名前:尾立源幸(おだち・もとゆき)
政党:民主党
選挙区:参議院大阪選挙区
生年月日:1963年10月9日
ホームページ:http://odachi.info/
Twitter:http://twitter.com/odachi_moto
── 政治家になろうと思ったきっかけは何ですか?
私は、政治家になる前に税理士と公認会計士をやっていました。言うまでもなく、税理士は税金の額を計算してそれを納める仕事で、公認会計士は企業の決算書をチェックする仕事です。
そのなかで、納税者がイヤイヤ納税をする場面がたくさんありました。特に税理士の仕事をしているときに多かったのですが、理由は「税金の使われ方がようわからん」というものでした。そこで、納税者に税金の使われ方が理解されるよう、もっと税金の使い道を透明化しなければ、と感じていました。
もう一つは、私が公認会計士として決算書を作っていたとき、すでに国の財政赤字が膨らんでいました。現在では860兆円と言われていますが、財政赤字の増加を止めるために、どこかのタイミングで財政赤字を食い止めなければいけない。その二つの思いがあって、参議院選挙に出馬することを決意しました。
── 財政赤字の削減はどのように解決していくべきだと思いますか?
単純に言って、方法は3つしかないと思っています。一つは「出るお金」をできるだけカットするという方法。「事業仕分け」がこれに当たります。もう一つは入ってくるお金を増やすこと。これには二つの方法があって、一つは今の税率でも自然に税収が増えるよう、国の経済を成長させ、税収を増やすこと。もうひとつは、それをやりつつも、最終的にはどうにもこうにもならないときには、税率を上げることです。民主党が政権を預かっている4年間で、無駄のカットと自然に税が増えるような成長戦略を実行していきます。それでもどうしようもないときは、次の総選挙で負担のお願いをして、その代わりに負担に対して「医療、年金、教育がこうなります」ということをきちんと示して選挙を行わなければならないと思います。
── 尾立議員は大阪選挙区選出ですが、大阪区民の空気はどのような感じですか?
それはそれは厳しいです。大阪では橋下府知事が支持されていますが、その理由は、前知事が官僚出身でほとんど何もやらなかったのに比べ、橋下知事は行政改革ということで大阪府の財政の立て直しを有言実行しているからです。大阪府民は本物と偽物を見分ける能力が高いですので、「やろうと思えばできる」ということがわかっているんです。
──「もっとやれ」という声が多いのですか?
そうですね。「もっとバンバンやらんかい」という声が多い。事業仕分けの結果、これまでほとんど知られていなかった税金の使われ方が見えてきました。では、そこを切れば国民の生活が困るかというと、そうでもないということばかりです。だから大阪からは「もっとやれ」という声が多いですね。
お金の流れが透明になり、情報公開がきちっと行われ、自分の収めた税金がこういうふうに使われているのかと納得していただければ、足りないものは足りないと言うことでみなさん負担していただけるはずです。ただ、現在はここがブラックボックスとなっていて、納税者も税金はできるだけ少ない方がいいと感じてしまっているのです。
── その意味では、今回の事業仕分けで今まで見えなかったものがたくさん明らかになりました
まさにそのとおりで、税金や保険料のみならず、今回は免許証の更新料や宝くじの収益の使われ方なども議論することができました。実は、この二つは国家予算ではないので野党時代は口出しができず、国会で議論できませんでした。政府の外でお金のやりとりがされているため、「そういう決まりです」といわれると、それで引き下がるしかなかった。今回、それを土俵に引きずり込めたのは大きいと思います。独占的な権限が与えられたり、または独占的な権限が与えられてないにもかかわらず、実際には競争原理が働かずに天下り団体が独占してしまっているという状況は、政治家がきっちり管理しなけらばなりません。それが現在では「民間だから」という理由で中途半端になっています。これが国民にとっての隠れ徴税や裏負担になっています。
── 事業仕分けは見学者も多かったのですが、お客さんを入れると気持ちが盛り上がりますか?
見学者が多いのは勇気づけられる反面、圧力団体もきますので諸刃の剣ではあります。ただ確実に言えるのは、見学者を入れ、中継も入れることによって私たちもいい加減なことをできない、国民のみなさまの立場に立って発言しないといけなかった。私利私欲で手ぬるい判断をすると全部コチラにしっぺ返しが来ます。そういう意味で、緊張感を与えていただけたことは非常によかった。会場ではヤジや拍手は禁止なのですが、そうはいっても熱気は伝わってきていました。
── 読者からの質問にもあったのですが、事業仕分けで天下りを一つ一つチェックするのは大変なので、一律に給料を「800万円以下に」ということはできないのですか?
国家公務員の給料についてはいろんな形で規制ができるのですが、公益法人については現在は民間団体なので「役員の給料を800万にしろ」ということを政府としては言えません。そこが難しいところです。
しかし、天下りと補助金などの金の流れはセットになってますから、天下りをやめれば金も流れない。逆に、金を止めれば天下りもなくなります。この二つが効果的なのですが、一番早いのは金の流れを止めて天下りをなくすことです。ですので、我々ができるのはカネの流れを止めること。それが事業仕分けで実現できました。
── 一つ一つの事業を細かく精査するのではなく「すべての予算を一律2割削減」ということはできないのですか?
たとえば、すべての事業を荒っぽく2割削減すれば8割の予算が残ります。ではその8割でどのような事業を行われるのかというと、役職員の人件費は温存されたままで、その他の仕事の予算を削減して仕事をするようになってしまう。こうなると、真水のお金で法人の外に出て行くお金が逆に少なくなってしまい、国民が不利益を被ることになりかねません。なので、そこは構造を一つずつ見つつ、予算を削減しても役職員の人件費や管理費に消えないようにしていかなければならないのです。
── 今後、事業仕分けはどのように発展していくのでしょうか?
5月からは省庁別の事業レビューをやりはじめました。これは、私たちが実施した事業仕分けをひな形として、各省庁にも同じことを実施してもらおうというものです。日本の省庁でははじめての取り組みで、全省庁の約5000事業で実施することになっています。今回だけでこのすべてが実施できるわけではないのですが、この5000事業の事業シートはすべて公開していますので、国民にもマスコミにも見えるようになっています。
──事業仕分けの第3弾はいつ行われるのですか?
第3弾の日程はまだ決まっていませんが、事業仕分けは常に実施しなければ効果が出ません。だから、行政刷新会議の事業仕分けと、省庁レベルで始まった事業評価レビューは車の両輪となり、二本立てで実施していかなければなりません。
願わくば、いつかは国会議員が関与しなくても、各省庁が自分自身のメカニズムとしてちゃんとしたコスト意識が組織の中に入り込むのが理想的です。自分たちが始めた事業は自分たちで評価する。そういう文化を各省庁のなかにも根付かせていきたいと思っています。
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THE JOURNAL編集部
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