「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
今回は、8月7日(月)に配信した、フリーライター 赤木智弘さんとの対談テキスト(全3回)をお届けします。

次回のニコ生配信は、10月16日(月)19:00、話題の質屋アプリ「CASH」を運営する、株式会社バンクのCEO、光本勇介さんとの対談です!
いつもより、配信開始が1時間早くなっていますので、ご注意ください。

お楽しみに!

2017/08/07配信のハイライト(その3)

  • 中国や北朝鮮の事情なんて、僕らに関係ない!
  • エマ・ワトソンのフェミニスト発言と性的コンテンツ
  • 1人で酒飲んでパチンコ打ったっていいじゃない
  • 赤木さん『けものフレンズ』どうでした?
  • 結婚できない問題について
  • Googleのエンジニアが女性はエンジニアには向いてないよ発言
  • 結婚するのとVALUに上場するのどっちが簡単ですか?
  • トヨタとマツダが資本提携今後の自動車業界はどうなるの?
  • 凡人はVALUに上場できますか?
  • 飲食店に勤めています。店長が泣きながら最低時給でゴメンと言ってきて対応に困る

中国や北朝鮮の事情なんて、僕らに関係ない!

山路:ちょっと、ここで赤木さんにいちゃもんというか、質問が来てます。

「赤木さんは言論、表現の自由を語るわりには、言論の自由のない中国や北朝鮮を擁護するのは矛盾してませんか? ひょっとして中国の工作機関から金をもらっているのですか?」

山路:なんじゃこりゃ。

小飼:金をもらっていたら、もっとパリピな生活してるはずですよ。

赤木:北朝鮮を擁護した記憶は全然ないんだけどなあ。たくさんお金をもらったら擁護しますよ、そんなもの(笑)。
 だって、自分は日本人で日本で生活をしているのだから、中国や北朝鮮とは関係ないから。腐っていようが別にどうでもいい。

小飼:そこが不思議なんですよね。中国や北朝鮮の悪口を言えば、例えば自分の収入が増えるんでしょうか? もちろん、そういう本を出している人は、増えるでしょうけど。ああいう人には実利があるわけですよ。えぐいことを書くと、えぐいことが大好きな人が投げ銭をしてくれるわけですね。でも、そうでないほとんどの人にとって、中国の悪口を言うと何が得なの?

赤木:まあ、中国が一党独裁だと言われても、僕には関係ないし。表現の自由について話をするのであれば、自分に関わる範囲ということで、どうしても日本国内になりますよね。

小飼:とりあえず自分の周りからっていうのは、至極当然ですよ。
 例えば、中国からモノを買ったらすごい不良品が来たとかそういう体験であればそれはシェアするに値するとは思うんですけど、最近は中国製も安くていいものが増えてきているし。iPhoneもApple Watchも、少なくとも組み立てたのは中国のメーカーだし。まあ、中国国内の人は大変だと思いますけどね。SNSで「JavaScript」まで検閲されたとしたらとても困る(笑)。でもそれは困るのは中国人であって、僕らではないですよね。

山路:うんうん。私自身は、中国の話題でなぜあんなに熱くなる人がいるのかよくわからないところがあるんですけど。

赤木:そうですね。中国の法律も北朝鮮の法律もよく知らないですし。中国の人も北朝鮮の人も、頑張ってくださいくらいの感想しかないですね。

小飼:ということで、質問された方すみません、身も蓋もない答えで。

エマ・ワトソンのフェミニスト発言と性的コンテンツ

山路:『ハリーポッター』のハーマイオニー役で有名になったエマ・ワトソンは、フェミニストとしても影響力が増している感じがあるんですけども。で、エマ・ワトソンの主張に噛みつく人が結構いるという。

小飼:貧乏でキモいオッサンという奴ですね。

山路:お前きれいごとを言ってるけども、その男と付き合うわけじゃないじゃん、みたいないちゃもんをつける人がいたという。

赤木:別にエマ・ワトソンが何を言おうが、別にそれほど問題だと思っていないんですけど、なんだろうな?
 いわゆるフェミニズムでは、弱い立場の男性が2次元に行って、その2次元を彼等が性的搾取することで、女性を虐げているというような論理があるわけですよ。僕まったくよくわからないのが、彼女たちと、いわゆるモテない男性って、なんの接点もないわけですよね。接点自体がないと。放っておいてくれればいいんじゃない?っていう話なんですけど、何故か放っておいてくれないという。何故か、モテない人は2次元のアニメとかそういったものを好きであること自体が、もう女性に対する性的虐待、性的な侵害だという意見がある。

小飼:なんでこんな私がムカつくようなものが、公に転がっているのか!ああ!キモいオッサンたちがいけないんだ!というわけですね。なんだこりゃあ!って、それはわからなくもない。

