「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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今回は、2020年12月08日(火)配信のテキストをお届けします。
次回は、2021年03月16日(火)20:00の配信です。
お楽しみに!
新刊『小飼弾の超訳「お金」理論』
「ブラック労働者」をやめましょう。「お金を増やさねばならない」思い込みを捨てましょう。働いたら負け。もう労働には価値はない。理想は、誰でも自由に生きて食べていける世の中。なのに、いつまでも「お金」に振り回されるのはなぜか―――。
『小飼弾の超訳「お金」理論』では、世界を動かしているお金の仕組みと、お金との付き合い方をやさしく解き明かします。
2020/12/08配信のハイライト
- M1 Macで動くArm版Windows10レビューとCPUアーキテクチャ変遷の歴史
- 水平分業ではM1 Macは作れなかった
- 市場に占めるGAFAの大きさと日本企業のシュリンク、創薬AIについて
- 「ahamoでMVNOは?」とアメリカのミリ波の話
- 弾さんが信頼できる経済学者は?
- 失われた30年の「三大失政」の一つ「高等教育」
M1 Macで動くArm版Windows10レビューとCPUアーキテクチャ変遷の歴史
山路:さっきから弾さんが色々ごちゃごちゃっとやっている画面が非常に面白いものが映ってますね。これ出ます? 画面出てます? 切り換えよろです。出てないかな。出た出た出た。一見するとWindows10。
小飼:一見するとじゃなくって、これは正真正銘のWindows10でしょうね。ちょっと出します、証拠を。これか、システムのaboutか。正真正銘のWindows10です。
山路:めっちゃサクサク動いてないですか。
小飼:そうですね、すいませんちょっと、解像度変えられないのがちょっと申し訳ないんですけれども、QEMUなの。
山路:これって映って、あ、出てる出てる。
小飼:ちゃんと映ってる。ちょっとこれ、配信だと潰れちゃってると思うんですけれども、ちゃんとここArmベースプロセッサっていうの書いてありますね。
山路:えっ、Windowsの、あ、ほんとだ。これか。
小飼:そうです。
山路:ちゃんと認識はしてるんだ、Windows側からは。
小飼:で、ちゃんとGeekbenchも動くと。ついさっきやってみたスコアがまぁこんなもんだと。
山路:これって普通の、普通のって言うとなんですけども、大体市販のWindowsパソコンだとこれいくつぐらいですか、シングルコア
小飼:まぁピンキリなんだけれども、MicrosoftがSurface Pro Xっていうのを売ってるんですけど、よりも良かったと言うね。
「マ」(コメント)
山路:っていうのは「マジで」ってことの略かな。
小飼:マジです。
山路:これQEMUでいいんですかね。
小飼:キューエミュなのか、キューエムユーなのか、未だにちょっとわからない。
山路:これ、私、前に使ってたWindowsパソコンより全然サクサク動いてる感じなんですけどもね。
小飼:macOSのフォルダにもWindowsからアクセスできますよという。
山路:ブラウザ早いな。これEdge?
小飼:最初から入ってるEdgeですね。Chromiumのやつではないですね、これ。
「MacのWindowsエミュの方が本家Windowsに勝っちゃった」(コメント)
小飼:そうなんですよ。これ、Microsoftのページに行きたいんだけれど。
山路:これBingの検索結果か
小飼:そりゃBingですよ、だってWindowsだもん、そのままだもの。日本語に移動してみましょうか、敢えて。これよりも速かったというね。
山路:しかもこれSurface Pro Xよりも安いんですよね。MacBook Airの方が。
小飼:いやでもごめんなさい、タッチはできない。タッチパネルはない。
山路:ああそうか、そこんところは確かにそうだな。
「ネイティブとはいったい」(コメント)
小飼:ネイティブとはいったい何なんでしょうね、ほんとに。
山路:M1 Mac前回も取り上げたんですけど、えらいソフトの対応とかすごい勢いで進んでますよね。
小飼:ただでさえ、いろんなものはそのまま動いてたからね。普通にしれっとx86のふりをしてたし、Rosettaなかなかよく出来てるんですよ。じゃああれだな、Rosettaのほうを見てみますか。普通に、これは拡大できるな、ちょっと適当に開いて。これで出てきますね。“arch”てターミナルからコマンドを入力すると、これアーキテクチャーが出てきて、「Arm64」と出てくるわけですけれども。
山路:アーキテクチャを調べるコマンド。
小飼:っていうのか、使用するアーキテクチャを強制するコマンドですね。
「MacBookはなぜタッチを搭載しないのかな」(コメント)
山路:いずれやってきそうな気がもうしますけどもね。
小飼:というのもですね。(天気図アプリを表示しながら)これじつはiPadアプリです、はい。別の言い方をすると、この上でiPadアプリが動くっていうことは、これ全体をiPadに載せるって言うのはもうじつは何の問題もないと。たぶんAppleのことだからもったいぶって、もう1バージョンくらい待たす、かもしれないけれども。でも本当に欲しいのはそれね、MacPad。iPad Proの上でmacOSが走る。Xcodeがそのまま走る。っていうような。
