「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
2019年1月22日(火)配信の「小飼弾の論弾」の前半をお届けします。
次回は、2019年3月5日(火)20:00の配信です。『現役東大生が選ぶ いま読むべき100冊』の著者、西岡壱誠さんとの対談を予定しています。
お楽しみに!
2019/01/22配信のハイライト(その1)
- 「教育のパワー」とEasyでない人を戦力化する企業
- セブンカフェとデザインの失敗
- 「こんまり」と見栄文化アメリカ
- 我々はたいして働いていない
- 「所有権」の思い込み、テクノロジーによって減りつつある金持ちの特権
- 赤の他人と物事を進められる「金」という力
「教育のパワー」とEasyでない人を戦力化する企業
山路:今日のミニ特集は、「賃上げ」をテーマにした話をしようかなと思っとるんですけれども、その前にわりと軽いニュースから。
小飼:いつもいつも軽い軽いと言って、けっこう返答に窮するような。
山路:でも、さすがにこれは軽いんじゃないですか。まずはセンター試験の謎キャラという話から行きましょうか。
小飼:はあ?
山路:センター試験、この前行われて受験生の方、大変だったんじゃないかと思うんですけれども、そのセンター試験でこう出題された問題に謎キャラが出たという、英語のリスニングの問題でですね、こういう(笑)。
小飼:あ?
山路:これはなんなんですかね? はいだしょうこ画伯が描いたような……
小飼:英語のリスニングって言いましたけども、What the hell was the question?
山路:アハハ。何でしょうね、これ。
小飼:OK, it reads…
山路:このそれぞれで。
小飼:What might the character look like? Maybe in the listening session they are listening to description of those characters to pick one from four.
山路:特徴をちゃんとリスニングで聞いて、それを描写せよというか、それを選択肢から選べみたいな話らしいんですけどね。それがインパクトありすぎるキャラでという。これかなり緊張感を削ぐんじゃないかと。早速これがTwitter上でいろいろもう大喜利状態になってて、このこういう3Dプリンターで立体化する人とかがかなり出てきたっていう(編注:3Dプリンターでの出力は行っておらず、3DCGソフトを使ったレンダリングとのことでした)。
小飼:プリントしたの? これ3D、データじゃなくてプリントしたの?
山路:らしいですね。これ3Dデータみたいですけどね。相当急いで作ったらしいですけど。
小飼:といったらあれだよね、だから適当なAPIをAWSとかに作っておいて、そのlistening comprehensionの問題を聞かせると正しい答えが、ジーッって(笑)、3Dプリントされていくって(笑)。
山路:これからセンター試験の楽しみ方も増えるというか。ただこれはまぁべつに出題ミスでもなんでもないし、そんなこれ自体が問題とは思わないんですけども。センター試験、20年に1度終わって、次から新しい共通テストになるんですよね。
小飼:あぁ。
山路:その共通テストでは、記述式問題、記述式といっても何千文字とかそこまで長いんじゃなくて、百数十文字でしたっけ? それこそTwitterのツイートくらいですかね。そのような記述式をさせるというようなことにもなってるらしいんですけども。
小飼:Can I use computers, tablets, smartphones? You’re not toying with us!? You have to handwrite the answers.
山路:(手書きだと)読めないですよね、人によっては。
小飼:すみません、言葉が切り替わってなかったです。よくやりませんか? IMEで英語を打つつもりが、日本語のままになっていて、だから変なカタカナが出たりですとか。あとその逆に日本語を打つ時に、なんでこれローマ字のままかと思ったら。
山路:というか私がセンター試験を受けさせられてるのかと思いましたよ。
小飼:いやけっこう真面目な話、複数言語を話している人は、これべつに英語日本語とかでなくって、同じ日本語でも方言と標準語とかでもいいんですけれども、自分がどっち話しているのかっていうのは、忘れません?
山路:1年ほど外国にいた時にそういう状態になったことは何回かはあるけど、まあないです。
小飼:それをおいといても、へえ、3Dプリントしなければいけないのか。
山路:いやいや、そうじゃない(笑)。
「プログラミング言語なら」(コメント)
小飼:プログラミング言語とかの場合は、最近はエディタが賢いので。いわゆるIDEというふうに言われない、本当にエディットするだけの、(テキストエディタの)Vimとかでも補完したりしますよね。
元になったなった生のviは、そんなファンシーな機能はついてないんですけれども。だから今、自分がどんな種類のテキストを書いてて、単なるテキストなのか、あるいはどの言語のソースコードなのかっていうのを、ちゃんと認識した上で。
「Vim派です」
小飼:僕自身はVimを使うこともあるんですけど、わりとチョコマカとエディタは変えますね。
山路:マイクロソフトのVisual Studio Codeが最近人気みたいですね。
小飼:Visual Studio Codeはけっこう使えますというのか、今雑誌の原稿とかは本当にVisual Studio Codeで書くことが多いですね。あれちゃんと書きながらプレビューが見る機能というのが、標準搭載されているところがいいですね。
「戦争になる」(コメント)
山路:「Vim対Emacsの論争が始まってしまう」というやつですね。
小飼:うん、なんかでもVimのおかげで(vi派は)息吹き替えした感があるね。
山路:共通テストに記述式問題が出るという話はどうですか?
