引退するつもりだったと思う。肉体、精神面を含めて限界だった。彼はNWAのチャンピオン時代に、いまの奥さんと一度離婚してるんです。で、ベルトを落としたあとに再婚してる。

――サーキット中心の生活で家庭が壊れてしまったんですね……

小佐野 だから家庭を大事にしたい気持ちは人一倍強かったと思う。いまだと「日本だけの引退だった」とかいろんな説があるけれど、少なくとも休業して戻ってくるとは思ってなかった。

――表向きはブッチャーのフォーク攻撃でケガをしたから引退……ということでしたよね。

小佐野 引退の理由は「をフォークを突かれたこと」なんだよねぇ。たしかには手術してるんだけど、引退も急に言い出したんですよ。みんな「えっ!?」って驚いた。だって引退会見ではなく来日会見のときに言い出したから。あのときはシリーズ途中参戦だったのかな。ホテルで記者会見をやったんだけど、たしか馬場さんも知らなかった。全日本は地方巡業中だったし。

――馬場さんも知らないってありえるんですか?

この記事の続きと、ミスター高橋、ハッスル悪夢、モントリオール事件、中邑真輔NXTなどのインタビュー・コラムがまとめて読める「詰め合わせセット」はコチラ http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1019120

 

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