404 SPAM Not Found #0
小飼弾です。メルマガはじめました。
非自己紹介
日本語の「何してますか」も英語の"What do you do?“も、「職業は何ですか?」、"What is your occupation"を暗喩しています。そういう中にあって自己紹介というのは私にとってはますます話がややこしくなる質問ではありますが、ネットというのは便利なもので、ある程度名前が通るようになると、自分で紹介しなくとも「弾でぐぐって下さい」で通用するようになります。劣化ウラン弾やロケット弾を差し置いて、404 Blog Not FoundがGoogleでもYahoo!でもトップに来るのは我ながらどうかとも思いますが。ちなみにBingではWikipediaの弾丸がトップで私のblogは三番目。少しほっとしております。
ちなみに「小飼弾」で検索した場合には、いずれも私のblogがトップに来ます。逃げも隠れもできません。
突然のメルマガ!
それにしても、我ながらメールマガジン、一技術者としてはSimpleとはいいながらHTTPと比べてはるかに煩雑なSMTPには一刻も早く死んで欲しいと願っておりますし、「黎明期からのインターネット廃人」としては、早期からSPAMから格闘しており、一時は一日100万通を超えるSPAMを処理していた私にとって、 e-mail というのは情報配信の手段として理想的なものとはとても感じられなかったのです。
その一方、 e-mail が担っていた役目をたとえば Web で全てを置き換えることも難しいことも否めません。Webはあくまでも読者自らが情報を取ってくるプル型のメディアであり、「購読」というプッシュ型のメディアとは折り合いがつきにくいのです。またプッシュ型のメディアであるということは、基本オフラインでは読めないことをも意味します。
さらに現代においては、メールアドレスがWebにおけるIDとしても機能していて、e-mail が死んだら Web も死ぬということが既成事実として確立してしまった感があります。
そんな折り、ドワンゴさんから「ニコニコチャンネルでメルマガやらないか」というお話をいただき、「ホイホイついてきて」今に至るというわけです。
他からもいくつか「やらないか」オファーはあることにはあったのですが、怠惰な私でも続けられるシステムを有していたことが、メルマガ発行に踏み切るきっかけとなりました。ほんとすごいですドワンゴのテクノロジー。
402 Payment Required
ご覧のとおり、本メールマガジンは有料です。月525円。一ヶ月の無料お試し期間がございます。
「今までアフィリでずいぶん儲けていたのに、有料とはえげつない」。「ずいぶん儲けていた」はさておき、私自身そういう気持ちがないとは言えません。実際404 Blog Not Foundは無料ですし、今後も続けてまいります。それではわざわざ購読者の皆様からお金を頂戴するだけのコンテンツとは何でしょうか?
そう考えた末、本メールマガジンではQ&Aを主軸とすることにしました。実際有料のQ&Aは、拙著「決弾」としても先例があり、おかげさまで好評を得ております。
名付けて「200 Any Questions OK」。余談ですが本MLの見出しは、メルマガタイトルを含めそれぞれHTTPのステータスコードのもじりとなっております。
もう一つの目玉が「301 Found in these books」。blogでもご好評いただいている書評のコーナーとなります。こちらはblogとどう棲み分けて行くのか模索して行くことになりますが、有料である以上本メールマガジンを優先するところまでは決めております。
301 Found in these books
いわゆる書評のコーナーです。実際には書評というより小飼弾がその本から何を読み取ったのかを語っていることになりますが。
今回はサンプルとして「ビアンカ・オーバースタディ」を紹介します。
301 Found in these books
いわゆる書評のコーナーです。実際には書評というより小飼弾がその本から何を読み取ったのかを語っていることになりますが。
今回はサンプルとして「ビアンカ・オーバースタディ」を紹介します。
サイセイの書: ビアンカ・オーバースタディ
「太田が悪い」、作者のおっしゃるとおり。
本作の上梓をこんなに待たせるなんて。
作者は知っている。作者がこの国でいちばん美しい、いちばん綺麗な作家だということを–。
本作「ビアンカ・オーバースタディ」は、筒井康隆「初」の「ライトノベル」。
およそ日本語でものを読む人にとって筒井康隆という名は、音楽にとってのモーツァルトの名に劣らぬ重みを持つはず。これほど日本語に愛されている作家を私は知らない。
作者紹介より
1934年生まれ。1960年の衝撃的なデビュー以降、半世紀以上の長きに渡って常に文芸の境界を飛び越える作品を発表しつづけて来た日本文学界の巨匠。
作者を巨匠たらしめているもの、それは作者の作品に一貫している反巨匠、反権威の姿勢。なにせ目次からしてこうだもの。
- 哀しみのスペルマ
- 喜びのスペルマ
- 怒りのスペルマ
- 愉しきスペルマ
- 戦闘のスペルマ
本作は主人公たちが採精する話で、それがきっかけで未来を済生する話で、ライトノベルを再製する話で、「わたしは知っている。わたしがこの高校でいちばん美しい、いちばん綺麗な女の子だということを」というモノローグを再生するお話で、そして全体としてライトノベルを再製するというお話なのだ。
権威という言葉で私が真っ先に想起するのは、これまた反権威の権威の代表、アインスタインの言葉。
To punish me for my contempt of authority, Fate has made me an authority myself.
