私は、米欧人のクジラ・イルカ漁に対する過剰な反感は、異文化への無理解に基づく偏見だと思っているけれども、今はむしろそれよりも、彼女に辺野古の基地建設の本当の問題点について認識してもらう絶好のチャンスだと捉えて、「では辺野古の海のジュゴンはどうなのか。貴女は新しい海兵隊の基地のための埋立でジュゴンを殺したいのか?」と、ジュゴンが優雅に泳ぐ写真を添えて返信欄に投稿した。
というのも、それ以前から私は、辺野古の海のサンゴ礁やジュゴンを撮ったカメラマンたちの傑作を集めて5種類か10種類の写真絵はがきを作って、それを国民の皆さんに買って貰って、1枚1枚、署名とメッセージを添えて、100 万枚でもケネディ大使に送ろうという運動を起こすことを構想して、親しい皆さんと相談を始めているところだった。はがき運動というと、これまでも仲井真弘多県知事やオバマ大統領をターゲットにして行われてきたが、私が想像するに、彼女はリベラル派だし、生物多様性や環境の問題にも関心が強い。たぶん辺野古の海を埋めるというのがどういうことなのか、考えたこともない彼女は、その写真の何枚かを見ただけで「エッ、米国のためにこの海を埋め立てて新しい基地を作ることに私が加担するの?」と、初めて深刻に自問するのではないか、と。
大使は2月上旬に初めて沖縄を訪問する予定だが、探りを入れたところ、日米官僚どもは、普天間基地だけ見せて「ああ、これは早く移転しなければいけませんね」とだけ言わせて、あとは県知事を儀礼訪問して終わりということにしようとしているようだ。それではダメで「大使、辺野古の海を見て下さい!」という声を沖縄県民ともども本土の我々も彼女に届ける必要がある。▲
(日刊ゲンダイ1月29日付コラムを転載)
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<高野孟(たかの・はじめ)プロフィール>
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊。2002年に早稲田大学客員教授に就任。05年にインターネットニュースサイト《ざ・こもんず》を開設。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
コメント
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いつもヨーロッパを旅行する度に、自然、歴史的建造物、歴史的事物事実を長い年月維持保管しているのを見聞きする。私達日本人は、経済至上主義(お金が全てを支配する)社会に多くの人が何等疑問を持たず、自然をどんどん破壊していった。歴史的建造物も、簡単に破壊し、新しい建造物に変えてしまうので、旧きよき時代をしのぶことなど全く出来ない。歴史的事実も簡単に論理のすり替え、言葉のすり替えによって歴史的事実を虚構してしまう。以前は、日本人は真似することが秀でていると見ていたが、最近、安倍総理になって、論理のすり替えが酷くなっているようです。日本人はだませても、他国の人をだますことが出来ないのがわからず、米国をてこずらせています。
辺野古は、米国がこだわっていたわけではなく、日本の提案を受け入れたのであって、責任は全て、日本政府にあると見るべきなのでしょう。ケネディ大使は、タイミングよく、日本で難問に出くわすことになったといえます。回答しなければならない場合は、正直に回答すると思うが、基地とどのように関連付けて回答するか興味深い。