「早くしろ」(コメント)
小飼:いやそれは本当に感じる。
山路:ただけっこう、Appleはその辺のところ、相当アーキテクチャの移行とかその辺に関してはずいぶん慎重ですからね。Big Surとかでだいぶ一体化進んできた感じはあるけど、やっぱ次では無理だろうなあ。
小飼:でも本当にWindows無償化しろって、そろそろしちゃっていいはずなのに。
山路:Windows8から10に無償バージョンアップしたりとか、いろんなルートあるじゃないですか、Windows。ライセンスを管理するのがもう訳が分からなくなってくるんですけども。
小飼:今のところ、WindowsはPC以外のプラットフォームにも進出しようとして、まあ見事失敗したわけですね。特にこれ(iPhoneを見せながら)に出れなかったというのが大きいわけです。でもタブレットに関しては、まだいちおうクリンチはしてるわけじゃないですか。圧倒的にiPadが強いんだけども、少なくともねえ、Androidみたいな体たらくにはなってないわけですね、Surfaceは。
山路:しかしMicrosoft、携帯の方はもうAndroid採用するとか「なんじゃそりゃ」みたいなところもありますけどね(笑)
小飼:そうやって考えると、やっぱりPCを落とすというのはかなり辛いでしょ。にもかかわらず、PCの分野でも超安価な部分って言うのはChromebookとかに食われてるわけです。日本だとほとんど見かけないんですけども、アメリカでもうすごいよく使われてますからね、Chromebookとか。
山路:しかし、普通にMicrosoftもArm版Windowsを出して、なおかつそういう他のパソコンメーカーとかもArm出すようになれば、マイクロソフト自体のダメージはそんなにないのではという気も。
小飼:いまやMicrosoftはどこで食ってるかっつったら、OfficeとAzureなんで。
山路:もう雲の上の会社というか
小飼:だからそうやって考えると、それへの入り口としてのWindowsっていうのは、もっと手軽に手を出せないと。でも、そうしようとしてなかったっけ。というのも、Chromebookの対抗で、何だっけ、Windows 10Sだっけ。
山路:Microsoft Storeからしかアプリをインストールできないみたいな。なんか学校向けのやつとかでしたかね。
小飼:そうそう。
山路:あれもやんなくなりましたよね。確か。あれ、まだあんのかな。
小飼:しかもブラウザがなぁ、実質Chromeになっちゃったから。そうやって考えると、主に使うのが、Chromeだったら、Chromebookの方がよくねって話に、ねえ。
山路:確かに(笑)。あれ、今そういうアーキテクチャの分野っていろいろ、Appleがやったからって訳でもないと思うんですけど、ずいぶん動きが激しくなってきましたよね。今までだったら、本当にIntelからCPU買って、MicrosoftがWindowsやってっていうのが。
小飼:ある意味、20年ぶり、いや四半世紀ぶりか、今のそれ以前のIntelヘゲモニーの時代の前にも、百花繚乱の時代っていうのあったんですよね。
山路:DOS/Vとかの頃ぐらい?
小飼:よりもさらにもっとさかのぼるかな、Amigaとかが
山路:はいはいはい、そこまで遡った頃の話のやつですね。
小飼:その頃にはほんとにいろんなアーキテクチャがありましたよね。
山路:X68000とかもあったし。
小飼:そうそうそう。だから、一つのCPUアーキテクチャーにしても、いろんなOSがぶら下がってたわけですよ。初代macOSもう誰が初めは68Kだったわけですからね。68000に20、30、40っていう。Amigaもその系列でしたね。
山路:Amigaもそっちでしたっけ。
小飼:そうです、Amigaもそうです。
山路:今でもAmigaのファンからはLinuxをなんでAmigaに、なんかそういうのを対応させないんだみたいな、いろいろ要求は来るらしいですけどもね(笑)。これ、なんでしかしそもそもx86がこんなに強くなったんでしょうと。
小飼:これはあくまでも僕の仮説ですけれども、やっぱり使う人たちが手元で直に触れるアーキテクチャというのは、もう圧倒的にx86だったから。
それ以外のアーキテクチャっていうのも、まぁいっぱいあったわけです。SunはSPARCを出してましたし、Silicon GraphicsとかはMIPSを採用してしましたし、PowerPC以外にもPowerアーキテクチャというのがあって。で、IBMとかのクソ高いマシンとかはそっちをやってたわけです。でも、直に触るのは何かって言ったら、x86だったんですね。x86はもともと本当にPC、パーソナルでしか動かないぐらいの能力しかなかったんですけども、386というのが出た時に、まぁ実際にUNIXのような、UNIXに限らずVMSとかもそうなんですけども、マルチタスキングができるようなCPUをその時得たんですよね。
山路:386でやっぱりガラッと、80286とかもあったじゃないですか。286から386のジャンプが大きかった?