【拙訳】運命は私の権威への蔑視を罰するべく、私自身を権威に仕立てあげた
しかし真の巨匠は、自らが権威となってもなお、権威への蔑視を飽く事なく続けるのだ。その視線から、権威となった自らもまた逃れることはない。
背表紙より
わたしは知っている。 わたしがこの高校でいちばん美しい、 いちばん綺麗な女の子だということを――。 あらゆる男子生徒の視線をくぎ付けにする超絶美少女・ビアンカ北町の放課後は、ちょっと危険な生物学の実験研究にのめりこむ生物研究部員。そんな彼女の前に突然、“未来人”が現れて――。 文学界の巨匠・筒井康隆が本気で挑む、これぞライトノベル。 21世紀の“時をかける少女”の冒険が始まる!
これ自体、時をかける少女のパロディでもあり、涼宮ハルヒシリーズの「未来人」に対するオマージュにもなっている。
日本沈没には日本以外全部沈没、サラダ記念日にはカラダ記念日(薬菜飯店収録)、バカの壁にはアホの壁…作者ほどの「いちびり」が存在するのか、鏡にたずねてみたいものだ。
本作はそんな作者によるライトノベルであると同時に、ライトノベルというジャンルそのものへ対するメタライトノベルでもある。
この本にはふたつの読みかたがある。通常のラノベとして読むエンタメの読みかた、そしてメタラノベとして読む文学的読みかたである。どちらでもお好みの読みかたで読んでもらってもよいが、できれば両方の読みかたで読んでいただければありがたい。
そこで俎上に上がる「原作」がこれまたすごい。「時をかける少女」と「涼宮ハルヒシリーズ」は想定の範囲にしろ、人類は衰退しましたに虚構船団とは!「ビアンカ・オーバースタディ」というタイトル自体、モナリザ・オーヴァドライヴのもじりにしか思えないし…
しかしその「遊び」を引き立たせているのが、「学び」の部分。遊びまくっているのにヤワでなくてワヤな筒井作品の剛性感を支えるのが、現実成分の科学描写。
哀しみのスペルマより
わたしが研究しているのはウニの生殖だ。なんでウニなんか、と思うだろうけど、ウニは手に入れやすいし、観察しやすいし、成長過程も早いというのがその理由だ。バフンウニは一月から四月、ムラサキウニなら六月から八月、コシダカウニなら七月から八月、アカウニなら十月から一月が発生時期だ。みなが食べているのはウニの生殖巣で、だからウニの中身のおいしいところ、あのほとんどは生殖巣、つまり精子か卵なのだ。
サイエンス・フィクションではっちゃけるには、サイエンス・ファクトをしっかり抑える必要があるのだ。「最高級有機質肥料」(ベトナム観光公社収録)執筆にあたって、自ら検便した作者にとって、ビアンカのオーバースタディーぶりはあまりに当然ともいえる。
ん?
あ、そうか!
ビアンカは、作者だったんだ!!
ということは、本作は筒井康隆自身の美少女化ということでもあるのだ。いとうのいぢの絵を一年待つのも太田が悪い、ではなくて必然中の必然。日本一の作家を美少女化を、日本一のラノベイラストレーターにやらせななくてどうするよ。
きれいだろ?これ…喜寿の作品なんだぜ?
