いよいよ「浜の暮らし編」は最終回を迎えました。「その3」では、漁業・漁村を取り巻く厳しい現状が取り上げられました。今回は、みんなで資源を大事にしよう、浜の近くで暮らしを立てていこうという地域の動きを伝えていきます。
【結城登美雄の食の歳時記#15】伝統に学ぶ「みんなのため」の地域漁業(浜の暮らし編・最終回)
宮城の栽培漁業は、牡蠣やホヤに代表されるように非常にブランド性が高い物が多くあります。海苔も東北ではナンバーワンです。ワカメもいいものが獲れます。アワビもいい味のものがあります。ウニや銀サケ、栽培漁業を頑張っています。お米と魚の芸術品みたいな宮城の寿司。塩釜は有数の寿司の町でありますし、寿司の食文化を支えているのは栽培漁業です。
これからこれらをどうしていくのかについて、このようなことが言われています。将来にわたって持続可能な漁業をするためには、「資源管理型漁業」が大事だということです。そのためには禁漁区を設けたり、長期の間漁を休んだり、あまり小さいものは獲らないとか、漁法も乱暴なものはしないなど、大切に育て、収穫し、丁寧に食べる。獲る方だけではなく、食べる方も丁寧に食べることが求められているのかなと思います。
山元町の磯浜というところはホッキ漁で有名です。そこで僕はかつていろんなことを教えてもらいました。そこはみんなで漁獲をしてみんなで共同販売をして船の大きさや収穫量も決めて、本当は競いたい漁師さんの気持ちにブレーキをかけて、乱獲しない、ということから、だんだん資源が返ってきてみんなが潤うようになってきたということを土地の人から聞きました。
今、JAさんが推奨している集落営農というものは、将来にわたって農村が農村であるためにみんなで話し合って、「どんな農業をしていくのか」、そして「次の世代にどうつなげていくのか」、それを模索している動きだと思っています。人間は話し合うと、お互いのことをしだいに理解できていきます。
みんな、自分だけではない「みんなのために」という思いを持っているはずです。資源管理型漁業を目指す宮城の漁業と、集落営農によって農業農村をよくしていこうというJAさんの動きがどこかでつながっているなと感じた次第です。(「浜の暮らし編」おわり)
【プロフィール】結城登美雄(ゆうき・とみお)
1945年、中国東北部(旧満州)生まれ。宮城教育大学、東北大学大学院非常勤講師。「地元学」の提唱で2005年芸術選奨・文部科学大臣賞受賞。著書に「地元学からの出発―この土地を生きた人びとの声に耳を傾ける」(農文協)「東北を歩く―小さな村の希望を旅する」(新宿書房)など
【今編のキーワード・データ等】
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■水産庁 輸入 http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h23_h/trend/1/t1_2_1_3.html
【これまでの記事】
■結城登美雄の食の歳時記#12<浜の暮らし編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar190685
■結城登美雄の食の歳時記#8<食育編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar164946
■結城登美雄の食の歳時記#4<麦編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar139064
■結城登美雄の食の歳時記#1<暦編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar126106
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