東京・下北沢駅(世田谷区)から徒歩10分ほどの住宅街に、16日、福島県産の有機野菜を使った料理を提供する「コミュニティ&オーガニックカフェふくしまオルガン堂下北沢(以下、オルガン堂)」 がオープンした。
店長は神奈川県在住の女性。もともと福島県とは特別な縁のない店長がなぜ生まれたのか。震災から2年、「自分たちができること」をやり続ける女性たちと被災者による新たな一歩を取材した。
震災から2年、ようやく東京の拠点が完成
翌日に開店を控えた15日、店内をのぞいてみると、すでにカウンターに人が集まりワイワイ語り合っていた。
農家を中心にした「福島県有機農業ネットワーク(以下、ネットワーク)」が運営するカフェ兼直売所で、民間団体の助成金をうけて出店が実現した。店内では、福島県産の野菜を使った料理のほか、地ビールや日本酒などの飲み物を提供する。
赤とんぼのマークが目印のオルガン堂。直売所スペースでは、福島県内約50軒の生産者から集めた旬の新鮮野菜や、加工品、ジュースなどが並ぶ。商品は徹底的に放射能測定をして、数値を公表している
ネットワークの事務局長・齋藤登さんは「福島の農家グループが出店したのは初めてじゃないかな」「福島と東京を結ぶ交流拠点にしたい」と意気込む。
「東京に拠点をつくるのは念願でした」というのは、店長の阿部直実さん。神奈川県在住の阿部さんは、もともと福島県とは特別な縁もなかったが、2011年3月11日の東日本大震災後に齋藤さんと知り合い、それ以来、首都圏での農産物販売などの手伝いを続けている。
会社を早退して立ち寄ったというサラリーマン男性。昨年末から二本松市と交流し始めた。接客する店長の阿部直実さん(左)
「もともとボランティアについては否定的で、なんとなく『偽善者』っぽい印象をもっていました」というのは、高橋佳美さん。高橋さんは震災直後の4月下旬に、ツイッターをきっかけに斎藤さんの野菜販売を知り、それ以降、阿部さんらとともに「販売ボランティア」として週末に手伝いを始めた。
店内には2年間の軌跡がパネルで飾られている。左上が農産物販売の様子。
「震災以降、何かしたいけど何をしたらいいかわからない。そんな時に出会ったのが齋藤さんでした。手伝いたい自分の気持ちを活かせる場所と出会えて本当にありがたかった」と語る。最近は首都圏販売の機会が減っていただけに、「この店が忙しくなって手伝う機会ができればいいですね」と店への期待感を膨らませる。
開店の準備が終わり、「これからが本当の勝負ですね」と福島の地酒で乾杯する高橋さん(左)と齋藤さん(右)
「もしいなかったら、続けられなかったんじゃないかな」
今からちょうど2年前、東京電力福島第一原発の事故で福島県内の野菜は一気に販売不振に陥った。齋藤さんは東京の販売拠点を探し歩き、吉祥寺や目黒などの教会や、赤坂などさまざまな場所で販売してきた。当時は毎週末に福島県から車で運んで上京し、「震災後だけで130回」は東京に通った。そこで出会ったのが首都圏に住みながら「何かしたい」と思い、行動する人たちだった。「彼女たちのように助けてくれる人がたくさんいたことは『目からうろこ』でした。もしいなかったら、続けられなかったんじゃないかな」と齋藤さんはこの2年間を振り返る。
「ふくしまに希望の種をまく」と書かれたエプロンをつけて接客する齋藤さん
震災から2年経ち、新聞やテレビでは「被災地への関心は低くなっている」との報道もされている。たとえば、「災害ボランティアセンター」が今年2月に受け入れた福島県内へのボランティア数は約700人で、ピーク月(2011年5月)のおよそ2%、昨年の同月比で約2分の1にまで減少。確かに数字を見ればその変化は顕著だ。
一方で、オルガン堂に集まる阿部さんや高橋さんらのように、「ボランティア」としての数字には現れない、被災者との関わりを続けている人たちがいる。
