米国NGOのロリ・ウォラック氏は「自由貿易の幻想」という記事を今夏に発表しました。ヒト・モノ・カネが自由に行き交う世界を目指す自由貿易といえば、経済成長に不可欠と言われています。それを「幻想」ときっぱり結論づけました。
THE JOURNAL取材班が製作中の映画「自由貿易に抗う人々(仮)」に重なるテーマです。NAFTA(米国・カナダ・メキシコによる自由貿易協定)が発効した1994年といえば、「協定が貿易を拡大し、それが成長を後押しし、雇用が創出されることで不法移民も減少する」と推進派が主張していました。米国マスコミも消費者の利益につながる、雇用が増えると宣伝していたようです。
(ロリ・ウォラック氏/2012年3月・筆者撮影)
推進論が席巻する中、わずか2年後に現れた変化をロリ氏は紹介します。NAFTA推進を突き進んでいた同国のシンクタンクが、NAFTAが雇用に及ぼす影響は「ゼロに近い」とあっさり認め、手のひらをひっくり返すようにこう言い放ったといいます。「私が学んだことは、予測を行う際には十分用心しなければならないということだ」。
では、さらに20年後の米国を待っていたのはどんな世界だったのでしょうか。
「メキシコとカナダに対する米国の貿易赤字は拡大しつづけ、1993年には270億ドルに過ぎなかったものが、2013年には1770億ドルまで達した。 米国の経済政策研究所の試算によれば、対メキシコ貿易赤字の拡大によって1994年から2010年の間に米国では70万人の雇用が失われた」(ロリ・ウォラック記事)
記事では厳しい米国の状況に加え、記事中にはメキシコの惨状も伝えられています。トウモロコシの輸入拡大、農民の疲弊、出稼ぎ、映画でも取り上げるものばかり。「マキラドーラ」とは、前回の記事(「尊厳ある暮らし」はどこに)でも紹介した地域です。
2010年10月、当時の民主党政権下の日本では環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が国会の話題にのぼりました。そして、政権交代後の13年、同協 定への交渉に加わりました。「世界の潮流に遅れる」「TPPが経済成長を後押しする」といった発言が多く繰り広げられました。NHKのホームページ(今さら聞けない「TPP」)には「TPPは成長戦略の切り札」と掲載されています。はたして、将来の日本はどうなっていくのでしょうか。
《メキシコを舞台にした映画の製作中です!支援をよろしくお願いします/残り34日》
■「尊厳ある暮らし」はどこに─『日経ビジネス』に映画関連レポ
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