10月2日に東京電力福島第二原子力発電所の構内プレスツアーが行われる。
今回は4号機の燃料棒を取り出す現場を公開するとのことで、記者も取材を申し込んだ。
東京電力が今回のプレスツアーを発表したのは24日、エントリー締め切りは27日の午後5時だった。
本日午後5時ごろに東京電力より連絡があり、記者(中島)の構内取材は認められないとのことだった。
今回、構内プレスツアーに参加するための「条件」は2つあったらしい。
「らしい」というのは、その「条件」を、プレスツアー参加を認めないと東京電力から通告されるときにはじめて電話で聞いたからだ。
2つの「条件」は、「東京電力の記者会見に参加したことがあること」「雑協、インターネット報道協会等の媒体に、署名記事を書いたことがあること」の2点。
記者がプレスツアー参加を断られたのは、記者会見の参加を東京電力が確認できなかったという理由だそうだ。
実は、5月26日に行われた東京電力福島第一原子力発電所構内のプレスツアーに参加する際にもフリー記者にはこの2つの条件と同じ条件が課せられていた。
ちなみに記者は2012年3月まで週刊新潮編集部に在籍しており、在籍時は福島第一原発に関する取材を行い、記事も複数執筆した。ところが週刊新潮の場合は記者の署名原稿を掲載しない。そのため、週刊新潮の所属を外れて個人として取材を始めてすぐに行われた、福島第一原発のプレスツアーのエントリー時には、署名記事を掲載してくれる場所がまだなく「雑協・もしくはインターネット報道協会加盟の媒体で署名原稿を掲載」との基準も満たすことができなかった。
このように、取材を始めたばかりの記者や、フリーになったばかりの記者は、2つの条件のいずれかに引っかかる人もなかにはいるのではないだろうか。
取材を新たに始めたいという記者に対して門戸を開かないという意味ではかなり恣意的なローカルルールを「後出し」してきたような印象を受けた。
理由についてさらに詳しく東京電力広報に問い合わせをした。
広報の大島さんとのやり取りの概要を以下に掲載する(録音に基いて、言い回し等を読みやすく変更を加えた)。
――会見に参加していないと、構内プレスツアーに参加できない理由はなぜですか?
「今回は、もともと県政記者クラブ向けの取材ツアーとして計画したものです。つまり福島県の方向けということですが、フリーの方にも取材をしていただこうということで申し込みを受け付けました。
今回は参加者が多数だったため、制限をかけさせていただきました。
構内に入られた記者の方全員にホールボディカウンターを受けていただくためには、時間がどうしてもかかってしまうためのやむを得ない判断です。
今回ご遠慮いただいたのは2つの基準のいずれかもしくはどちらかを満たしていない記者の方です。
ひとつは、会見に参加していない、もしくは参加をこちら(東京電力)で確認できない方、もうひとつは福島第一原発もしくは第二原発に関する記事を、雑誌協会かインターネット報道協会加盟の媒体に書いていない方です。
中島様の場合は、会見に参加したということがこちらで確認できなかったため今回はお断りさせていただきました」
――その2つの条件は、申込時、前もって示されていないですよね?
「はい」
――それはなぜですか?
「今回、フリーの方の参加が多かったため、何らかの形では制限をかけさせて頂く必要があったためです」
――今回から取材を始めようと思った人がいたとして、そういう人には門戸を開かないということですか?
「できましたらみなさんをご案内したいのですが、どうしても対応出来るキャパシティを超えてしまったため、制限をかけさせていただきました」
――福島県向けの取材とおっしゃいましたが、福島県のフリー記者が東京電力本店の会見に出るのはかなりハードルが高いですよね。交通費もかかりますし。そういう人が仮にいたとして、今回の構内取材のエントリーをしたとしても、考慮されないんですか?
「はい、この人は取材をしても良くて、この人はだめ、という恣意的な判断がないように、同じ条件で検討させていただいています」
――でも、原発事故って国民全員が知りたければ知ることができたほうがいいはずの事故ですよね。そもそもそういうローカルルールにするのはおかしいと思いませんか?
「誰彼かまわず入っていただくというわけにはいかないので。原子力発電所という場所の特性上、安全に中を見ていただくためにはある程度制限をかけさせて頂く必要があると思います」
――大島さんはご自分でおっしゃってることは筋が通らないと思いませんか? 後出しじゃんけんみたいに条件を出してきて、「この人は取材OK、この人はダメ」っていうのは理由としておかしいと思わないですか?
「おかしいと思っていたらこういうお話はいたしません」
――と言うことは個人の感想で物をおっしゃっている?
「いえ、個人の立場としての発言ではなく東京電力の見解をお伝えしています」
やり取りの途中、「かねてから関心を持ってきちんと取材をしていると判断できる記者の方を優先させていただくことになった」という大島さんの言葉を聞いた時に少し言葉が荒くなってしまった。
――それって、わたしが適当な取材をしていると御社が判断したということですか? わたしが悪いみたいな言い方じゃないですか?
なぜそこまで言われないといけないんですか。
「中島様が取材をしていないとか、ダメだ、とかそういうことを言っているのではありません」
――今回、取材を申し込んだのは?
「35人です」
――うち、取材を断ったのは何人ですか?
「3人です」
――32人も35人もそう変わらないんじゃないですか?
「ホールボディカウンターの時間がかかるので」
ちなみに前回福島第一原発プレスツアーに参加した記者によると、ホールボディーカウンターで内部被曝を計測するためにかかる時間は、1〜2分程度であり、その場で異常なしと伝えられたそうだ。詳細な数値を要求すると、調査結果は後日通知されたという。
――御社が取材者を排除するためのローカルルールを設定することそのものには私は賛成していませんが、前もって条件を示していただければ、あらかじめ対策を立てることができたので、今後はあらかじめ条件を示してもらいたいです。
「検討させて頂きます」
――検討の結果はいつわかるんでしょうか?
「今後、構内取材があるかどうかまだ未定ですが、構内取材が計画された時には改めて検討したいと思っております」
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