政権交代によって弱者支援2法案の成立が危ぶまれているという。
東京新聞によると民主党政権なら成立が見込まれた法案として、「障害者差別禁止法案」「トンネルじん肺患者の救済法案」の紹介が2月5日の記事にある。

日本アビリティーズ協会の伊東弘泰さんが「なぜ、今、障害者差別禁止法が必要なのか」というテーマでレクチャーするので参加した。近いところにいる気もするが、私はよくわからない分野だ。伊東さんは、自ら障がいを持つ経営者として企業、NGOを率いてきた事業家であり、長く障害者問題について活動を続けてきた運動家でもある。現在は内閣府障害者政策委員会差別禁止法部会副部会長。

障害者差別禁止法の狙いは、「差別防止」と「相談体制」をつくることにあるという。私のような素人には、差別禁止法という名前なら、アメリカのADA(障がいを持つアメリカ人法)のように、障がいを持つ人が公共施設を利用できない、サービスを受けられないのは差別になるので、そうならないように規定したり、違反したら罰則を与えるようなものをイメージしていたが、日本の差別禁止法はそんなに厳しい内容を求めるものではなかった。

差別がないように社会に知らしめ予防することと、何かあった時にはまず相談できる体制をつくろうものだそうだ。たとえば、不条理なこと裁判を起こそうとしても障害が理由で受け付けてもらえなかったりすることがあるのだという。

これでは事の正否の前に、話し合いのテーブルに着くことさえ許されないということがおかしいのではないかという主張で、これは私もおかしいと思う。

細かく言えば、まだまだあるが、こうした「合理的配慮」を含め差別と定義した意見書を内閣府は昨年9月にまとめていたが、今回の政権交代で、経済発展を優先することから、企業に何らかの負担を求める内容として危惧されると恐れた自民内から異論が上がり、じん肺患者救済法案とともに棚上げとなってしまったという。

これまでに長い議論が重ねられ、民主党政権なら成立したはずの2法案が産業界寄りの姿勢で放置されてしまうとの記事が、伊東さんの説明で理解できたように思う。伊東さんは、本人はもとより、障がいを持つ人の側についている人たちも意識を自立させようと話したのが心に残った。

50becb7d574f97f9443233109abe4b1f8a0831b1【篠塚恭一(しのづか・きょういち )プロフィール】

1961年、千葉市生れ。91年(株)SPI設立[代表取締役]観光を中心としたホスピタリティ人材の育成・派遣に携わる。95年に超高齢者時代のサービス人材としてトラベルヘルパーの育成をはじめ、介護旅行の「あ・える倶楽部」として全国普及に取り組む。06年、内閣府認証NPO法人日本トラベルヘルパー(外出支援専門員)協会設立[理事長]。行動に不自由のある人への外出支援ノウハウを公開し、都市高齢者と地方の健康資源を結ぶ、超高齢社会のサービス事業創造に奮闘の日々。現在は、温泉・食など地域資源の活用による認知症予防から市民後見人養成支援など福祉人材の多能工化と社会的起業家支援をおこなう。