小飼:386が大きかったわけです。32ビットになっただけではなくって、メモリ管理ユニットとかがついたんですよね。
山路:きちんとCPUレベルで管理して、マルチタスクができた。
小飼:で、実際にUNIXが動いたと。で、Linuxもそこで書き下ろされたと。要はワークステーションの文化と言うのをこっちに持ってこれたわけですね。そうなると、もうやっぱり圧倒的にたくさん作られるわけじゃないんですか、他とは桁が一つ以上違うわけですよね。そうすると、やっぱりスケールメリットというのも出てきて、単に安いだけではなくて高性能にもなり、そうなると高性能版しかない他のアーキテクチャっていうのは辛くなるわけですよね。
山路:スマホでArmのアーキテクチャがどんどん普及していったのと、結局流れ的には同じような
小飼:流れ的には似てますね。
山路:ただ、386とかがぐっと強くなってたのって、Windows登場前後ぐらいじゃないですか。その辺りって、たいていの人って高級言語でプログラムとかも書いてたりとか、アセンブラでプログラムを書いてる人ってはその時点でも、もうかなり少数派だったんじゃないかという気がするんですけど。
小飼:いやまぁいったんコンパイラが出来ちゃえば、どの一番普及してるのはどのアーキテクチャだっていうことになるわけですよね。
山路:結局あまりにも普及したがゆえに、そのx86からIA-64に移ることをできず。
小飼:そう、x86最大の犠牲者は誰か。Intelなんですね、これが。まぁそこが何て言えばいいのか、笑っちゃうところで。もともとx86というのは、5桁ではなく4桁の、8086から来てたものなので、もともと16bitのものというのを半ば強引に32ビットにしたので。だから、これをそのまま64ビットにするというのは流石に無理があるよねって、Intelの中の人たちも思ってたんですよね。
だから全く別系統のCPUアーキテクチャとしてIA-64というの提案して売ろうとしたんですけど、「いやそれって昔のx86のままの動かせるよ」というのを、何とAMDの方から
山路:ジム・ケラーとかが開発したやつですよね。
小飼:はい。結局Intelはx86-64のライセンスというのはAMDから買うはめになります。これは屈辱的でしょ。
山路:しかし、そこんとこでコンバーターみたいなもんとかっていうのは、Intelはたぶん考えたんですよね、おそらくコンバーターなりとかそんなのあったら大丈夫やろと、コンパイルし直して、みんなやってくれたら今までの資産も無駄にならないよっていうふうに言おうとしたと思うんですけど。
小飼:ただIntelはハードウェア屋さんで、サポートするOSもWindowsだけではなかったんですよね。IA-64っていうのは、特に入れ込んでたのはHPですね。PA-RISCというのがあって、要はワークステーション用だったんですよ。
山路:そのワークステーション分野で、でもなんでワークステーション分野だったら高級品としてはIA-64の方が優れてたわけじゃないですか。その当時の。そうでもなかったんですか?