山路:別にエマ・ワトソンがそういうエロコンテンツへの発言をしたわけではないですけどね。
 ただ、エロなど見たくないものに対して、過剰に攻撃を仕掛けてくる人っていますね。

小飼:満員電車の中で痴漢されるのとは、わけが違うじゃないですか。

赤木:僕もテレビを見ていて、イヤなタレントが出てきたら、テレビ消して終わりですから。

小飼:見た瞬間の不快感があるのは、しょうがないと思うんですよ。

赤木:自分は不快に思ったので、それを主張しなければならない、その当て馬としてキモくて金のないオッサンが叩かれるという、よくわからないことになっているんですよね。

小飼:自分の人生って有限ですから、どうせいちゃもんをつけるのであれば、やっぱり優先順位をつけてほしいですよね。キモくて金のないオッサンを足蹴にしたところで、得られるものというのは少ないんです。それよりも異議を申し立てるべきなのは、金も権力もあるオッサンなんですよね。例えば、金もある権力もあるオッサンたちは、30年もピルを認可しなかったくせに、バイアグラは半年で認可したんですよ。そういうところを突いてほしいですよ、僕としては。

赤木:ところが、そういうところには議論は向かわない。弱い立場を叩く仲間がいっぱいいて、彼女たちはその中でまたやりとりをしてるわけですよ。

小飼:弱い者いじめって気持ちいいんですかね? もし気持ちが良いんだとしたら、それは確かに報酬があるよね。

山路:以前、橘玲さんが記事を書いていましたが、「他人を道徳的に攻撃すると、脳の快感を司る部位がはげしく活性化する」そうですよ。

小飼:もしそうだとしたら、それは結構重要で重大な発見だと思います。

赤木:弱いものいじめは、自分がする分には気持ちがいいんですよ。だけど、そこに他人が乗っかってくるとやっぱり気持ちが悪い。
 さっきの貧乏でキモいオッサンにしても、弱い者いじめをしていることを仲間内で共有してみんなで楽しんでいるっていう精神状態がやっぱし僕は理解できないんです。僕はやっぱしそこには入れないんですよ、どうしても。

山路:ネットの炎上にも通じる話かもしれないけど、そういうのは人間の根本的なメカニズム、脳の報酬系と関わってるのかなという気もします。

赤木:というか、単純に自分の意見を表現しやすくなったということだと思うんですけどね、結局。ツイッターは、もう自分の手の中にあるメディアですから。こうしたメディアがなかった頃は、発言する場所も限られていました。友達の家では言えても、他の周りの人たちには大きな声で言えなかったり。それがツイッターというメディアでは簡単にできてしまう。その上で同じことを言ってる人が見つかり、そこに悪意や妬みがドンドン集約していってパワーになっているというのが、今起きていることなんでしょうね。

山路:発作的というか瞬間的な、生の感情がそのまま投稿できてしまう。

赤木:検閲も入らないし、編集者も入らない。まあ、中国だったら入るかもしれないけど、日本は入らないですからね。

山路:SNSのサービスがすべきは、送信ボタンを押してしばらくしないと投稿できないようにすることなのかもしれませんね。

赤木:30分くらい経ってから反映されるとか。その間ならキャンセルOKにする。

山路:まあ、Facebookやツイッターがそういう仕組みを採用しても、投稿を素早くできる競合サイトが登場してくるからうまく行かないでしょうけど。

小飼:こういうのもなんですけど、一方的に弱い者をプチプチするのって、飽きねえ?と思います。たぶん僕はその意味では飽きっぽいんでしょうね。飽きっぽいからこっちがなんかツッコむと、なんだコノヤロー! と言ってくる人の方が僕は嬉しい。

山路:それに弾さんは、ハマるものがいろいろあるから、暇じゃないですね。

小飼:確かに、それはある。

赤木:そんなことをやっている暇がない。

小飼:うん、やっぱり人にいちゃもんをつけないで、自分も楽しいことを見つけましょうよ。

「投稿を30分待たせるのは、2ちゃんねるのひろゆきも言っていたなあ」(コメント)

山路:そうなんですか(笑)。

1人で酒飲んでパチンコ打ったっていいじゃない

山路:あと、金なしのキモいオッサンの話の続きというわけでもないんですが、非モテな立場の人への非難が強くて、それが「俺はもうダメだ」という諦観や世の中への恨み、あるいは炎上にもつながっているところもあったりするのかなと。

赤木:そうですね。最近見たツイートで衝撃だったのは、「オッサンは仕事やって家帰って酒飲むしかないような生活をしているから、それはキモい」って書いている人がいたんですよ。それってすごく幸せな生活なんですよ。自分の家があって、自分の時間をちゃんと持って、お酒飲んで明日もまた頑張れるっていうのはね。それがキモいものになっている。