喜寿の作者に萌えさせられるなんて、採精された男の子たちのとほほぶりを追体験させられるようではないか。
こんな77歳に、私もなりたい。
200 Any Questions OK
小飼弾が、購読者のご質問にお答えします。本メールマガジンの一番の売りになる予定が、本コーナーです。拙著「決弾」をご存知の方は、それがメールマガジン化されたものをイメージしていただけるとよいでしょう。
ご質問は、本メールマガジンの専用掲示板までお願いします。twitterの@dankogaiでも受け付けております。どんな質問でもお答えします。ただしその答えをどう活用するかは、読者次第。インターネットと同じく互いにベストエフォートで。
本号はゼロ号ゆえ、まだ読者からの質問を頂いていないので、以下は仮想の読者の質問に対する解答です。
Q: 仕事ってなんですか?
A: 仕事=力×距離
物理学では、以下のように定義しています。
「仕事とは、力を距離で積分したものなり」。つまりいくら力をかけても、動かなければ仕事はゼロということです。
Q: 職場の不正を見逃すか
長年、私の職場では、裏金を作ることが慣例となっています。小さな不正ですが、罪悪感を感じます。告発するべきでしょうか?
A: 「口止め料」次第です。
あえて語弊のある言い方をすれば、不正を見逃すか否かは「口止め料次第」ということになります。つまり、自分にとって最も経済的合理性の選択肢は何かということです。
一口に不正と言っても、法的にも重い罪に問われるものから、その場で笑って許してもらえるものまで、その深刻度はさまざまです。たとえば、服務規程でオフィス内での飲酒が禁じられていたとしても、歓送迎会で酒を出すことに目くじらを建てる人はほとんどいないでしょう。その一方で、マルチ商法のように商売そのものが適法とは言い難いものもあります。
不正というのは極めて定性的な言葉なので、まずはどれくらいの不正なのかを定量化してみましょう。不正によって、誰にどれだけの不利益を与えているのか。告発することで、自分にはどういうメリット・デメリットがあるのか。
その中から、自分にとって最も(理|利)にかなった選択肢を選ぶのです。
残念ながらこの国は内部告発者を充分に保護しているとは言えません。オリンパス事件でさえ、ウッドフォード元社長は賠償金を得ることは出来ても復職はかないませんでした。正義があなたの職や命より高いのであれば、(職|命)を賭して告発に踏み切ることはあなたにとって最も(理|利)にかなった選択肢となりえますが、こういう時こそあえて悪の視点でものをみることも悪くないのではないかというのが私の意見です。
Q: 本を読めるようになりたい
弾さんのように本をたくさん読めるようになりたいのですが、どうしたらよいのでしょうか?
A: テレビを捨てましょう
テレビを見ない。これは、これからを生き抜くための方策としては最強でしょう。
テレビを見るのはラクなんです。テレビは、こちらが何をせずとも情報を流してくれます。地上波の番組の場合、受信料がかかるNHKを除けば、視聴のたびに課金されるわけでもない。無料だから、安い娯楽と思ってしまいがちです。
だから、ダラダラ見てしまう。時間をムダにしてしまいます。
どんな金持ちでも貧乏人でも取り戻せないのは、時間です。日頃から私も心がけていることでもありますが、節約すべきは、お金より時間なのです。
私は「テレビ時給換算法」というコスト節約術を提唱しております。まず、あなたの収入から時給を割り出しておいて、それにテレビの視聴時間を掛け合わせる。それが、あなたがテレビ視聴に費やしている本当の金額です。
翌日の学校や職場の話題に合わせるためにテレビを見るのをまずやめましょう。やめたとしてもたいした問題にはなりません。むしろどんな内容かをたずねることで、話がはずむというものです。「見てないの?」と言われたぐらいで悔しがる必要もありません。むしろテレビを今までダラダラ見続けたことで、どれだけの時間、つまり人生をドブに捨ててきたのか、そちらの方を悲しむべきなんです。
時給千円で換算しても、一日四時間テレビを見たらそれでもう4000円。テレビ視聴に休日はないようなので、365をかけたら一年で146万円。これだけの金額を書籍購入に割り当てる人は「趣味は読書」を標榜する人でもほとんどいません。
(「空気を読むな、本を読め。」より抜粋改訂)
100 Mail Magazine Continues
本号は以上です。「200 Any Questions OK」へのご質問は、本メールマガジンの専用掲示板までお願いします。twitterの@dankogaiでも受け付けております。大事なことなので二度言いました。
それでは次号でまたお会いしましょう。
Dan the Writer of Yours
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