「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
2018年4月2日(月)配信の「小飼弾のニコ論壇時評」のハイライトをお届けします。

次回のニコ生配信は、2018年7月17日(火)20:00より。小飼弾宅からお届けします。

お楽しみに!

2018/4/2配信のハイライト

  • 4月から働き始めた人たちへのアドバイス
  • 上場するビリビリ動画と、いまいちなニコニコ
  • テスラModel Xの大事故から見える、人工知能の問題
  • Facebookのユーザー情報、不正利用
  • Appleがきれい事を言える理由
  • フェイクニュースとのはてしない戦い
  • 年金データの入力ミス
  • パスワードの定期変更は、百害あって一利なし
  • コインチェックから流出したNEMが追跡打ち切り
  • ベネズエラの仮想通貨Petro

4月から働き始めた人たちへのアドバイス

小飼:国税庁のこのWebのリニューアルは、ちょっとビックリしましたね。

山路:何があったんですか?。

小飼:いやパーマリンクが全部消えちゃった。

山路:個別のページをブックマークしてた人も絶対いますよね。

小飼:そうそう。しかもサイト内検索をすると新しいページに飛びます。っていって、またトップページに行かされるという(笑)。

山路:それがエイプリルフールネタではないのか。なんかスゴイな。

小飼:最近、毎日がもう4月1日になって久しいので、そろそろ1年に1回くらいは、本当のことしか言わない日とかっていうのを作った方がいいのかもわかんないですね。

山路:(笑)。4月1日といえば、今日から新社会人になる人も結構いますね。

小飼:その「社会人」といういう言い方すっごい気になるというのか、鼻につきますよね。例えば学生というのは、社会とは何の接点もないのかとかっていうことにもなりますし、年金生活の人というのは、もう社会人じゃないのかという言いたくなります。

山路:社会人には、「就職して働いている」みたいなニュアンスがちょっとありますね。

小飼:働き始めたら即社会人というのは、まさに今の社会の在り方でもあるじゃないですか。働かざる者食うべからずって、実は嘘なんです。

山路:実は嘘!?(笑)。本当は働いたら負けだということですよね。

小飼:そうそう。4月は社会の嘘ですよ。

山路:いろいろ細かくマンガネタぶち込んでくるから、どこまで拾った方がいいのか悩むところですけど(笑)。
 じゃあ、4月から働き始めた人に、弾さんからアドバイスはありますか?

小飼:これから働くということに、僕あまりピンとこないんですよね。どういうことかっていうと、もう僕はバイトは実は中学の頃からやってましたし。

山路:土方をやってたり、コンビニとか。

小飼:そうそう、家庭教師とか塾の講師とかもやってましたし、大学にいる間ももうTAやってましたし、そのまま自営業になったり、上場企業の役員になったりというので、だからあんまり境目がはっきりしないんですよ。
 でも、本来境目ははっきりしないはずなんですよ、人は。これが昆虫とかだったら、だからまだサナギのクセにとか、まだ5齢幼虫のクセにとかってあるんですけども、人間の場合、例えばある日を境にバッと変わるということはないハズなんですよね。

山路:今みたいに会社が大量に新卒を一括採用して、その日を境に皆が一斉にサラリーマンになって働き出すみたいなもんというのは、歴史上かなりもう珍しいというか。

小飼:そうですし、そもそも、就職している人というのが、日本の人口の半分くらいしかいないんですよ。

山路:それ以外は学生であったりとか、あるいは退職したりとか、主婦の方であるとか。
 それなのに、会社勤めしている人を指して社会人というのはおかしいという意見もありますよね。

小飼:強いていうと、今まで学生だった人というのが、学生でなくなるといいましたけども、じゃあ結構いろんな人が勘違いしているのが、「ああこれで学校ってお終いだ」と。でも、違うんですよ。

山路:こっからですよね。

小飼:こっからが始まりなんですよ。だから今までの、そうですね、さっきプログラマーとして云々と言ってましたけど、プログラムに例えれば、OSの起動が終わったところです。