福島を身近に感じてもらえる場所づくり
オルガン堂は今後、「福島と東京、農村と都市の交流拠点」を目指していく方針だという。「交流って具体的にどんなことを考えてますか」と阿部さんに聞くと、待ってましたとばかりにいくつもの企画が出てくる。
「美代子さんを呼んでピザづくりをしようよ」「そこで石川町の民泊ツアーを呼びかけよう」
阿部さんが「美代子さん」と呼ぶのは、福島県石川町で農家レストランを営む大平美代子さんだ。大平さんはオルガン堂の開店準備のために、福島から応援に駆けつけていた。
「農園cafe やいこばあちゃん」を経営する大平美代子さん
大平さんは昨夏に阿部さんが友人7人を連れて遊びに来たことを思い出しながら、「みんなと料理して宴会して、本当に楽しかったです」と笑顔で話す。「あの楽しさがきっかけになって、みんなが気軽に来てもらえるような農家民宿を始める準備をしているんですよ」という。
交流が新しい動きへとつながっていく。阿部さんは今後のオルガン堂について、「農家さんだけでなく、さまざまな視点から、福島をより身近に感じてもらえるようにしていきたいです」と抱負を語った。
販売ボランティアでつながった女性3人組に囲まれる齊藤登さん(左から鈴木裕子さん、高橋佳美さん、齋藤さん、阿部さん)
(取材・撮影:THE JOURNAL@ニコニコ支局編集部 上垣喜寛)
店長は神奈川県在住の女性。もともと福島県とは特別な縁のない店長がなぜ生まれたのか。震災から2年、「自分たちができること」をやり続ける女性たちと被災者による新たな一歩を取材した。
震災から2年、ようやく東京の拠点が完成
翌日に開店を控えた15日、店内をのぞいてみると、すでにカウンターに人が集まりワイワイ語り合っていた。
農家を中心にした「福島県有機農業ネットワーク(以下、ネットワーク)」が運営するカフェ兼直売所で、民間団体の助成金をうけて出店が実現した。店内では、福島県産の野菜を使った料理のほか、地ビールや日本酒などの飲み物を提供する。
赤とんぼのマークが目印のオルガン堂。直売所スペースでは、福島県内約50軒の生産者から集めた旬の新鮮野菜や、加工品、ジュースなどが並ぶ。商品は徹底的に放射能測定をして、数値を公表している
ネットワークの事務局長・齋藤登さんは「福島の農家グループが出店したのは初めてじゃないかな」「福島と東京を結ぶ交流拠点にしたい」と意気込む。
「東京に拠点をつくるのは念願でした」というのは、店長の阿部直実さん。神奈川県在住の阿部さんは、もともと福島県とは特別な縁もなかったが、2011年3月11日の東日本大震災後に齋藤さんと知り合い、それ以来、首都圏での農産物販売などの手伝いを続けている。
会社を早退して立ち寄ったというサラリーマン男性。昨年末から二本松市と交流し始めた。接客する店長の阿部直実さん(左)
「もともとボランティアについては否定的で、なんとなく『偽善者』っぽい印象をもっていました」というのは、高橋佳美さん。高橋さんは震災直後の4月下旬に、ツイッターをきっかけに斎藤さんの野菜販売を知り、それ以降、阿部さんらとともに「販売ボランティア」として週末に手伝いを始めた。
店内には2年間の軌跡がパネルで飾られている。左上が農産物販売の様子。
「震災以降、何かしたいけど何をしたらいいかわからない。そんな時に出会ったのが齋藤さんでした。手伝いたい自分の気持ちを活かせる場所と出会えて本当にありがたかった」と語る。最近は首都圏販売の機会が減っていただけに、「この店が忙しくなって手伝う機会ができればいいですね」と店への期待感を膨らませる。
開店の準備が終わり、「これからが本当の勝負ですね」と福島の地酒で乾杯する高橋さん(左)と齋藤さん(右)
「もしいなかったら、続けられなかったんじゃないかな」
