「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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今回は、2020年06月23日(火)配信その1をお届けします。
次回は、2020年9月1日(火)20:00の配信です。
お楽しみに!
2020/06/23配信のハイライト(その1)
- 接触確認アプリ発注プロセスは「120%悪い」
- 富岳とARMアーキテクチャの関係
- WWDCとジム・ケラーとMacのintel化について
- 「さりげない凄さ」のAirPods Proと「App Storeみかじめ料は高い?」
- アンケート「10万円貰いましたか?」
接触確認アプリ発注プロセスは「120%悪い」
山路:今日はタイトルにも書いてあったように、AppleのWWDCとか、ちょっとコンピューター関係の話題、多めにしたいと思っているんですけども。
小飼:ですね。
山路:最初は例によってコロナの話題から行きましょうか。たとえば1番今コロナで話題になっているのが、この……。
小飼:コンタクトフェイシングアプリですね。COCOAという名前で出すかと思ったら、iOS 版のやつのアイコンの下にあるタイトルというのは、接触確認アプリというふうになってますね。だから最初、App Storeでこのアプリに辿り着くのがちょっと大変だったりする。
山路:でもApp Storeが全面的に応援して、トップページに入れてますから、まぁわりと探しやすくはなっているかなと。
小飼:でもけっこう深刻な場面があって……。
小飼:そうそうひろみつ(高木浩光)先生ブチギレ。
山路:これ、その接触アプリがリリースはされたんですけれども、いろいろ、いろいろ話題というか、ちょっとやや炎上気味な話題にもなってたりとかして。
小飼:そうそう、アプリの起動の時に、いろんな許可をとりますよね。たとえばあれですよ。
山路:位置情報というか。
小飼:そう、位置情報とってもいいかとかというので、大抵アプリを起動する時には、僕も含め皆さんあまり考えないで、YESYES許可許可ってやってると思うんですけども、たとえばここで許可しないというふうにやっちゃうと詰むという。
山路:ああなるほどな、なるほどな。
小飼:だから、いったんそこで拒絶した場合というのは、アプリ側ではなくって、iOSの設定の画面から改めて許可を出してあげなければいけないというのがiOSの仕様なんですけども、それで不許可のまますると、アプリが終了すると。今度そのアプリを削除しちゃった場合というのは、その設定情報が残っているので、アプリを再インストールしても、そのまま延々ぐるぐる回ってしまう。
山路:でも、そういう場合って、だいたいiOSは再起動してもう1回やれば行くというか、それで上手く行ったという報告も聞いてますけどね。
小飼:そうなのか。
「やまちゃん痩せた?」(コメント)
山路:ちょっとコロナで太りましたね、逆に。3キロくらい太っちゃいましたね。
小飼:ありゃりゃ。
山路:これ、更にコロナのアプリでそういう不具合とかがあるのは、かなり急いでリリースしたからしょうがないみたいな気もするんですけど。
小飼:いや、だからそれ、ボランティアで無収入でとかって、それおかしいいじゃんと。
山路:うん? そのおかしいというのは?
小飼:少なくとも国は、請け負った業者に4100万円だったっけな? 支払ったことにはなってるんですよ。
山路:え? そうなの?
小飼:そうなんですよ。
山路:ええ? 厚労省から?
小飼:そうそう、国の立場からみれば、有償でお願いした筈なんだけども、じゃあ何でボランティアっていうことになってるの? あれ凄い勘違いがあるんですけども、オープンソースというのはあくまでもアプリの設計図たるソースコードが公開されていることですよね、オープンソースというのは。
山路:うんうん。
小飼:だからといって無料ということはないわけです。たとえばChromeとかもオープンソース部分、全部、そうChromeというふうになるとGoogleのプロダクトになっちゃって、プロプライエタリなコードとかも入っているんですけど、その大元になっている、Chromiumというのはオープンソースなわけですよね。じゃあ開発者の皆さんは、無償でやってるかっていったら、GoogleなりAppleなりから、高い給料もらって仕事してるわけですよ。デプロイ王子さんは今Microsoftの社員だということなんですけども、給料出てないの? っていう。一体そこ、どうなってるんだ? という。
山路:なんかあらゆることが、このアプリに関して不透明というか、経緯がようわからんですよね。
小飼:そうなんですよ。
山路:デプロイ王子さんが苦労したのはもう間違いないところだと思うんだけれど。
小飼:いや、だからそもそもその前に、コード・フォー・ジャパンという有志の集まりが、GoogleとAppleの共同でBluetoothのコンタクトトレーシング用のAPIを用意しましょうという前から。
山路:うんうん、動いてた所ありましたよね。
小飼:そうそう、デプロイ王子さんも動いていたらしいんだけども、でもそもそも最初、国がやりとりしてたのはコード・フォー・ジャパンのほうなんですよ。
山路:ああ、そうなんだ。
小飼:だから何でデプロイ王子さんのほうに話が振られるようになったのかっていうのもわかってないし、そもそも厚労省の担当者どこにいるんだ? この場合。
山路:何かさ、いつも思うんですけど、厚労省って常に担当者が出てこないですよね。
小飼:出てこないね。
山路:ダイヤモンド・プリンセスの時もそうだったし。