小飼:共通テストの時に、エディタは選べるのかが問題になるかもしれない。
山路:弾さんにとって、手書きはもう論外ということですよね、つまり。
小飼:ないでしょう。
山路:膨大な手書きの回答を人手で採点させることなんて出来るのかっていう。
小飼:じゃああれなわけ? その共通のテストのために、日ペンの美子ちゃんとかにまた弟子入りしなきゃいけないわけ、受験生が?
山路:百数十文字程度の記述をさせて、そんなにいろんなことがわかるものなんですかね?
小飼:それはわかるでしょうけど、むしろもっとわかるのは、採点者の趣向ですよ。採点者の偏りですねよ。
だいたい、なんで二度手間をさせるのか。というのも、日本の場合は更にそのあと2次試験があって、それは記述式なわけじゃないですか。というよりも、なんでテストにそこまで労力を割くのかっていうのは、いつも思いますね。
山路:今大学の2次試験の問題って、それこそ大学教授が頭ひねって作ってたりもするわけじゃないですか。それってそんなに必要なのかなと思ったりするんですけどね。
小飼:世の中には資格試験というのがありますよね。資格試験の場合は、一定以上の点数をとれば合格なわけですよね。だから、そもそも目的が違うんですよね。
それ以前に、教えることは増えてるのに、科目が少なすぎませんか? というのはありますよね。
山路:それこそ、たとえばプログラミングみたいなものとかだったり、あるいは。
小飼:とかも出てきてますし。
山路:あるいはバランスシートだったり。
小飼:もともとは水泳というのもオプショナルでしたけど、今はもうほぼ必須でしたよね? でもそれも必須になったというのは海難事故が続いたからですよね。
山路:考えてみれば確かに水泳って、みんなにやらせるべきなのかどうかっていうのも。
小飼:必須にしていない国っていうのも、けっこうあります。だから何を教えるべきかっていうのに、人類的な合意はとれてないよなと。今、日本の小学校で教えている、国語算数理科社会、図工体育というのも、果たして適切な分類なのだろうか。
山路:さらに道徳とかも入ってたりもしますもんね。
小飼:逆に共通テストでは科目をザクッと減らしちゃうという、本当にエッセンシャルなものしかやらないという手もありますよね。じつはそういうポリシーをとっているのがSAT(現在アメリカ国内で広く大学受験に使われているテスト)で、基本もう英語と数学だけですよね。ふざけんなー! っていうくらい簡単です。
山路:アメリカの学校が採用している。
小飼:あくまでも点数というのは参考資料なので。受験する時に、この学校とこの学校に送っておいてくれ、あるいはもうあとで、この時の試験結果というのをあの学校に送ってくれというのをできて、何度でも受験できますし。自分がとったベストを送るっていうのがわりと簡単にできるんですよね。
山路:ただそういう、つまりアメリカの大学の方式だと、どこの大学にも通れる人はいる一方で、ぜんぜんどこにも箸にも棒にもひっかけてもらえないみたいな、そういう人も出てくるんじゃないですか?
小飼:と思うでしょう? なんですけども、箸にも棒にもかからない人を教えるというのが、本当に教育のパワーじゃないですか。だから放っておいても勝手にやる奴というのは。
山路:放っておけばいい。オンライン講座でいいだろうみたいな。
小飼:放っておけばいいわけですよ。だからこう言うのもなんですけども、優良校というのは、優良の定義が娑婆と逆になってますよね。ショボいものを良くするという、どれだけ良くするかっていうこの差で測るべきでしょう。
山路:弾さんがよく言う、一流企業とそのそうでない企業の差みたいな。
小飼:そうそう、要は試験で上のほうの奴らだけを取るっていうのは、これEasyモードでしょ。
山路:教育機関としてはね。出来て当たり前の奴を、それこそ塾の広告みたいな感じですよね。難関校、何人入りましたみたいな。
小飼:逆に右も左もわからない奴っていうのを、いっぱしの使える奴にするっていうのはなかなか大変なわけですよ。アメリカ、だからそういう視点の学校というのも整っています。整っていますけど、やっぱりちゃんと手間暇がかかりますし、そのかかった手間暇というのは、なんらかの形で回収するわけですよね。大抵の場合は学生に学費を支払わせるという形なわけですけれども。そうではなくて、たとえば奨学金を渡した連中には学校の広告塔になって貰うわけですよね。あるいはあとで寄付を一杯してもらうわけですよね。
山路:まあ思いっきり稼がせといて、ガッポリと。
小飼:卒業もしてない僕のところにも来ますよ、寄付くださいっていうのは。
山路:日本は学校も多すぎて、ちょっとバランス崩してるというところもあるのかもしれないですけどね。
小飼:大企業もそうなんですよね。
ただ、今世界で1番でかい企業というのは、私企業の中ではWallmartだと思います。何をもってでかいかというふうに言ってると、要するに従業員の数。200万人越してるんだったっけ?
山路:へえ!
小飼:200万人すべてが、Easyな人ではないです。ちゃんとEasyでない人を戦力化することで、世界企業になった例というのは、特にアメリカや中国に多いですよ。
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