今からちょうど2年前、東京電力福島第一原発の事故で福島県内の野菜は一気に販売不振に陥った。齋藤さんは東京の販売拠点を探し歩き、吉祥寺や目黒などの教会や、赤坂などさまざまな場所で販売してきた。当時は毎週末に福島県から車で運んで上京し、「震災後だけで130回」は東京に通った。そこで出会ったのが首都圏に住みながら「何かしたい」と思い、行動する人たちだった。「彼女たちのように助けてくれる人がたくさんいたことは『目からうろこ』でした。もしいなかったら、続けられなかったんじゃないかな」と齋藤さんはこの2年間を振り返る。
「ふくしまに希望の種をまく」と書かれたエプロンをつけて接客する齋藤さん
震災から2年経ち、新聞やテレビでは「被災地への関心は低くなっている」との報道もされている。たとえば、「災害ボランティアセンター」が今年2月に受け入れた福島県内へのボランティア数は約700人で、ピーク月(2011年5月)のおよそ2%、昨年の同月比で約2分の1にまで減少。確かに数字を見ればその変化は顕著だ。
一方で、オルガン堂に集まる阿部さんや高橋さんらのように、「ボランティア」としての数字には現れない、被災者との関わりを続けている人たちがいる。
福島を身近に感じてもらえる場所づくり
オルガン堂は今後、「福島と東京、農村と都市の交流拠点」を目指していく方針だという。「交流って具体的にどんなことを考えてますか」と阿部さんに聞くと、待ってましたとばかりにいくつもの企画が出てくる。
「美代子さんを呼んでピザづくりをしようよ」「そこで石川町の民泊ツアーを呼びかけよう」
阿部さんが「美代子さん」と呼ぶのは、福島県石川町で農家レストランを営む大平美代子さんだ。大平さんはオルガン堂の開店準備のために、福島から応援に駆けつけていた。
「農園cafe やいこばあちゃん」を経営する大平美代子さん
大平さんは昨夏に阿部さんが友人7人を連れて遊びに来たことを思い出しながら、「みんなと料理して宴会して、本当に楽しかったです」と笑顔で話す。「あの楽しさがきっかけになって、みんなが気軽に来てもらえるような農家民宿を始める準備をしているんですよ」という。
交流が新しい動きへとつながっていく。阿部さんは今後のオルガン堂について、「農家さんだけでなく、さまざまな視点から、福島をより身近に感じてもらえるようにしていきたいです」と抱負を語った。
販売ボランティアでつながった女性3人組に囲まれる齊藤登さん(左から鈴木裕子さん、高橋佳美さん、齋藤さん、阿部さん)
(取材・撮影:THE JOURNAL@ニコニコ支局編集部 上垣喜寛)
ふくしまオルガン堂下北沢 店舗情報「ふくしまオルガン堂下北沢」
ホームページ:http://www.farm-n.jp/yuuki/organ/
住所:東京都世田谷区代沢4丁目44―2(リンク:HPの店舗情報)
アクセス:京王井の頭線「下北沢駅」南口から徒歩12分
営業時間:正午~午後6時(5人以上予約の場合、午後9時まで)
休業日:月・火
予約・問い合わせ:03-3411-7205
<カフェスペース>
座席数 :18
食事:福島県の有機農業者たちが農薬や化学肥料を原則使わず育て、放射能セシウムが不検出だった野菜や米を使った料理を提供する。ふくしまの郷土食が入った「ふくしま定食」(800円、前日までに要予約)。
飲物:地酒、地ビール、有機人参ジュース、桑の葉茶など。
※すべての食材は放射能測定を行い、その結果を表示する(販売品も同様)。
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THE JOURNAL編集部
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地酒、何があるんだろう。行ってみたいな。