小飼弾です。今月は奥歯、正確には左下第一大臼歯の歯髄炎が発覚して難儀だったのですが、何が大変だったかというと、歯髄炎そのものよりも歯が食いしばれなくなってしまったこと。「ぐぐぬ」出来ないだけで人はこれほどふぬけになってしまうのかと感心するやら呆れるやら。たしか「サイボーグ009」ではそこに加速装置のスイッチがあったのですが、正直ありえない。誤動作すること受け合いですから。それくらい、人は知らぬ間に「ぐぬぬ」しているのですね。ましてや自決用の毒薬カプセルを仕込んだりしたら…

200 Any Questions OK

Q. 知識は無駄だと思えてしまう

本を読むのは好きなのですが、読書中たまに「この知識って何の役に立つんだろう?」と疑問に思うことがあります。最近は特に小説などフィクションに対して強く感じてしまって手が遠のいてます。無理に読むものでもないので「まあ、いいか」という気もするのですが、考え方を変えれば有意義になるのかな?とも思います。読書家の小飼さんはこうした気持ちになったりしないのか、お聞きしたく思いました。

A. なぜ物語の主役はティーンエイジャーばかりなのか?

一見質問となんの関係ない話からはじめます。

その一見何の役にも立たない、「娯楽的知識」の代表ともいえるフィクションの世界で幅をきかせているのは、役に立つ知識の持ち合わせがどう見ても足りなさそうなティーンエイジャーです。マンガやラノベではそうでない主人公を探す方が難しいぐらいですし、海外に目を向けても「ハリー・ポッター」といい「ロード・オブ・ザ・リング」といい、成熟した大人の主人公というのは少ない。実はこれ、今にはじまったことではありません。「ロミオとジュリエット」はそれぞれ16歳と14歳(もっと若いという説を見たことがあります)。淫行条例に見事に引っかかります。

「読者や視聴者の年齢がそうだから」という仮説は、(1969年生まれの)私が生まれたぐらいの頃ならまだ成り立っていたのかもしれませんが、21世紀の今やかなり無理があります。オタクもトレッキーも私より年長な方は少なくなく、下手すると私の年齢ぐらいが中央値。もし「対象者の年齢にあわせて設定している」のであれば、ファンの年齢が上がるのにあわせて物語の登場人物たちの年齢も上がってしかるべきなのですが、そうなってはいません。

もちろん物事には例外というものがあって、島耕作黄昏流星群で性交、もとい成功している弘兼憲史のような例もありはしますが、「対象者の高齢化にあわせて物語の登場人物も高齢化させる」戦略をとっている例はあくまで例外で、ほとんどの物語にとって熟年者というのは亀仙人や沖田艦長にはなれても、悟空や古代君にはなれないのが定跡です。

なぜでしょう?