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中央集権型の「地方創生」に未来はない(2)─「消滅可能性自治体」より緻密な実態把握から

2015/01/01 05:01 投稿

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「消滅可能性自治体」では地域を把握できない

 「地方創生」の議論は、増田寛也元総務相らが5月に人口推計(日本創成会議・人口減少問題検討分科会)を発表してから急速に進んだ。

 日本創成会議は、2040年に若年女性人口が半分以下になる自治体を「消滅可能性都市」として市町村リストをセンセーショナルに発表した。増田氏がまとめた『地方消滅』(中央新書)もベストセラーのようだが、このレポートを鵜呑みにすると、「自分の地域に将来はない」という危機感や悲観論が広がり、非現実的な目標値を設定したり、場合によっては小さな地区町村は生きられないといった「市町村合併論」へとつながりかねない。

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2040年に若年女性(20〜30代)の77.5%が減少すると名指しされた津和野町はもっとも減少率の高い紫色となっている(「消滅可能性自治体」とともに発表された『人口減少地図』より)

 それとは一線を画す緻密でユニークな調査が、石破茂地方創生担当相のお膝元の中国地方で進められている。

 島根県の独自調査「しまねの郷づくりカルテ」 は、全県を227基礎コミュニティ(小学校区)にわけて人口を集計しているだけでなく、地域ごとに交通や医療、教育などを数値化してレーダーチャート式にまとめられている。

「しまねの郷づくりカルテ」HPをみると県内各地の情報がチャート式で表示される
HPには県内各地の情報が数値化されチャート式で表示される(上は津和野町左鐙地域)

 この人口集計をした結果、2008年からの5年間で、4歳以下の子どもが1人以上増えているエリアが全地域の1/3以上あり、特に中山間地や島嶼(とうしょ)部で人口が伸びていることが判明した。

 さらに、20〜60代の夫婦が年間に何組移住すれば人口が維持できるかの推計「人口増加シュミレーション」によると、大半の小規模地域では年間1〜2組程度の移住受け入れがあれば地域が存続できる計算ができている。

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チャートと同じ左鐙地域では、年間1組で人口維持できることになる

 郷づくりカルテに関わった藤山浩さん(島根県中山間地域研究センター研究総括監)は、「ばくぜんと定住目標を考えるのでなく、地区ごとに明確な目標数値を地域住民で共有することが具体的な行動につながる」(7.13「中山間地域フォーラム」にて)と指摘する。

  15年度には、全国の地方自治体が「地方創生」に絡んで総合戦略をまとめる予定だ。「定住者を増やせ」「I(アイ)ターン者を集めよう」と、むやみやたらに若手や移住者をターゲット にした人口政策の準備を始めるのではなく、まずは自分の地域の実態把握から進めることが「地方創生」のスタートになりそうだ。

【関連記事】
■中央集権型の「地方創生」に未来はない(1)─「地方創生」なのに権限は中央に?(1)
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar697724
■ほんとうの「地方創生」とはなにか 地域の総力で田園回帰時代をひらく(農文協/ 2015年1月)
http://www.ruralnet.or.jp/syutyo/2015/201501.htm
■「1%の『田園回帰』」と「100%の『伝統回帰』」(農文協/2014年10月)
http://www.ruralnet.or.jp/syutyo/2014/201410.htm
■宮城県、地方創生で独自色 若手選抜、研究制度創設(河北新報/2014年12月30日)
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201412/20141230_11006.html
■「地方創生法案」国民的議論を 格差是正の視点欠落 明治大学教授 小田切徳美 (日本農業新聞/2014年10月27日)
http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30456

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