山路:なるほど。

小飼:これからアプリをインストールしたりね、ソフトウェアを設定したりもしなければいけないでしょう。

山路:弾さんはオン・ザ・エッヂとかで、CTO(最高技術責任者)でプログラマーとかを雇う立場だったりしたじゃないですか。春とかになるとやっぱり、新卒は採られてた、採っていたわけですよね。

小飼:いやいや中途採用のみでした。

山路:ああそうでしたか。

小飼:のみでした。ですが、大学生のうちからもう声をかけていて、キリのいいところで入ってきてくれというのは、いっぱいありました。それで大学院に行くのを辞めた子というのも、結構いますよ。

山路:青田刈り、スゴイですね。

小飼:まあそういうことになりますね。結果的にインターンという形になったのかもしれないですけれども。

山路:これからプログラマーとして働き始める人達に対して、弾さん的にどういう風な働き方をするといいよ、アドバイスみたいなものがあれば。プログラマーに特化しなくてもいいのもしれないけど。

小飼:キチッと休めということですね。勝間和代さんの受け売りじゃないですけども、スケジュール表は休みから先に入れろくらいにした方がいいかもしれない。

山路:それは働き始めてすぐでも?

小飼:そう。真面目に休むっていうのは、クセにした方が良いと思う。僕もどっちかというと、休みに関しては、わりと不真面目な方で。だからそれでいらぬ仕事とかというのをしてきた自覚もあるので。

山路:それって、日本だとなかなか出来てないことだったりしますよね。有給消化率は低いし。

小飼:だからこそですよ、働くときにはあんまり考える余地はないわけですよ。上からいろんな仕事が降ってきて、それをこなすのに精一杯なわけなので。

山路:休日をどう活用するのかっていうことを考えることが、初めて頭使ったことだみたいな。

小飼:そうそう、休息こそ計画的にしておくべきですよね。仕事の方はそうでなくても降ってくるわけですし。

山路:サポートセンター業務みたいなところで働いている知り合いから相談されたことがあります。

小飼:わあ、キツそうな仕事だなあ。

山路:そう。その人に相談されたのは、色々業務でも勉強しろ、これ覚えろ、あれ覚えろ、しかもそういうことって普段から自分でやっとけみたいなことを言われるんだけれども、そういう自分の自由時間というか休みとか、そういうものをそんなにやりたくもない仕事のために、なんか使わなきゃならないっておかしくないですか?みたいなことを質問されたことがあるんですよ。

小飼:うん。あと結構日本で悲しいのは、こんなのを人にやらせるのは人権侵害だみたいな仕事というのが、いっぱい残っているわけですよ。例えば駅前でチラシとかティッシュを配るとか、モデルルームが出来るとモデルルームはこちらみたいに道端に立ってるとか、ああいうのを人にやらせるのはやめようよ。だからそういう仕事が来たらすぐ辞めよう。
 上司の命令だからといって、やっちゃう人達がいるから残っちゃうんですよね。その延長線上で、電話営業というのがあるじゃないですか。あれ本当に百害あって一利なしだから。それだったらもう少しまともなコールセンター、受ける方に人を回せよ、という風には思う。日本は人手不足だっていうのは、ホントかいな?とそういうのを見るととても感じますね。

山路:それって、人に払っているものが安いから、気軽に安く使っちゃうみたいな。

小飼:そうそう、だから広告バラ撒きたかったら、無人ブースか何かにティッシュ置いといて、ご自由にお使いくださいで何が悪いの?

