「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
12月11日(月)に配信した、ニコ生公式放送「小飼弾のニコ論壇時評」、および「小飼弾の論弾」の内容を数回に分けてお届けします。
次回のニコ生配信は、2018年2月20日(火)20:00からの「小飼弾の論弾」になります。いつもと曜日が違いますので、ご注意ください。
それでは、お楽しみに!
2017/12/11配信のハイライト(その3)
- 簡単に増やせないことが安定性を生む
- 仮想通貨の収益にかかる税金
- 弱体化する日本の労働組合
- 監視社会の一端を担うドローン技術
- 2019年5月1日、元号が改まる
- ここがヘンだよUnicode
- 書評『JKハルは異世界で娼婦になった』
- 実はロジカルなラノベの不文律
- ちょっとエッチな『科学的に存在しうるクリーチャー娘の観察日誌』
簡単に増やせないことが安定性を生む
小飼:そこで重要なのは、ビットコインは簡単には増やせないということ。唯一認められているのは、掘るだけだと。だから常に勘定が合った状態になっているわけです。
あと自分だけが持っている貨幣というのは、まったく価値が無いですよね。決済できないんだから。だから、いろんな人が、ちょぼちょぼ持っている状態というのが、その通貨にとっては一番いい状態なんですよ。
山路:約4割のビットコインを1000人の人が持っているとして、その人らが全部売りに出したらビットコインは暴落するけど、逆にみんなに分散されるんだったら、独占はしづらくなるから、価値が安定するという。
小飼:要するに、1BTCで買えるものがそんなに、乱高下するということはなくなるんじゃないか。
とはいっても、価格がどこまで行くのかっていうのは、まあちょっとわからないし、仮想通貨で1番使われるのが、決済の手段として使われるのがビットコインになるかといったら、それはねえだろうと。やっぱりブロックの生成コストが高すぎるんだよね。
だからさっきも言ったように、ビットコインの正体は記録じゃないですか。偽造できないように記録するのがビットコインなんですけども、そのコストが高すぎると。
山路:でも安くすると、簡単に解かれるものになってしまうというデメリットがあるのでは?
小飼:まあプルーフ・オブ・ワークを使っている場合はそうですよね。だからリップルみたいにそこの部分のコストというのをすごく下げるというような通貨もあるんですけども。でもいずれにしても、こうすればだれにも壊せない通貨というのができることを証明したという意味で、ビットコインの意義というのはすごく大きいんですよ。
山路:ビットコイン、今いろんな政府が仮想通貨的なものを導入しようとしていて、今研究していて、そういうふうな政府発行の仮想通貨が市場に並んできたら、そのビットコインみたいなものというのは、急落するんじゃないかみたいなことを言っている人もいたりしますよね。
小飼:それは違うでしょう。政府が自分のところが発行している通貨を仮想化するということはあるかもしれないけど。
逆に政府からいろんな仮想通貨がじゃぶじゃぶ出てくれば出てくるほど、相対的にビットコインの価値が上がっちゃいますよ。
何度でも言いますが、ビットコインというのは、勝手に増やせないんです。どれだけ勝手に増やせないかといったら、勝手に増やせるやつがだれもいないんです。そこがすごいところなんです。
山路:不思議だなあ。話を聞いてわかったような気がするけど、改めて考えても不思議な仕組みだなとは思いますね。なんかその価格が上がるか下がるかはわかんないけど、とりあえず持っていると、お金が変わっていくところがリアルに見られる感じがして、ちょっと興奮しますね。
小飼:これが本当のお金なんですよ。偽物が出ようがないお金なんですよ。
山路:こういう仮想通貨的が世界的に使われるようになっていったら、弾さんがよく言うベーシック・インカムみたいなものっていうのは、やりやすくなるんですか。
小飼:やりやすくなるでしょうね。
山路:国じゃなくても、全世界にばら撒くことができちゃった。
小飼:カジュアルに使うにはマイニングコストが高すぎますが、カジュアルに使わなくてもいいものっていうのは、いっぱいあるわけですよ。例えば、金の延べ棒の売り買いを毎日細かくやりますか?と。ビットコインはそういう存在になってくるんじゃないかっていう人たちもいる。
山路:不動産の決済とかもそうかも。まあ別の仮想通貨に両替して使うみたいなことにもなるかもしれませんね。
そういえば、弾さんも参加しているVALUは、ビットコイン決済でやっているわけじゃないですか。
小飼:そうなんですよ。
山路:影響はありました? VALUのほうは?
