昨年末に取材班が訪問した米国の国境沿いの町、《メキシコ・レイノサ》は、多国籍企業が進出する工業地帯として有名なエリアです。そこで働く女性は私達に仕事の状況についてこうつぶやきました。
「仕事・雇用はたくさんあるけど、収入が上がっていません」
話を聞いてみると、外国企業が進出して雇用が増える一方で、地域住民の生活環境はまったく向上していないといいます。「国が進めている自由貿易は、大企業の力を強化する一方で、労働者の私たちには一切の恩恵もありません。今の給料ではもう暮らしていけませんよ」。
この発言はメキシコ全土で高まる不満を象徴しているようです。今週発売の『日経ビジネス』(9月7日号)では、メキシコに進出している日系の自動車産業にフォーカスし、労働力が集まらない現状を取り上げています。
「米国、カナダとNAFTA(北米自由貿易協定)を締結し、生産した製品を北米にフリーパスで輸出できるなど『世界の工場』として様々な素地を持つメキシコだが、最大の魅力は豊富な労働力だ…(中略)…そんな地域で世界に冠たる日本の自動車産業が人手不足に陥るとはどういうことなのか」
紙面では人手不足と人の入れ替わりによる品質の低下、不良率の増加などが書き綴られています。
取材した私たちが見てきたのは、安定した暮らしとはほど遠い、労働者の生活環境の悪化でした。週に2日は断水する住居、未舗装の道、そして何よりも子どもの教育費もままならない収入源と物価の上昇…。機械化が進んだとはいえ、製品をつくるのは結局人の手です。その労働者が、悪条件の仕事環境で不安定な暮らしをしいられれば、良質な製品をつくれないのは当然かもしれません。
レイノサの労働者住宅は、雨が降ると腰の高さまで水が押し寄せる
メキシコ中部グアナファトから移住して工場労働を続ける別の女性は、「この家を見て。尊厳ある暮らしといえますか」と高校生の息子に寄り添いながら口を開きました。そして、すきま風が入るあばら屋を見回してこう続けました。
「(夫と)二人が働いているにも関わらず、この暮らしです。メキシコは発展どころか後退してるのではないでしょうか」
現在製作中の映画の中では、彼らの暮らしも紹介したいと思います。グローバリゼーションが広がり、日本もメキシコも変わらないような状況が目の前に迫っているように思います。
《メキシコを舞台にした映画の製作中です!支援をよろしくお願いします/残り39日》
■「尊厳ある暮らし」はどこに─『日経ビジネス』に映画関連レポ
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