「人手不足の時代にそんなことをやってる暇はない」(コメント)

小飼:いやいやいっぱいいるんですって、それであれば、どっか新しいマンションとかが出来たらモデルルーム見に、行ってみるといいです。そういう看板人がよく立ってるから。

「低賃金労働の人手不足」(コメント)

山路:そういう風に人を使っている会社って、ちょっと将来の収益性に不安ですよね。外から見た場合。

小飼:そうなんだよね。

山路:そんな風に人を使ってて、大丈夫か?みたいな。

小飼:いや本当に。
 折角久々の売り手市場なんでしょう。アベノミクスが上手く行ってるのか上手く行ってないのかわかんないですけども、売り手市場だといういうのを証明してほしいですよね。やっぱりね、人がティシュ配ってたりするとね、納得しがたいものはある。そうはいっても、今や東京のコンビニとかは日本人が働いている方が珍しくなったというのは、これは言い切っていいと思います。

山路:確かに。

小飼:というのも僕はポケモンを拾いによく歩くようになって、大抵コンビニでビバークするわけですよ。

山路:東日本大震災で一時期外国人の店員さんとかが減って、また戻って来た感がありますけど。

小飼:どうなんでしょうね。
 でもこの人は明らかに日本人だという人は、もうあからさまにフランチャイズのオーナーだったりしますよ(笑)。そうやって見てると、人でというのは不足してるのかな。でもその一方でティッシュ配る人がいるっていうのはね?

山路:あとその働き方のことで、ちょっと関連して1つ、東京労働局長が記者会見があった時、うちがそういうマスコミ各社に是正勧告をしてもいいんだよ。みたいな軽口を叩いたという(笑)。

小飼:ばっかだよねー。バッカだよね。

山路:ちょっとアホな。

小飼:そんなことを言ったらさ、真っ先にガサ入れすべきは霞が関だろうって突っ返されるに決まってるじゃん。
 人手不足と言ってはいるけれども、まだ人手、これから更に減るんですよ。

山路:人口が減るっていうことですよね?

小飼:そうそう、人口が減るので、だから人手不足というのは益々深刻になるというのは、もうここまでは決定事項なんです。なのでもうそうだから、運用の工夫じゃどうしようもなくなるはずなんですよ。

山路:つまりなんか現場におまかせで、ちょっと一所懸命働かせるとか、なんかそういうレベルではなくって、ちゃんと経営する人がどの市場に参入したら儲かるようなことを考えたりとか。

小飼:そうそう、そういうところが全然見られないんだよね。

山路:それってやっぱり労働者が交渉しなかったからなんですかね?

小飼:それもあるんですけども、さっき「新社会人の皆さんに一言」みたいなのありましたけれども、その辺よく見ておいてほしいですね。たぶん最初のうちっていうのは、研修だなんだっていうので、忙しいと思うんですよ。本当に漢字で心亡くなるみたいになってると思うんですけども。冷めるだけの余裕はとっておいてほしいです。

山路:なんかもう会社の言われるがままに、それは当たり前のことと受け止めて洗脳されていくのではなく、ちゃんと考える。

小飼:やっぱりどうせ目指すのであれば、そういう創意工夫がキチッと出来ているところであるべきなので。

山路:すごく疲れ切っててやってる仕事って大したことは出来ないわけだから。

小飼:しかも何重にも実は損なんですよ。だからそうやって会社で残業している間に、もっといいヘッドハンティングのオファーが来てたかも知れない。
 
山路:こんなに疲れるまで働いても給料が上がらないというのは、疲れてるからいい仕事が出来ないのではないかという。

小飼:そうそうでもあまりに疲れてるとね、すごい疲れた時って眠れなくなりません?

山路:なります。この小飼弾の論弾をやったあと、私寝られないんで(笑)。

小飼:はい。だからそういう風にならないように。

上場するビリビリ動画と、いまいちなニコニコ

山路:わかりました。じゃあ次の話題ですね、ビリビリ動画の話題ですね。いってみたらニコニコ動画のパクリ的な感じで、ビリビリ動画が中国で始まって、それがいつの間にかもうドワンゴの規模を追い抜いて、NASDAQ上場するというふうになったという。

小飼:ただ実際にどこでお金を作っているかって言うと、ソーシャルゲームだったり。

山路:FGOでしたっけ、なんかFate/Grand Order(フェイト・グランド・オーダー)を中国で展開したり。

小飼:ビリビリはNASDAQに上場して、ニコニコを買ったKADOKAWAはどうしてるんだ?といううん。1+1が1のままじゃないか!

