「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
12月11日(月)に配信した、ニコ生公式放送「小飼弾のニコ論壇時評」、および「小飼弾の論弾」の内容を数回に分けてお届けします。
次回のニコ生配信は、2018年2月5日(月)20:00からのニコ論壇時評です。21:00からは通常の小飼弾の論弾になります。
お楽しみに!
2017/12/11配信のハイライト(その1)
- NHK受信料の徴収は合憲?
- NHK問題から浮き彫りになる時代遅れな日本の放送法
- ニコニコをNHKに買ってもらおう
- HPVワクチンの安全性を検証してきた村中璃子さんを『ネイチャー』が表彰
- 接種率とワクチンの効用と副作用の相関
- 社会に大きなベネフィットを与えるワクチン接種
- 国と報道の反応がないHPVワクチン
- 米国は進み、日本は後退したワクチン事情
- スパコンベンチャーPEZY Computing幹部2名逮捕報道について
- ハードウェアの世界では4億円ははした金?
- オープンで自由に使える命令セットアーキテクチャを目指すRISC-V
- RISC-ⅤはARMに取って代われるのか?
- リスクが大きい半導体産業
- 小飼弾がアセンブリを学んだのはMIPSだった
NHK受信料の徴収は合憲?
山路:では最初の話題ですが、NHKの話から。NHKと言えば受信料ということで。
山路:よくメディアで取り上げられているのが、NHKの受信料を払うのか、払わないのかで裁判となったという話です。最高裁が合憲という判決を出したことが、やたらと大きくフィーチャーされているようですね。
小飼:要は、強制加入というのはOKだと。ただ各メディア、特にNHKの取り上げ方で問題があって、そもそも最高裁は棄却しているんですよね。
山路:そうなんですか。
小飼:棄却しているんだけれども、合憲でかつ棄却するという言い方をしているんですよね。NHKが一番やりたかったことというのは、NHKのほうで加入者のサインとかが無くても加入させて取り立てられるようにすると。要は税金と同じですね。例えば、税金を払う義務というのは、国となんらかの契約行為を結ばなくても生ずるわけですよ。
山路:前々から、NHKの受信料は、税金みたいなふうに取り立てたらシンプルじゃないかという意見が、視聴者の側からあったと思います。でも結局すごくややこしいことをやってきていますよね、公共放送という建前を守るために。
小飼:そもそも、そのNHKの報道からして、この事件については偏向しているわけじゃないですか。真っ先に言わなければならないのは「主文」でしょ。主文というのは短い部分ですね。実際のところ論旨までちゃんと読まないと。
小飼:もしNHKが今回のような主張を行うのであれば、普段からスクランブルしないで放送しなければいけないですよね。今の日本は100%デジタルになりましたから、スクランブルをかけようと思えばかけられるし、かけないと思えばかけないんですけれども、かけていますよね、普通のほうと一緒に。
山路:え、スクランブルをかけて?
小飼:要はB-CASカードを引っこ抜いて見られるかどうかということ。
山路:なるほど、別に有料のものを申し込まなくても見られるけれども、スクランブル自体はかかっているという放送になるわけですね。
小飼:強制契約というのであれば、契約は済んでいるんですから、B-CASカードごときがなくても見られるようにしておかなくてはいけないですよ。そうでないとNHKの契約不履行になっちゃいませんか?