小飼:農水省の時は出てきたのにね、「花買って下さい」って宣伝してたじゃないですか。だから、あれと同様の担当官がいて、広報官がいて、まあ広報官でも何でもいいんですけど、要は厚労省の顔になる人というのが必要だと思うんですけども、そもそもこの段階で開発者のほうが出て来るというのも、けっこうおかしいですよね。かなり普及して、役に立ってというところで、じつはこういう人たちがやってました、というのはあれだけど、まだ海のものとも山のものともつかないうちに出しちゃうというのは、マスメディア含め何を考えているんだ? と。
「専門家を盾にするのが連中のお家芸」(コメント)
山路:まさにそういう感じが、コロナ自体の専門家会議に関しても、何か専門家を盾にしてたところがあるような気がしますけどね。
小飼:こう言っては何ですけども、たかが1アプリ2プラットフォームですよね。で、実際に出てきたものは、Xamarinで開発してたっていって、Xamarin特にiOSのほうではあんまり使ってる人いないから、React Nativeでやってくれと。ちなみにReact NativeというのはJavaScriptで。
山路:Facebookのフレームワーク。
小飼:そう、Facebookが、Facebook社が出しているフレームワークで、両方やるという、iOSとAndroidをそれで片すという。要はものすごいぶっちゃけると、Webアプリを作れる人であれば、ネイティブアプリを作れるというのは。
山路:まあでも理屈はそうでも、簡単ではないですよね、検証とか本当に。
小飼:もちろん、何ですけれども、こう言っては何ですけど、これくらいであれば外注せずに内製できたほうがいいでしょ。というのも、シンガポールって確か政府自身が開発してましたよね。
山路:だったようにも思いましたけどね、もしかしたら外注先を表に出してないだけなんかもしれないですけど。
小飼:だから何と言えばいいのかな。その前回の放送でも出た話題ですけれども、政府というのは、実際の政府の仕事というのは、100%民間に出すべきではないと思ってるんですよね。特にこういう非営利のものというのは、国が技術的な責任も持たざるを得ないでしょう。だからわざわざ政府を指定して、1政府につき1アプリってわざわざ言ってるっていうのはこれ、凄い珍しいことですよね。
山路:そうか、GoogleとかAppleにしてみたら、そんなくらいの専門家はいるだろうと思って、そういうふうに言ったのかもしれない。
小飼:まぁそういうことですよ、はい。
山路:アハハ、なるほどね。だからIT省みたいなものがないから、こんな大変なことに。
小飼:GDP世界3位の国で、たかだかアプリ1個1つ、自前で開発できないのか、わざわざ外注しないと出来ないのかっていう。
山路:フレームワークまで作ってやったのに、みたいな。
小飼:そうそう。それを更に政府がGitHubにリポジトリを作ってっていうのであれば、別にGitHubでなくてもいいんですよ。だからまさに責任者出てこい案件なんですよね。責任者、国じゃないの?
山路:じゃあ今、ネットなんかでこのアプリに関していろいろ話題になってる、オープンソースでいろいろやってるボランティアの人を責めるのかとかそういう以前に、なんかその発注のプロセス自体がおかしいっていうことなわけですね。
小飼:そうなの、そうなの。
山路:その人の努力云々とかそんなことより。
小飼:そう、だから政府の事業なのに、政府の人が何処にもいないっていうのは。
「SourceForge」(コメント)
小飼:懐かしい、懐かしいと言っちゃいけないな、今も生きてるし。
「ハンコ大臣が説明すれば?」(コメント)
山路:アハハ、そりゃ出来ねえだろうな。
小飼:アハハ
山路:へえ。いやいや面白いですね。面白いっていうのは失礼だけど。あとこれにこのアプリに関していうと、これまぁ今、発注元、発注のプロセスに大きな根本的な原因があるっていうことは、弾さん言ったんですけど、この開発者が顔を出したら、その人に対して凄く人格攻撃的なものがガーッと寄せられたみたいな、そういうことまで起こって。
小飼:人格攻撃というのか、攻撃、少なくともひろみちゅ先生は人格攻撃なんかしてるつもりは、ぜんぜんないですよね、普段通りですよね。
山路:アハハ
小飼:これはひろみちゅ先生の立場からすれば、攻撃してるんではなくて、勝手に傷ついたと。だから、この程度のクレームも受け止められなくて、よくお前そんな軟弱な態度で、公にソフトウェアをリリースしてるな、というのがひろみちゅ先生の立場なんです。
山路:アハハ、厳しい世界だな。ああ、なるほどね。
小飼:だから日本は駄目なんだとかって言う人もいますけれども、リーナス・トーバルズがクソコードに対してどういう態度を取るのかというのを知らないのか? という。なんか最近それは行き過ぎだということで、ちょっと。
山路:「綺麗なリーナス・トーバルズ」になってるらしいですけどもね。
小飼:なってきてるようですけども。べつにリーナス・トーバルズが人間化する以前に、リチャード・ストールマンとかもっと凄かったし。でも確かに僕はそういうもんだなと思って育ってきたけれども、それは僕が、もう半世紀も生きてきたオッサンだからというふうに言われたら、もしかしたらそうなのかもしれないねという。
山路:あとはそういうITの中で通じる文化みたいなものが、わりと限られた人に共有されてたのが、そうでない人も増えてきたっていうのもあるのかもしれない。
小飼:うん、でもやっぱり技術的にクソなものはクソなので、やっぱりウンコを見て、わざわざ「ウンチ」とか「はばかり」とかわざわざ言い直さなきゃいけないの? という。確かに、ひろみちゅ先生が上げてたムービー通りの挙動というのは、もう本当にノーエクスキューズで駄目なので。
山路:なるほどね(笑)、そういうプログラマー文化とかに関してのそのまわりの理解みたいなものとの齟齬があるなという気がする。
小飼:いや、でもそれも更にソフトウェアの世界というのは、まだ甘いね。
山路:それは?