山路:1+1が1というのは、減ってるじゃないですか(笑)。
 ビリビリ動画の成功は、早い内からモバイルゲームに目をつけたから?

小飼:いやでなくって、真っ当に技術者を大事にしたからじゃないんですか。焼きそばを焼かせたりせず。

山路:このビリビリ動画のニュース、なんか取り上げてくれないかっていったの、ドワンゴのスタッフなんですけど、え?いいの?みたいな。
 元々パクリサービスとして始まったニコニコ動画を更にパクって、こうNASDAQ上場っていうのも、色々感慨深いものがありますけど。

小飼:ただ、ビリビリの場合、パクリ度というのか、中国の特別扱い度っていうのは低いと思います。実は他のサービスっていうのは、でかいcompetitorがアメリカにあるわけじゃないですか。例えばGoogleに対して、「Baidu」(百度:バイドゥ)とかね。
 そういったものは、グレイト・ファイアウォール・オブ・チャイナがなければ、そういうふうになれたかなというのは疑問なんですよね。でも、ビリビリ動画相当の動画にコメントをつけるサービスは、YouTubeもやってないんですよ。

山路:じゃあ、なんか自分達の力で、ちょっとのし上がってきた感はがある。

小飼:というのか、あれだよね、KADOKAWAを買ってくんないかな?(笑)

山路:アハハ(笑)。いやいや、本当そうなるかもしれないですけどね。この伸びの急激さを見ると。

「ニコ生ってヘイトサイトじゃん」(コメント)

小飼:そうなの?

山路:うちらは、そうではないつもりでいるんだけれども。

小飼:まあヘイトに溢れたチャンネルですとか動画ですとかっていうのは、そりゃ確かにはありますよ。

テスラModel Xの大事故から見える、人工知能の問題

山路:じゃちょっと人工知能絡みの話に行ってみましょうか。これを人工知能というべきかどうかあれなんですけど、テスラのModelXが、大事故を起こして。運転手死亡。

小飼:このAIという言葉がクセモノなんだよな。中にコンピュータが入ってて、それで制御してれば、何でもかんでもAIと言ってるのが許された時代というのもあったんですね。AI変換とか、AI将棋とか。

山路:まあでもコンピュータが生まれた時からAIとは言われていたみたいですけど。

小飼:かつてのAIというのは、人間ぽく振る舞うプログラムを積み重ねていけば、それが人間と同じような判断を人間以上の正確さでやると思われていた時代というのもあったんですよね。でも今のAIというのは、データをいっぱい食わせておいて、それで神経細胞相当の部分というのを、鍛えておいて、それでそれに判断させるというやり方をしてるので、データドリブンなんですよね、ディープラーニングとは。

山路:「弾さんが定義するAIの定義って何?」ってコメントが出てますけど、弾さん的にはどっちかというとディープラーニング的なものが。

小飼:AIという言葉に立ち戻ると、Artificialの部分はいいですよ。人工の知能で。でも実は知能っていうのを我々キチッと上手く定義できてないんですよね。そもそもこの間亡くなったね、あのホーキング博士とかが、まだ地球上にもないでしょう、みたいな(笑)。

山路:「地球外知的生命体はいるんですか?」って聞かれた時の答えですね。

小飼:そうそう。地球にもいねえじゃん(笑)。って、もう彼の鉄板ネタなんですけどね。
 仕組みはどんなであれ、プログラムにプログラムを重ねたものでも、ニューラルネットワークにデータを食わせまくったものでも、トートロジカルではありますけど、我々がAIと思うものであればAIでいいじゃんとは思います。ただやっぱり1つ気をつけなければいけないのは、プログラムドリブンのものとデータドリブンのものでは、デバックの仕方が違うんですよね。まだデータドリブンのものというのは、どういう風にデバックすればいいのかというのが、きっちりわかってないんですよね。