小飼:影響はあります。急にBTCが上がるシーンでは、それでわざわざそれで支払ってなにかを買おうという人はどうしても減りますよね。
山路:みんな溜め込むほうに。
小飼:だからじわじわ上がってくれるのが一番嬉しんですけど、そういう意味では今月の値動きというのは、ちょっと見てられねえなという(笑)。でもそれもある程度、想定の範囲内ではあるので。
仮想通貨の収益にかかる税金
山路:日本では、仮想通貨を日本円にした場合の収益が雑所得になるじゃないですか。
小飼:僕の場合は、雑所得じゃなくて事業所得になります。それは税務署にもちゃんと言っていますよ。僕は職業的にそれを扱っているので。
山路:仮想通貨は、今後普通の株とかなんかと同じような扱いになってきたりするんでしょうか?
小飼:というより、日本国民が一番文句を言うべきは、なんで所得にこんな種類があるのかということなんですよ。
1円は1円だろう、と。だからなんで税金、こんなにいろいろ差別するんだ、と。一番ひどいのは給与所得ですよ。雑所得も累進課税になるんですけど、一番でかい問題は分離課税と総合課税があることですね。
分離課税というのは、株式とか債券とか外貨とか、今はFXも入っているけど。
山路:ストック、資産についても、税金が分かれている。
小飼:キャピタルゲインとインカムゲインを分けているわけです。
山路:同じ1円であっても。
小飼:ここは持たざる者が、一番突っ込みを入れるべきところなんですよ。
山路:みんな、そこのところにはなぜか突っ込まないですよね、不思議なことに。
小飼:一番の理由は、分離しないできちんと課税するためには、インカムだけではなく、キャピタルも税務当局が全部把握しなければいけないんですよ。
山路:要は、自分の資産の中身を全部当局に明らかにするということですね。みんなそれは絶対したがりませんよね。
小飼:なによりも政治家が嫌がります。全部ガラス張りにしようとすると、ドリルでハードディスクに穴を空けられちゃいますから(笑)。
山路:そういう根本的な税の仕組みに目をつぶって、給料をもらっている人同士が罵り合っているだけのように見えます。
小飼:一番アンフェアなのは、税金を細かくしているところ。キャピタルゲインは分離課税、インカムは総合とかということですよね。そこが日本の税制で一番アンフェアな部分だと思います。
山路:税金で文句を言うにしても、年収850万で線引きするのか、年収800万で線引きするのかみたいなことを議論しているのは……。
小飼:バカかと。
弱体化する日本の労働組合
山路:そういうふうなことはありますけれどもね。賃金の話で最近おかしかったのが、金属労協の議長が、安倍政権に対して、国が企業に賃上げをすると圧力をかけるのはもういい加減にしてくれというふうに文句を言ったという。
小飼:労組の人が、給与上げろと言っている人に黙れと言ったの?
山路:自分たちはちゃんと企業と交渉して、企業が中長期的に成長できるような感じで交渉しているから余計な口は出さないでくれと。
小飼:要は俺の仕事を取るなとか、そういうお話なの?
山路:というふうに見えましたけれどもね。
小飼:でもろくに成果出していないじゃん。
山路:と思いますね。労働組合としての役割を果たしていないんじゃないか、という。
小飼:なんで業種別になっているんでしょうかね、日本の労働組合というのは。それも労働組合の弱体化にすごく関係しているんですよ。
山路:各個撃破の対象になっちゃう。
小飼:日本に限らないですけれども、なんで累進課税とか言っているわりには、なんでこんなに労働者に不利で資本家に有利なのかというのも、そこなんですよ。
山路:こういう労働組合の議長、労働組合の人なんで資本家に有利になるように振る舞うんですかね。労働組合を統括する立場だったら、もうちょっと戦いようがあったじゃないか。
小飼:やっぱり自分がかわいいからでしょうね。『マトリックス』という映画があったじゃないですか。
山路:キアヌ・リーブス主演の。
小飼:裏切り者が出てきますよね。裏切り者というのは敵の内部に作るわけですよ。どうやって作るかといったら、鼻薬を嗅がせるわけですよね。日本の労組の偉い人というのは、みんな経営側に鼻薬を嗅がされているんです。
山路:裏切るなら、もっとものすごい鼻薬を嗅がされないとわりに合わないような気もするんだけれども。
小飼:鼻薬を嗅いじゃいけないとしているから、労働者は負けちゃうの。経営側に負けないくらいの鼻薬を嗅がせるべきなんですよ。そういうふうに考えないとダメなのよ。
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