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106歳の砺波サキさんは要介護度5、娘のみどりさんともう一度、秋の京都で紅葉狩りをしたいという夢がある。

すでに5万人を越えた百寿者も、その大半はベッドの上で過ごしているという。身体は寝ていても、気持ちまでベッドとの上かというとそうでもない。人は生きる限り、みな夢を持ち、さまざま希望を抱き続ける力を持っている。だが現実は、周囲に気兼ねし皆どこかで諦めてしまっているのではないだろうか。

みどりさんから相談をうけたトラベルヘルパーは、サキさんの身体にできるだけ負担の少ない移動手段を考える。要介護度5で施設に入居しているサキさん、移動時間も短い方がいい。

横浜にある施設の担当者とも打合せ、新幹線を利用することにした。駅までは介護タクシーを使い、京都でまた介護タクシーで観光する。

新幹線には、多目的に使える無料の個室がある。大人が横になる程のスペースがあり、子供の授乳や具合が悪くなった人の休息に使うことが可能だ。あらかじめ予約すれば乗車の際に駅員が車両まで案内してくれる。

出発当日は、プレツアーのチェックとしてスタート前の準備を行う。介護タクシー、新幹線などの公共交通を乗り継ぐルート、現地ドライバーガイドとのミーティングポイント、観光や食事があれば入場方法や多目的トイレの確認まで行い時間配分する。

こうした最終確認を行う為にトラベルヘルパーは、待ち合わせの30分前にはショーアップ、準備をはじめている。当日の天気予報から外気温や雨風対策、周辺の交通環境を確認、介護タクシー配車位置、玄関前からの動線などを確かめる。

介護タクシーは周囲の交通の妨げにならないように、およそ15分前に配車される。ドライバーとは、互いに体調を確認し、ルート上の事故渋滞などに直近の気象情報を加え、安全運転を第一にベストプランを最終検討する。

保護者として同行者がいるなら、合同ブリーフィングになる。天候や体調による予定変更など想定される情報共有を行い、安全確認と車内や移動中のサービスがスムースに行われるように確認する。さらに車いすの点検を行い、荷物を含めた持ち物の最終確認を行い出発となる。

介護旅行の手配では、日常の介護環境をできるだけ旅先に用意しようと努めている。サービスもいつもと変わらないことを大切にしている。いつもと同じように安全で快適な時間を保ち、できるだけ心の負担を少なく、しかも非日常の旅を楽しんでもらおうという欲張りなものだ。

その為にすべてのスタッフがそれぞれの持ち場で旅立ちの前に万全の確認を行う、連携プレーのチーム力が問われる。我々も、ともに働く一人としてそうした旅の手伝いができることが嬉しい。





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【篠塚恭一(しのづか・きょういち )プロフィール】

1961年、千葉市生れ。91年(株)SPI設立[代表取締役]観光を中心としたホスピタリティ人材の育成・派遣に携わる。95年に超高齢者時代のサービス人材としてトラベルヘルパーの育成をはじめ、介護旅行の「あ・える倶楽部」として全国普及に取り組む。06年、内閣府認証NPO法人日本トラベルヘルパー(外出支援専門員)協会設立[理事長]。行動に不自由のある人への外出支援ノウハウを公開し、都市高齢者と地方の健康資源を結ぶ、超高齢社会のサービス事業創造に奮闘の日々。現在は、温泉・食など地域資源の活用による認知症予防から市民後見人養成支援など福祉人材の多能工化と社会的起業家支援をおこなう。