小飼:結局のところ、一般大衆向けのものを作れないところというのは一般大衆向けのものを作れるところには最終的には負けるっていう。
これ何度も出すたとえなんですけども、フェラーリにカローラは作れないんですね。カローラでも高級すぎるか、ヤリスか。ヤリスを作れるところが偉いの。だからトヨタとフェラーリ、どっちがすごい自動車会社かって言ったら、もうトヨタなんです、ヤリスが作れるから。ヤリスを作れるのであれば、フェラーリは、単純に性能だけであればいつでも作れると。だから、それのもっと具体的な例というのがドイツのメーカーで。基本的に三つなんですけども、圧倒的に大きいのがフォルクスワーゲンですよね。実はポルシェもその中の部門で、けっこうテクノロジー的にはアウディやポルシェっていうのは
山路:ガワだけみたいな(笑)
小飼:そうそう、ほんとガワだけってところがあるわけですよ。ゴルフどころかポロも作れるからこそ、GT3とかも作れるって言いきっちゃっていいと思います。フェラーリはフェラーリしか作れない。
山路:コンシューマでいいもの作るのが本当に一番難しいいってことか。
小飼:そうなんです。ところが、今やスマホのおかげで、PCというのはもうコンシューマプロダクトの第一選択肢ではなくなったんですね。こっちこそがコンシューマプロダクトで、こっちがワークステーションの立場になった。
山路:パソコンの方が高級品的なニッチな商品になっていった。
小飼:そうなんです。で、どっちが過酷な状況で使われてたかって言ったら、圧倒的にスマホの方ですよね。
山路:電池も持たないし。
小飼:そう、持ち歩かないし、大きさこんなだし。じつはもう、すでに数年前にはPCの性能を抜いてたんですね、じつは。いろんなベンチマークテストでそれは明らかになってたんですよ。JavaScriptとかこっちで動かしたほうが早いんじゃね? とか。で、いよいよこれ(M1 Mac)がきたと。
山路:まだ温かくなってないですよね(笑)
小飼:いや、だから冬に辛いですね、これ。まったく冷たいというわけでもないので、少しずつ熱を放出してるというのはわかるんですけれども。わかるんですけれどもっていうやつですね。
水平分業ではM1 Macは作れなかった
山路:しかしArmも32ビットから64ビットの移行みたいな事ってあったわけじゃないですか、Armアーキテクチャにおいても。それはIntelが32から64に移行した時の苦労とは違うんですか。
小飼:要はArm64の石というのは必ずArm32の命令も動かせるよと。完全に上位互換だと。だからx86-64と同じアプローチだったんですけど、一つ幸いだったのはArmは元からいちおうはRISCだったんですよね。
山路:それがそこんとこで有利に働いた?
小飼:というのも、じつはですね、今時のCPUというのは中身は全部RISCなんです。
山路:ちっちゃい命令に分解して実行してるという。
小飼:そうなんです。だからアセンブリコードが一個一命令ではなくて、内部的には複数の命令にバラされていると。なんだけども、じゃあどの程度アセンブリと実際のマイクロコードがかけ離れてるかって言ったら、それはArmの方が近くはできるわけですね。
山路:余計なオーバーヘッドがかかりにくい
小飼:そう。
山路:なるほどね。
小飼:あと、もうすでにArm32っていうのはけっこう癖のあるRISCだったんですよね。お前本当にRISCなのかと。何を持ってRISCか、何を持ってCISCかっていう質問もあるんですけれども、一番根本的な所というのはmove命令があるか。メモリのある部分をメモリの別のとこにいきなりコピーできるか。
山路:ああ、レジスタを介さずに。
小飼:そういうことです。あ、レジスタを介さずに、そうだ、山路さんはこの場合知りすぎてるか。素人でなさすぎる、まぁいいんですけど。RISCの場合というのは必ずレジスタに読んでからでないと移せないんです。ロード・ストアできないというのがもう一つと。あと、命令の長さが固定なのか、あるいは可変なのか。x86の場合というのは、1バイトの命令から5バイト、6バイトだったっけな。
山路:長い!
小飼:そう、長いだけではなくて、長さが違うんです。命令を読んでいくときに、とりあえず20命令ぐらいバッファするってときに、20命令って数えないといけない。
山路:単純にここから20足した先のところが20命令ってわかるわけじゃなくて、本当に命令かどうかをチェックしなきゃいけない
小飼:高速化は難しいんですよね。それでもやってのけたというのは、いかにx86が普及したかってことだったんですけれども。
山路:でも、そこんところの進化に、ある意味リソースを取られちゃったってことなのかな、そういうアーキテクチャ的に不利な部分があるのを、何て言うか、補うためにCPUの速さが使われちゃってると言うか、CPUの進歩みたいなものが。
小飼:でも、こう言うのもなんだけども、本当にいまだにx86がそこそこの速度で動く理由というのが納得しきれてないところはあります。
山路:ああ、じゃあすごいってことですか、Intelの技術力はある意味。
小飼:IntelもAMDも、要はx86アーキテクチャをここまで永らえさせた技術っていうのはすごいと。クロックとかターボブーストとかしなくても、4GHzにいってるじゃないですか。4000MHzですよ。
山路:なんかギガヘルツで動くのが当たり前になってるから、改めて考えてみると、それがどんなすごいことになってるのかっていうのはすごいことですよね。昔の8bitバスなんて6MHzかそんなんだったような気が。
小飼:初代Macが8でしたね。
山路:いや、すごい。なるほどね、そこまでのそういう不利がありながらやってるってはけっこう強いことでは、すごいことではあったんだけども、そろそろ限界が。
小飼:いや、でもそろそろ限界というのはですね、Pentium、486 DXあたりから言われてたんですよ。
山路:20年保ったなぁって感じか(笑)20年どころじゃない、25年ぐらいか、90年代。
小飼:四半世紀ですね。それくらいの頃から言われてたんですよ。もう無理というのは。
「懐かしい」(コメント)
小飼:今度こそ無理だというの、でも「無理」が、当時と今では違うんですよね。
山路:そうなんですか?
