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田原総一朗:誰もが「生きづらくない国」をどう作るか、実践者に聞いたヒントとは?

2014/05/20 09:00 投稿

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  • 田原総一朗
僕の母校、早稲田大学には、大隈塾という、僕が塾長をつとめる講座がある。第一線のジャーナリストたちとともに、 「21世紀のリーダー、あるいは世界で活躍する日本人」の育成を目標として、各界の著名人を招き、学生たちを交えてディスカッションしている。とても贅沢な授業だ。

先日、家入一真さんにこの大隈塾へ来てもらった。彼が今年の1月、東京都知事選に出馬したことは、みなさんの記憶にも新しいだろう。そのとき家入さんは35歳。候補者の中でもっとも若かった。

じつは家入さんは、中学2年生のときから引きこもりだったそうだ。高校卒業後に就職したものの、「まともに働けなかった」という。

だが、そこからが彼のすごいところだ。インターネット関連の会社を起こして、最年少で株式上場したのだ。29歳のときのことである。そして、十数億円という資産を得たそうだが、カフェ経営等々で、結局すっからかんになってしまう。

このような経験から、家入さんは、給与のためだけに働くのではない、ものづくりの集団ができないかと考えた。そして作ったのが「リバティ」である。つづりは「Liverty」。「自由」「解放」を意味する「Liberty」に、「生き方」である「Live」を組み合わせた造語だ。

家入さんによれば、「サークルのような団体」。会員の中には、会社を辞めた人、大学は卒業したけど就職しない人やできない人、自殺したいという人も多いという。つまり彼らの多くは、「メインのシステムからこぼれ落ちた人たち」なのだ。家入さんが給料を払うわけではない。「たくさんいる仲間たちと一緒に、プロジェクトを立ち上げてお金を稼げればいい」ということだそうだ。

一方で、「リバ邸」というシェアハウスも作った。現代の「駆け込み寺」だ。渋谷、六本木、仙台、大阪、京都など、10カ所くらいあるそうだ。

仲間と住まいを共有することで、安く生活できる。だが、それだけではない。共同体のベースにもなるとのことだ。「メインのシステムから外れた人たち」が、物理的にも精神的にも、支え合って生きていける可能性が開かれた場なのである。

「社会で生きづらい人たちの居場所を作りたい」。家入さんはこう語る。当初は、政治とは関係なくやっていこうと彼は考えていた。しかし、やがて政治に対して無関心ではいられなくなった。こうして家入さんは選挙に立候補したのだ。

都知事選では、8万8936票を獲得した。候補者中、第5位の得票数だ。だが、数字に表れている以上に、投票権のない10代に多くの支持者がいたようだ。

「日本は物は豊かだし、安全だし、いい国だと思います。けれどその一方で誰もが、『弱者になり得る』社会でもあります。全国民というのは難しいかもしれないけれど、できるだけ『生きづらさ』のない国にしたいんです。そのためには、中央集権では無理があるのかなと。ヒントは地方にある気がするんです」

家入さんは、このように語った。そして、その言葉のとおり、いま、日本全国を行脚しているそうだ。

家入さんは今後、政治家になるかもしれない。それは、彼自身にもわからない。なぜなら、「政治家になる」のが目的ではないからである。自分の理想を実現させることが、家入さんにとって、いちばん重要なのだ。

彼は「トライセクター・リーダー」という言葉を口にする。企業や政府などの垣根を越えて活躍する人材、という意味だ。そのように動けるのであれば、政治家になる必要はないのかもしれない。

家入さんの姿勢に、柔軟で新しい、しかし本来の意味での政治のあり方を見たような気がする。彼のようなひとの登場を僕は大いに期待しているのである。


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〈田原総一朗(たはら・そういちろう )プロフィール〉
1934年、滋賀県生まれ。60年、岩波映画製作所入社、64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。現在、早稲田大学特命教授として大学院で講義をするほか、「大隈塾」塾頭も務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。また、『日本の戦争』(小学

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