小飼:こう言うのも何ですけれども、クソコード出しても、次のリリースで直せばいいっていう。
山路:人が死ぬわけじゃないからっていう。
小飼:人が死ぬわけじゃないから、だからやっぱりソフトエンジニアというのは、これでもまだハードウェアのエンジニアに比べれば、甘ったれなんじゃないかなと、僕も感じ……だってハードウェアのほうはクソ踏んで、だからクソが地雷に化けることが多いからね。クソ踏んだら、そんなバーンといって足が吹っ飛んだり、足どころか生命が吹っ飛ぶということだってあるわけだから。
山路:サムスンのGalaxyでバッテリーのトラブルがあった時なんか、世界中の空港で持ち込み禁止に、爆弾扱いになりましたもんね。
小飼:そうそう、だからそういうところでもエンジニアを褒めて伸ばすためには、ものすごいしっかりとした器、ヴィークルが必要で、だからまさにそれがスペースXみたいなところです。だから、あれだけハードウェアで失敗させて貰えるっていうのは、だからそういった器というのはそう簡単には出来ないですよね。だからあれを作ったっていうのは、やっぱりイーロン・マスクというのは凄いね。本人自身がやっぱりぶっ壊れてるだけあって、だからぶっ壊れた本人が入っても壊れないだけの器を、さすがによく作ったなと、ご自身のことをよくわかってらっしゃると。
山路:多くの場合は、大人のための砂場がないっていうことなんですかね?
小飼:うん、いや本当にあれですよ。およそエンジニアリングというのは絶対、砂場が必要なんですよ。テストベッドが必要なんですよ。よりによって、これってあれですよね、医療ですよね、メディスンですよね。に、関わるものというのをろくにテスト出さず、だから、せずにリリースするというのは、これはリリースさせた奴が絶対にいけなくて。
山路:そのコード書いた人間が云々というよりも、発注してどうのこうのというそういうプロセス自体、プロジェクトをマネジメントする奴がやっぱりよくなかったということになるのかな。
小飼:よくなかったじゃなくて、もう一方的に120%悪い。100%じゃなくて120%悪い。だから20%の分がリークして、オープンソースで開発してた人たちが責められるというのになるので、100%どころではなくて悪い。
山路:うーん、なるほどね、普通の100%よりも悪いっていうことね。
小飼:そういうことです。
「プログラマーもハード側よりソフト側のほうが人気があるのかね?」(コメント)
山路:プログラマーと言った場合は、主にソフトウェアエンジニアのことを指すような気が。ハードウェアも含めて開発する人は。
小飼:あれですね、いちおうApple Storeには厚生労働省公式って書いてありますから、厚生労働省が公式に悪いわけです。
山路:うーん。
小飼:いや、だからさ、こういうことしてるからさ、ワクチネーションとかでも信用なくなるんだよ、本当に。
富岳とARMアーキテクチャの関係
山路:プロセスを明らかにしないっていうのが、本当にお家芸なのかなっていう感じがしてくるけどもな。じゃあもうちょい、IT絡みで、これはわりといいニュース。富岳ですよね。
小飼:おお。
山路:スパコンの富岳。
小飼:そう、なんかナンバーワンは狙ってないって言ってた、あれですよね。一挙に4冠とか。
山路:これって弾さんから見ても凄いこと?
小飼:いや、でも久しぶり、そうです、だからまず日本がスパコンランキングのトップに返り咲いたというのは、9年ぶりだそうで。前は震災の時だったんですよ、だから京が出来たのは、震災の直後くらいだった筈、2011年。
山路:PEZYとかが1位だったのは、Greenのほうですよね。
小飼:Greenのほうです。Greenのほうも何かPFNのマシンが1位になったみたいなんですけども、でも、さらに凄かったのはこの後、たぶん今日のメインディッシュになるのかな。MacもARMの、ARMアーキテクチャになるということに、世界で最高性能のコンピューターもARMアーキテクチャならば、最高級のパソコンもARMアーキテクチャになってしまうということで。
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