小飼:当時はもう冷やせないと。これ以上回路を小さく作れないと。で、これ以上周波数を上げるともう焼けちゃうと。
山路:あー、なんかすごい、確かに太陽表面の熱密度がうんたらかんだったらみたいな、そんなような比較がよく出てたりとかしましたよね。
小飼:なんだけど、今も共通はしてるし、物理的には同じことを言ってるんですけども、でも要件の方向が180度というより90度違うんです。そんなに電気容量がないから。
山路:とにかくモバイルで動く低消費電力っていうのが第一。
小飼:そうなんですよ。熱は何とか乗り切って、でSMP化も何とか乗り切ったんですけれども
山路:SMPっていうのはシンメトリック?
小飼:要するに複数コア(Symmetric Multiprocessing)ですね、マルチコア。で、x86でマルチコアって見た時に、僕もほんと頭抱えましたよ、最初に見たときに。こんなの動くのかと。
山路:なんか無駄に複雑になっちゃってるような、話聞いてると気がしますね。
小飼:だけど、マルチコアにしないともう速くならないと。ずっとシングルコアで速くしてというのが続いてたんですよ。で、一応マルチコアになったけど、そんなにコア数増えませんでしたよね。
山路:いやぁ、しかしなんかここのとこに来てスマホで追い抜かされて、さらにちょっとArmに関して思ったのが、このM1の性能とかってAppleのそういうCPU設計能力はもちろんなんですけれども、それ以前のいろいろ過去のリソースをいい具合に切り捨てきってきたところにもあるのかなと。たとえばもうiOSって32bitアプリは動かないじゃないですか。
小飼:そうなんですよね。ばっさりと。
山路:macOSも。
小飼:とっても癖のあったArm32のことは考えなくていいんですね。watchOSですら考えなくていいのかな。確か初代Apple Watchはまだ32ビットだったんですけれど、もう一番新しいwatchOSは確か捨てちゃいましたからね。今Appleが面倒見てるのは、もうArmに関しては全部64なんですよ。
山路:macOSもBig Surから64ビットアプリしか動かないですよね。
小飼:そうなんですよ。
山路:だから本当に、つまりそこまでビジョンで将来的なロードマップを、OSと半導体と両方合わせて考えながらでないと、それはできなかったことなのかという。
小飼:あと64ビットというのというのが、なかなか絶妙な、敷居だったのかなというのも、最初64ビットかって考えた時に、Intelはもうこんなメモリ幅ってもうワークステーションで使うのしかありえないよと。だから一般向けが32ビットで足りないわけがないぞと。32ビットって言うけども、それでちゃんと4GBアドレスできるのよ。なんだけども、じつはそれでけっこう足りない用途というのが普通のコンシューマでも出てきたんですよね。ブラウザでもそれくらい平気で使っちゃうということが。
山路:いつもコンピュータの話聞いてるとそういう話ばっかですよね(笑)、これで足らわけないやろとかいって作っても、すぐ。
小飼:そう、だから64ビットというのはちょうど端境で、でも実際のコンシューマPCのコンフィギュレーションを見ても、メモリは4GBの近辺をずーっと漂い続けてきたじゃないですか。これも、松というのか、高級な方のモデルですけど、それでも16GBしか積んでない。そうでない安い方というのは、8しか、8しかって言うけれども、確実にこれ64ビットOSでないと対応不能ですからね。なんとか32ビットで無理やり対応させようというPEという技術が、x86の方にありましたけど。でも、Intelってそういう無理ばっかしてるような気がするよなあ(笑)。
64ビットであれば無理なく扱えるわけですね。だから4GBが最低で。
山路:なんか結局、単純にCPUの開発能力っていうよりも、ビジネス的にこれを切り捨てるっていう決断とかも……
「10円玉で冷却」(コメント)
小飼:(笑)、懐かしい。
山路:最近、MacBookでも10円玉とか使って冷却してるツイートが話題になってましたけどね。
小飼:懐かしいー。いや体温の方が高いので。ちょっと冬には厳しいね、これ。こうもう少し頑張って温かくなってほしいな。
山路:温かくなったら絶対それはそれで文句言うと思いますけどね(笑)。これ、今時のそういうテクノロジーの敷居ってのがまた上げられちゃったのかなって気が。
