「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
今回は、6月19日(月)に配信した、『さおだけ屋はなぜ潰れない?』の公認会計士、山田真哉さんとの対談テキスト(全3回)をお届けします。

次回のニコ生配信は、7月24日(月)20:00の「小飼弾のニコ論壇時評」。今時のニュースを小飼弾がズバズバ斬っていきます(21:00頃からは、通常の「小飼弾の論弾」になります)。

お楽しみに!

2017/06/19配信のハイライト(その2)

  • ニコニコの本当の強みとは?
  • 監査法人が企業から報酬をもらうのってヘンじゃないですか?
  • AIは人間の仕事を奪うのか?
  • どうして会計処理や監査には人手が必要なの?

ニコニコの本当の強みとは?

その1から続く)

山路:YouTubeとニコニコでは収益モデルが全然違うわけですよね。金を稼ぐのが、コンテンツなのかプラットフォーム、つまり、場を貸して稼いでいるのかどうか。

小飼:そういうことです。

山田:カドカワの出版事業は今年もプラスですからね。売上高1130億、去年より7.4%増ですから。利益も83億、前年度より32%、つまり、ニコニコのマイナスを、出版でカバーするという。

山路:この利益とかのグラフ、すごいことになってますね。Webサービスの損失を出版がカバーしていることがよくわかる。

山田:ちょうど2年くらい前は、ドワンゴが儲かっていて角川書店は儲かっていませんでした。角川書店がお荷物だったのが、この2年間でひっくり返る恐ろしさ。

山路:ドワンゴといっしょになったのはよくなかった?

山田:結果的に、意外とポートフォリオがよかったね、という話になっちゃうんです。合併した当時は出版がダメなのをネットで補おうという話だったのが、今は出版のコンテンツ、特に今回は『君の名は。』と『ブラタモリ』がヒットするという。まさかの、『ブラタモリ』の本とかが、地道に稼いだんですね。ラノベは、元々売れていた『ソードアート・オンライン』とか、『この素晴らしき世界に祝福を!』とか『Re:ゼロから始める異世界生活』ですね。

山路:『ブラタモリ』は、私も毎週見ています。

山田:あの本も売れているんですよ。何十万部単位で売れているんで。

山路:どうして『ブラタモリ』の本をNHK出版で出さなかったんでしょうね?

山田:NHK出版は、すごく当たりそうなやつを選んで外に出しますね。どういう基準で選んでいるのか、謎です。

山路:ベストセラーを別の出版社で出して、自分のところでは地味な本を出しているという。

小飼:いずれにしても、今やネット事業を持っていなければ、出版でもろくに商売できないという意味では、角川書店とドワンゴは正しいことをしました。ただ、合併のメリットを「ちゃんとニコニコにも反映しろや!」というのが、嘘偽りのない、僕の正直な気持ちです。

山田:ところが、カドカワがお金をなにに使っているかというと、所沢のテーマパークだったりします。

山路:『ところざわさくらタウン』というやつですよね。

山田:そう「さくらタウン」です。

(株)KADOKAWAが計画している埼玉県所沢市に氏の席の製造・物流拠点を建設するプロジェクトについて、当初の計画では最大155億円をしておりましたが、事業内容、回収見込額及び共用部を含めた建築コストを精査した結果、246億円へと変更いたしました。(カドカワ-第3期定時株主総会招集ご通知p6より引用)

このプロジェクトに100億円を足しているという。

小飼:箱モノは嫌な予感。

山田:今はちょっとダメで香ばしいニオイがしてきています。だいたいこの手の話は、地方が絡んでくる。所沢市と連動しているんで、市の意見とかを聞いて見栄を張って、「それも作りますよ」とか「世界中からアニメファンが集まりますよ」とか言っていくと、箱モノがドンドンでかくなるというね。