NHK問題から浮き彫りになる時代遅れな日本の放送法
小飼:実はこういうのもなんですけれども、最高裁も逃げているんです。要は放送法で契約を強制するというのは合憲。だけれども、きちんとした契約のプロシージャを踏まなければだめですよと。
山路:そこのところで違憲にしちゃうと、ある意味NHKのビジネスモデルみたいなものがひっくり返っちゃう。
小飼:けれども、じゃあ契約をちゃんと取り付けなさいよと。ちゃんと合意の上で、NHKと契約しているんですよという形をとりなさいという判決でもあるんですよね。だからもうどっちもハッピーではないという判決ですね、見てみると(笑)。
山路:しかし、NHKを巡る放送法というものが完全に時代遅れということがみんなわかっているわけですよね。
小飼:公共放送自体が本当に必要なのかどうか。例えば米国はないですよね。PBSというネットワークがありますけれども、これは別に放送料を取り立ててやっているわけではないわけですよ。だからNHKやBBCに比べると、色々としょぼいんですけれども、結構立派な番組をやっていることもあるんですよね。
山路:しかも個人的に納得がいかないのは、よく番組の最後に、「制作・著作NHK」と出るじゃないですか。その著作権というか、権利というのは全部NHKが持っているわけじゃないですか。例えば、みなさんの受信料で番組を作っていますと言っても、それで作ったブルーレイというのは子会社が売ることができるわけですよね。それで儲けてしまえる。みんなの受信料で作っているというのであれば、ブルーレイも実費で配布すべきだと思いますし、あるいは番組を使った商売も自由にできるようにすべき……。
小飼:基本的にNHKの公共部分というのは放送まででいいんじゃないかと。日本の場合は放送と番組制作というのは、きちんと分かれていないですが、米国は別なんですよ。
山路:じゃあつまり、通信インフラのほうを担当するみたいなイメージということ。言ってみたら、そこに配信したい人らが手数料でも払って乗っかってくるみたいな。それはたしかにシンプルな話かもしれないですよね。
ニコニコをNHKに買ってもらおう
小飼:そうだ! NHKが買えばいいんだ、ニコニコ。これでもう予算制限とかなくなるよな(笑)。
山路:カラーが合わなさそうですけれどね(笑)。
小飼:水に油どころじゃなさそうだけれどもね。
山路:そもそもKADOKAWAともずいぶん合わないという(笑)。
小飼:NHKは、法人売買とかできるのかな。子会社とかも持っており、出版会社とかも持っていますけれども。
山路:NHK本体を売ることができるのかと。
小飼:いや違う、ほかの会社を売買するということはできるのかなということ。NHKは法人としてどんなことが許されていて、どんなことが許されていないのかというのがわからないよね。とりあえず、テレビを持っていたら契約しろと迫ることはできると。だけどちゃんと迫らないとだめだと。それで断られた場合、裁判を起訴しないとだめだぞと。
山路:しかも、組織のトップを受信者が選べるわけでもなんでもなかったりするじゃないですか。本当によくわかんない組織ですよね。
HPVワクチンの安全性を検証してきた村中璃子さんを『ネイチャー』が表彰
山路:次の話題、そのメディアが不自然だという文脈に絡めてHPVワクチンのニュースを取り上げたいんですけれども、科学雑誌で有名な『ネイチャー』が、ジャーナリストの村中璃子を表彰し、ジョン・マドックス賞を与えたという話なんですが、実はこのニュースというのが全然取り上げられていない。
小飼:びっくりするくらい全然取り上げられていないですね。
山路:私もそんなに詳しいわけではないんですけれども、大きなニュースなんじゃないんですか。
小飼:ニュースにならないこと自体が巨大なニュースですよね。
山路:HPVワクチンというのは、子宮頸ガンのワクチンですか。
小飼:ヒトパピローマウイルスというウイルスを予防するワクチンで、実は男にも効きます。HPVが理由で発症する病気というのは、一番有名なのが子宮頸ガン、Cervical cancerなんですけれども、男でもコンジローマという、おちんちんがカリフラワーみたいななる病気ですね(笑)。ちょっとグロ注意ですけれども、ググって映像見てください。だから男も無縁ではないです。
山路:それが世界130か国では普通に予防薬として認可され、使われているわけですよね。
小飼:日本でも認可されて使われるようになって、7割くらいまでいっていたのに、2013年にパタッと止まるんですよ。
山路:HPVワクチンの効果はかなり実証されていて、外国でもそんなに大きな副作用などもないし、効き目はあるしということで認められていた。
小飼:なんだけれども、副作用を喧伝した人たちがいっぱい出たわけですよね。そういう人たちの声をメディアも一生懸命取り上げた結果、日本では接種がパタッと止まってしまったんです。
山路:しかも、WHOが日本を名指しで、そのワクチンの接種を止めるのはおかしいだろというような非難をしましたよね。
小飼:ほかにもいっぱいあるんですよね、というのも実は、日本の20数年で失われたもののひとつというのが、ワクチンの接種率なんですよね。
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