小飼:しかも、一段一段という感じでなくて、いきなり途中の階を飛ばされた感じがあるよね、M1の登場までというのは。本当についこないだまでですよ、PCというのはアセンブルするもの、組み立てるものだったんですよね。確かにノートはちょっと難しくなりました。後から足していくというのが、昔ほど簡単でなくなった。それもきっかけ作ったのはAppleですけれども。
山路:アルミの削り出し、とかね。
小飼:そうそう。昔はバッテリーは外せるのが当然。で、メモリーというのはSIMMスロットなりDIMMスロットで、だから自分で差し替えられるのが当然で。もちろんハードディスクとかもそうだけど、これも全部固定することにした。
山路:薄くできますしね。
小飼:それと引き換えに薄く軽くなって、バッテリーも少し持つようになった。
山路:しかし、ほんとに何と言うかな、今の企業って
小飼:ちょっと待って。そうでなくて、M1って外販してないでしょ。たとえばNVIDIAとかが作ってくれるわけじゃないですよね。Tegraとかで言うのであれば。あるいはSnapdragonみたいな形で作ってくれて、みんなが売ってくれるわけではないです。要は組み立ての対象ではなくなった。組み立てでは絶対たどり着けないんですよね。
山路:一時期は水平分業がもうなんか最適解みたいな風に皆思い込んでた。
小飼:実際、最適解で、昔の、20世紀のAppleの元幹部も、もう水平分業こそが最高で、マイケル・デルをCEOにしろって言う人さえいたんですよ。
山路:AppleのCEOに?
小飼:はい。今でも水平分業で言うとDELLというのは最高の会社の一つではありますよね。なんだけど、DELLのやり方ではPCは作れる、ノートパソコンのまぁなんとかできる。XPSって、Wintelノートとしてはなかなかいいと思いますよ。僕もWintelしか選択肢がないんだったら、XPSにしてるんじゃないかな。キーボード、ちゃんとハードUS配列を選べるし。なんだけども、そこが限界なんですよね。組み立てまでしかできないんですよね。
山路:そもそもEMSとかみたいなものって水平分業ができるからこそ、そういう台湾でパソコンメーカーが発達してるやっていうこともありますよね。
小飼:ところが、EMSも則ってるというのか、ちゃんとAppleは逆らえないように調教って言葉はどぎついかもしれないけど、しちゃってるんですよね。
山路:それは製造装置を通して?
小飼:そうそうそう。じつは重要な工作機械とかっていうのはAppleが所有しててそれを貸すっていう形を取ってるらしいですね、Foxconnとか。
山路:なんかすごいこう企業の力を底上げもするんだろうけども、支配も盤石にするっていう感じが怖いっすね。
小飼:TSMCとかも、一番いいプロセスは真っ先にAppleが持っていくじゃないですか。だから、5nm使いたいって言っても、他は待つしかないんですよ。列に並ぶしかないんですよね。
山路:なるほどね。あと最近、強い企業、GAFAだとか後Teslaとか、みんなそういう企業って半導体とか
小飼:Teslaはまだだな、その意味で。パナソニックにまだバッテリー作ってもらってるうちは。
山路:半導体とかOSを内製し始めてるじゃないですかっていう。けっこうな大企業、そういうGAFAMと言われる、MicrosoftなんかもOSは持ってて、CPUをQualcommと一緒に開発しようとはしてますよね。
小飼:でも、そういうレベルじゃないんだよな、M1というのは
山路:そうですか、そういうレベルじゃないか(笑)。いやいやいや。
小飼:でも、たぶん同じようなことはフォレンジック用のSoCはやってるのかな。フォレンジック用のSoCはもう本当に、HoloLensでしかつかわない、HoloLensというよりもMicrosoftのプロダクトでしか使わないっていうのを前提にやってるんだったっけな。
「AppleがすごいんじゃなくてTSMCが」(コメント)
小飼:いや、でもTSMCはテープ(回路レイアウトなどの最終データ)さえ持ってければ何でも作る、というのがまぁ信条ではあるんですよね。
「HoloLens買った人はちゃんと使ってるのかな」(コメント)
小飼:今のところまだ、まだコンシューマプロダクトって言うにはいろいろ高級すぎるけどね。普通に買えるようになったみたいだけど、43万だっけ?
