キャロライン・ケネディ駐日米大使が17日、自身のツイッターに「イルカが殺される追い込み漁の非人道性について深く懸念している」と書き込み、米国務省もこれを支持する見解を明らかにしたのに対して、菅義偉官房長官が20日、イルカ漁は「わが国の伝統的な漁業の一つであり法令に基づき適切に実施されている」と反論するという騒ぎとなった。

私は、米欧人のクジラ・イルカ漁に対する過剰な反感は、異文化への無理解に基づく偏見だと思っているけれども、今はむしろそれよりも、彼女に辺野古の基地建設の本当の問題点について認識してもらう絶好のチャンスだと捉えて、「では辺野古の海のジュゴンはどうなのか。貴女は新しい海兵隊の基地のための埋立でジュゴンを殺したいのか?」と、ジュゴンが優雅に泳ぐ写真を添えて返信欄に投稿した。

というのも、それ以前から私は、辺野古の海のサンゴ礁やジュゴンを撮ったカメラマンたちの傑作を集めて5種類か10種類の写真絵はがきを作って、それを国民の皆さんに買って貰って、1枚1枚、署名とメッセージを添えて、100 万枚でもケネディ大使に送ろうという運動を起こすことを構想して、親しい皆さんと相談を始めているところだった。はがき運動というと、これまでも仲井真弘多県知事やオバマ大統領をターゲットにして行われてきたが、私が想像するに、彼女はリベラル派だし、生物多様性や環境の問題にも関心が強い。たぶん辺野古の海を埋めるというのがどういうことなのか、考えたこともない彼女は、その写真の何枚かを見ただけで「エッ、米国のためにこの海を埋め立てて新しい基地を作ることに私が加担するの?」と、初めて深刻に自問するのではないか、と。

大使は2月上旬に初めて沖縄を訪問する予定だが、探りを入れたところ、日米官僚どもは、普天間基地だけ見せて「ああ、これは早く移転しなければいけませんね」とだけ言わせて、あとは県知事を儀礼訪問して終わりということにしようとしているようだ。それではダメで「大使、辺野古の海を見て下さい!」という声を沖縄県民ともども本土の我々も彼女に届ける必要がある。▲
(日刊ゲンダイ1月29日付コラムを転載)


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<高野孟(たかの・はじめ)プロフィール>
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊。2002年に早稲田大学客員教授に就任。05年にインターネットニュースサイト《ざ・こもんず》を開設。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
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