北米MMA抄訳コラム「MMA Unleashed」を好評連載中のOmasuki Fightさんインタビュー。日本ではWOWOWが中継撤退するも、アメリカでは絶好調のUFCの現状をテーマに、2016年MMAシーンの空気を読み解いていきます――(聞き手/ジャン斉藤)
――WOWOWの中継撤退で日本とは距離が遠くなりそうなUFCをどう見ていくかについてお話をしたいと思います。
オマスキ ホントどうなるんですかね。
――物理的にはUFCのファイトパスで見るしかないということなんですけど(笑)。でも、WOWOWで放送していたから見てた層もたくさんいると思うんですよね。中邑真輔がNXTに出るから「WWEネットワーク」に入ったプロレスファンは多いですけど、UFCファイトパスでも日本向けの“お祭り”が興味の持ち方は変わってくるんでしょうね。
オマスキ 我が身を振り返ってみると、サムライTVに入ってた頃は、DEEPや修斗、パンクラスはよく見てたんですよ。
――いまのサムライTVはそこまで格闘技に強くないですね。
オマスキ 見られる環境にないと興味も失われるところはありますね、当たり前かもしれませんけど。でも、いまUFCのファイトパスでパンクラスを中継してますけど、あんまり見ていない。やってても見ないのは、習慣がなくなっちゃったのかなあ、と。
――ああ、習慣って大切ですよね。昔は隔週ペースでPRIDEかK−1のイベントが地上波で放送されていて、そのうえで情報番組もやってましたから。格闘技を見ることが習慣になってたところもあって視聴率もよかった。
オマスキ いまの格闘技って努力としないと見られないですよね。ボクはそこまで立ち技が大好きなわけじゃないですけど、Krushは見てるんですよ。それはGAORAで放送してるから。
――立ち技が好きというよりは習慣づいてるから見ている。
オマスキ それで見てるといろいろと選手のこともおぼえていくじゃないですか。そうしたら次の大会にも興味が出てくる。ちょっと前だったらDEEPや修斗のトップファイターの名前って知ってたもんですけど。
――さっきのパンクラスのファイトパス中継でいえば、ボクも全試合をチェックしきれていないケースが多いですね。それって格闘技だけじゃなくて、ほかのエンタメでも同じで。HDDにドラマや映画を録りっぱなしでまったく見てないものがいっぱいあるんですよ。もう1年前に録ったドラマが放置されている。
オマスキ ああ、それは私も同じですね。
――こないだNetflixにも入ったんですけど、いまだ何ひとつ見てない(笑)。いつでも見られるから「ま、あとでいいか」という感じでどんどんと溜まっていって……。
オマスキ ファイトパスもいつでも好きなときに見られますからね。外付けのハードディスクなんかで低コストの保存できるから、余計にそうなるんでしょうね。
――いまは表現する側が発信しやすくなってるぶん、受け手のふるいの穴が大きくなってる感がありますね。興味があるからとりあえず受け止めてるんだけど、どんどんと下のたらいに積もり重なっていく感じで。
オマスキ 見たくないわけじゃないんですけど、すぐには見ないし、ヒマなときに時間を分けて見がちなんですよねぇ。でも、UFCのビッグイベントは一気見するし、中邑真輔のNXTデビュー戦があった大会も最初から最後までライブで見たんです。これらは「いま見ないと!」って思わせるじゃないですか。
――そこは「確認」と「体験」の違いなんでしょうね。時間的都合がないかぎり、体験したいものはできるかぎりライブで見たいですし、その究極的な手段が会場観戦になる。ところが体験ではなく確認作業になると、どうしても腰は重くなりますよね。
オマスキ たしかにこれだけコンテンツが溢れれていると、確認すらも大変ですよね。
――これからUFCを見るとなると、ファイトパスの加入だけじゃなくて、PPVだとお金がかかるじゃないですか。金銭の壁も立ちはだかりますね。
オマスキ WOWOWの月額料金だけで見れたことを考えると厳しいですよねぇ。UFCはもうどこも放送はしないんですかね?
――何かしら放送自体は取り付けられるかもしれないですけど。ただ、日曜日の昼にあれだけの枠を空けられる番組構成はけっこうハードルが高いですね。
オマスキ いまよりインパクトを求められるなら地上波なんでしょうけど、UFCの大会がある日曜日の昼に、2時間も3時間も枠が空けられるかといえば……。
――あるとすれば情報番組系になるんじゃないですかね。
オマスキ あー、深夜のダイジェスト番組とか。いまブラジルでは深夜枠で地上波放送してるんですけど、そこでブラジルの人気選手の試合だけを流してるんです。全試合を観たいマニアは、有料のケーブルテレビで見てるんですけどね。日本で大会完全中継の可能性があるならJSPORTSなんでしょうけど、WOWOWほどのインパクトはないですよね。UFCを日本で拡めていきたい人たちからすれば後退のイメージ。UFCの日本公式サイトは以前よりたくさん記事が上がってるし、力を入れてないわけじゃないんですよね。
――アメリカ本土でのUFCの勢いは凄まじいところはあるんですよね?
オマスキ いまめっちゃ勢いがありますよ。2〜3年前と比べても全然凄いです。
――しかももっともっと市場が伸びるんじゃないかって。
オマスキ そうそう。絶好調ですね。
――ちょっと前に中国企業がUFCを6500億円で買うなんて噂も流れましたよね。
オマスキ そう報じてましたね。そんな噂が流れるくらいPPVも売れてるみたいだし。こないだのコナー・マクレガーvsネイト・ディアスも、まさか150万件も売れるとは思わないじゃないですか。
――凄まじい数字だ……。1年前に「コナーvsネイトで150万件売れるぞ!」とダナ・ホワイトに言ったら怒られそうです(笑)。
この記事の続きと、ミスター高橋、ハッスル悪夢、モントリオール事件、ザ・ファンクス、中邑真輔NXTなどのインタビュー・コラムがまとめて読める「詰め合わせセット」はコチラ http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1019120
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