山路:それもなんかすごいな(笑)。それにしても最近見た記事では、これからそういうテック企業できちんと利益あげていこうと思ったら、研究予算、R&Dはもう最低500億円以上は投資できないとお話にならないとか。またなんかハードルをさらに上げてっちゃってんのかなっていう気がしましたね、今回のM1で。それって、独占禁止法とは違うんですけれども、その資本の集中って何かこう歯止めって効くんですかね。
小飼:結局何で歯止めを効かせるっていう風に言ったら、権力は腐る、絶対的な権力は絶対的に腐る、からこそ独占を止めてたんだけれども、今ソフトウェアにおける独占というのは、それ以前のコモディティとは比較できませんよ、たとえば石油みたいなものをカルテル結ばれて独占されるというは、これは明らかに困ることしかないんだけれども。
山路:消費者がね。利用者が。
小飼:逆に、テクノロジーの場合はコモディティの部分っていうのはえげつなく買い叩くもんね。Appleとかも、ものすごくえげつなく買い叩いてるじゃないですか。だから、どっちが強いかって言ったらもう明らかなんです。
山路:あとM1なんかに関して言うと、安い値段で性能いいやつを出してきたから、消費者にとっては困ることはひとつもないんですよね。
小飼:そうなんですよね。これ、本当にそれをどうするよっていう
山路:本当になんか、後から参入がもうできないレベルになってきてんじゃないのかなと思ったんですよ。
小飼:でもさ、本当に、たとえばM1 Macをもうデッドコピーでいいですから、作るって言ったら、その時点で10兆円企業が一つ必要なんだよね。少なくともTSMCのファブを好きなだけガメられるだけのバーゲニングパワーが
山路:工場ひとつ最低1兆円からですもんね。いやぁ、なんかね、今は消費者にすごいメリットがあるけれども、空恐ろしい形の独占なんじゃないかなという気はしてならないんですがね。
小飼:Apple製品にどっぷり浸かってるからこそ、ちょっと他も頑張ってくれと、特にMicrosoftもこのクラスのことは知ってほしいよと。やっぱりSurfaceとかはまだまだ一昔も二昔というのか、具体的にはIntelに移行した頃のAppleぐらいの規模だしね。
「Intel買え、Microsoft」(コメント)
山路:確かにMicrosoft、Intel買った方がいいかも。
小飼:でもねえ、なんだかんだ言って普通のそのへんの人が直に使う製品を直に売ってるって言うのはやっぱ強いわ。Apple何がすごいつったら、結局のところそこなんですよ。だから、そこら辺の兄ちゃん姉ちゃんどころか、じいちゃんばあちゃんもiPhone使ってるでしょ。だから、そういった人たちに直に使われる。
山路:気分屋ですしね、一般消費者っていうのは。何かあったら、すぐに別にやーめたって別のところに移る人たちでもあるわけだし。
小飼:そこがやっぱり一日の長があるというのか。結局それをやってきたところというのが、手元を押さえてるほうがあちら側も押さえることになったじゃないですか。Sunですら無くなっちゃったからね……。
市場に占めるGAFAの大きさと日本企業のシュリンク、創薬AIについて
山路:じゃあもう一つテクノロジー絡みで。最近テクノロジー絡みででかいということで言うと、これも今クラウドのあちら側、クラウドの話が出たところでSalesforceがSlackを買ったという。これをどう評価しますか、弾さん的には。
小飼:買ったこと自体というのはなかなか自然かなあと。
山路:自然、ほう。2.69兆円か。2.9兆円。
小飼:まぁ値段も高いけれども、でもSalesforceというのはユーザーいっぱいいるけども、B2Bの会社ではあるんだけれども、でも確かにSlackを持ってないとMicrosoft Teamsとの対決というのはどうよというのが。
山路:Slackを持つことで、MicrosoftもかなりCRMのそういうB2Bの分野とかやるようになってきてるじゃないですか、クラウドサービスとかそのへん。それに対抗できると思いますか、今後Salesforce。つまり、半導体的な技術だったりとかOS的な技術とかそういうものを持ってなくて、クラウド上のサービスだけでMicrosoftみたいな会社に対抗できるのだろうか
小飼:逆に言うと、Microsoftも今やクラウドで食ってる会社だから。
山路:立場的にはそんなに遠いものでもない?
