【結城登美雄の食の歳時記#31】農家の収入はいったいどれぐらいだと思いますか(コメの話編・その2)

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(撮影・THE JOURNAL編集部)

稲刈りが終わって、いよいよ新米が食卓に届くようになります。炊きたての新米、ごはんがぴっかぴっかに光って、おかずが無くても食べられるほど美味しいですよね。みなさんが食べているお米の銘柄は何でしょうか。

やはり「ひとめぼれ」でしょうか。それとも「ササニシキ」でしょうか。
農水省の食料局の発表によると、東北の品種別作付けの31%はひとめぼれで、第2位があきたこまちで24%を占めるそうです。第3位がコシヒカリ、以下はえぬき、つがるロマンと続いています(平成17年農林水産省総合食料計画課統計より)。我が宮城県のおコメの81%はひとめぼれです。ささにしきが11%。どちらも美味しいおコメです。

しかしこのおコメも消費者にとっては嬉しいのですが、農家にとってはだんだん憂鬱の種になっているようです。おコメの生産者価格が下がる一方で、平成24年は生産者価格が一俵で約1万3千円くらいにまで下がってしまいました。このままではコメづくりを続けていけないという悲鳴のような声が聞こえてきます。

皆さんは米どころである東北の農家の稲作による収入はどれくらいだと思いますか。たしかに米価の低下が叫ばれるのだから、苦しいのだろうがそれでも毎年コメを作っているのだから案外収入は安定しているのではないの?と思っている人もいるのかもしれません。ところが、とんでもない。調べてみてびっくりしました。2006年当時、東北農政局から発表された資料によるとコメづくり農家の手取り収入は10a=反あたり3万6千932円です。10aは300坪。一般的に見かける平均的は田んぼの広さです。ここから約8俵半のコメが獲れます。重さにして500キロ。春から秋まで田んぼ仕事をしして、その結果、手取り3万6千932円。10年前は手取り7万8796円もありました。東北各地の田んぼから農家のため息が聞こえてくるような気がします。

日本の4分の1を生産する東北のコメづくり農家は36万戸ありますが、宮城は6万5千戸。1haのコメを作っても33万にしかならないこの宮城の水田農業の現実。この先、どうなっていくのでしょうか。ちょっと心配です。嬉しいはずの実りの時期ですが、片一方で重たい気持ちを抱えてる農家の方。そんなことをみなさんと一緒に考えたいなと思っています。
(959字/「コメの話編」その3に続く)

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【プロフィール】結城登美雄(ゆうき・とみお)110712_yuuki7mono.jpg
1945年、中国東北部(旧満州)生まれ。宮城教育大学、東北大学大学院非常勤講師。「地元学」の提唱で2005年芸術選奨・文部科学大臣賞受賞。著書に「地元学からの出発―この土地を生きた人びとの声に耳を傾ける」(農文協)「東北を歩く―小さな村の希望を旅する」(新宿書房)など


【これまでの記事】
■結城登美雄の食の歳時記#30<コメの話編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar368627
■結城登美雄の食の歳時記#25<川の恵み編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar311987
■結城登美雄の食の歳時記#20<中山間地域編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar238181
■結城登美雄の食の歳時記#16<農山村と若者編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar215232
■結城登美雄の食の歳時記#12<浜の暮らし編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar190685
■結城登美雄の食の歳時記#8<食育編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar164946
■結城登美雄の食の歳時記#4<麦編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar139064
結城登美雄の食の歳時記#1<暦編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar126106