小飼:でも、いつかどこかに買われないと、自分らだけではやってけないよなという感じのサービスではありましたですね、Slackというのは。振り返ってみると、いつか買われるということを前提にキャッシュを燃やしながらユーザー数を増やしてったサービスって言うのはいっぱいあるじゃないですか。日本ではあまり知られてないですけども、WhatsAppもFacebookに買われることで、少なくともお金の心配をしなくても良くなりましたね。GitHubもしかりですよね。
でもまあ、その後うまく統合されるかどうかというのはまた別問題で、Microsoftにしても、Skypeどうなってんだよ!
山路:Microsoft、もうTeamsで行くつもりなんじゃないですか、Skypeは忘れて(笑)。それにしても、でかい買収がえらい続いてるなと。これ、Slackの買収金額2.9兆円って、パナソニックの時価総額超えてるそうですからね。
小飼:それはパナソニックがしょぼいだけだろ。
山路:そうか(笑)、比較するもんでないのか。
小飼:パナソニックがそんなにしょぼくちゃいけないはずなんだけどな。そんなもんなのか、3兆円しかないのか。
山路:3兆円、だいぶ下回ってるみたいですけどね。
「日本企業」(コメント)
山路:コメントにも出てますけど、日本企業残念なことになってますよね。
小飼:今トヨタが20兆円ぐらいで、急にドコモとかSoftbankがいきなり10兆円前後ぐらいになるんだったっけ?
「もう無理す」(コメント)
山路:そうなんだよなー、最近の日本企業、なんか置いてかれてる感がずいぶん厳しくなってきましたよね。
小飼:ちょうどオーバー10兆円のメンバーですね。今日の終値ベースで、12.2兆円
山路:あれっ、パナソニックそんなにありましたっけ?
小飼:違う、ソニー。はい、ごめんごめん。僕が失礼、ちゃんとソニーって言わなかったですね。トヨタが23兆、ソフトバンクが14.8で15兆に近い、だいぶ戻してきたね。3位がキーエンス、キーエンスは上がりましたね。で、ドコモも復活して12兆円、でもまぁそんなもんですよ。GAFAとか、それぞれ単体で100ですから、超えてますから。
山路:Apple200兆(笑)、なんだよ200兆っていう
小飼:GAFAだけでTOPIX全部足したよりも時価総額がある。
山路:これ、ちなみにちょっと話ずれちゃうんですけど、今の世界の株式市場に占めるGAFAMって言えばいいのかな、の割合ってすごいことになってるじゃないですか。
小飼:すごいことになってる上に、パンデミックのおかげで実体経済とは裏腹に株ばっか上がりやがってって言いますけど、その中でも株が上がってるのGAFAMばっかりで、他はほんと苦しんでるんですよね。
山路:コロナが始まった時、弾さんにもGAFAMに関してはいちおうちゃんと実績業績は出してんだよなみたいな話はしてたから、そんなにその時点ではめちゃ高ではないという意見だったかと思うんですけど、今見てもそう思います? GAFAMはまぁ株価はちゃんと市場が評価している?
小飼:市場が評価したというよりも、それだけ稼ぐ力があるからねえ。Amazonみたいに稼ぎをごまかしてるのも、ごまかしっていうのもあれだけど。
山路:R&Dをやたら高くつけとるみたいなことですよね。
小飼:そうそうそう。どう考えてもお前んとこの帳簿おかしいだろうっていうのはあるんだけれども。パナソニックがかろうじて49位だ、本日終値で。2.8兆円。
山路:あーやっぱり下まわってますね、Slackの買収金額は。
小飼:いや富士通よりちょい上ぐらいか。
山路:え、富士通ってそんなに小さい、そうか、そんなものか。
小飼:いや富士通もシュリンクしたんだってば。
山路:あー。
小飼:可愛いもんだなぁ、日本の企業というのは。
山路:GAFAMの株価の大きさっていうのは、そういうデジタルでの結局、経済の大きさをそのまま反映してると考えていいってことなんすかね、やっぱりそれだけそこでの経済活動が盛んになってるからっていうふうに。
小飼:かつては実体ではなくって、将来こうなるだろうって言う期待。かつての株価、特にAmazonの株価という含み益だったんだけど、でも今はそれはもうかなり具現化してますよね。けどGAFAMで、GAFAって言った場合、Facebookが入ってるけど、これがちょっと微妙なんだよな。Facebookが微妙なんだよね。
山路:それは何と言うのか、ドミナントではないってこと?
小飼:いや、SNSではドミナントなんだけれども
山路:他の会社ほど確固とした地位を築いてるわけではないということで
小飼:他の会社ほどローテクノロジー、生(raw)テクノロジーを、そういうこともあってOculusを買ったと思うんだけれども。
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