今回は安田峰俊さんのブログ『大陸浪人のススメ ~迷宮旅社別館~』よりご寄稿いただきました。
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■駐在員奥様「ヤクザ風の暴力組織が破壊活動を……」 現地からの反日デモ・レポート 前編
さて、いきなりのんびりした話をするが、中国の江南地方というのは、まず気候がよいし、人間も比較的垢抜けているし、古い家屋は白壁に黒瓦できれいだし、庭園や田園地帯の美しさも素晴らしいし、酒も食い物もうまいし美人も多いしで、なかなか素敵な場所だ。
日本人にとっての「よい感じの中国」のイメージに近いものを、その気になって探せばいちばん多く見られる地域であるかもしれない。
(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
http://getnews.jp/img/archives/8b1ebe8df98563401134fa2dc6ce50e7.jpg
で、そんな江南の中心地・蘇州 *1 の街は、もともと清代末期から紡績業などが盛んで、地域に近代工業が発展する素地が根付いている土地でもあった。
*1 : 蘇州市 『wikipedia』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%98%87%E5%B7%9E%E5%B8%82
ゆえに、これらの地域は80年代の改革開放政策の初期から、日本企業の進出が盛んであり、現在でも大勢の日本人駐在員やその家族がいる。
……だが、そんな街でもやっぱり起こる反日デモ。
先週末15日のデモは破壊活動を伴う、なかなか凄いものだったらしい。
いつまで消されずに残ってるのかはわからないが、例えば『中華網論壇』の「中華拍客:實拍9.15蘇州萬人抗日大遊行」*2 というスレに現場の写真がいろいろとアップされていた。
*2 :中華拍客:實拍9.15蘇州萬人抗日大遊行 『中華網論壇』
http://club.china.com/data/thread/1011/2746/60/26/7_1.html
どうやら、蘇州市内、蘇州新区の商業街で起きたもののようだ。以下に写真を転載してみよう。
(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
http://getnews.jp/img/archives/e4b8ade88fafe68b8de5aea2efbc9ae5afa6e68b8d915e89887e5b79ee890ace4babae68a97e697a5e5a4a7e9818ae8a18c1.jpg
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……ふむ。
平和堂が焼き討ちされた湖南省長沙市ほどではないにせよ、やはりずいぶんひどいことがわかる。
この蘇州でも、やがてパナソニックの工場にデモ隊が押しかけ、設備に被害が出て数日の休業を余儀なくされる事態になった。
(※ちなみに、日本のテレビで放送されている有名な「焼き討ち」の光景は、山東省青島でのものである)
だが、現地において、この事件はどういったものだったのか。
うちのブログの読者で、蘇州の日系企業駐在員の奥様から事情を報告するメールが来たため、本人了解の上で以下に紹介してみたい。
先週末、日本人駐在員たちには家族全員の外出禁止令が出ており、この奥様はスーパーに買い物に行けず暇であった。
だが、もともと好奇心が強いたちである彼女は、禁足令が解けた月曜になって、街に出て現地の日本人や中国人からいろいろ情報を集めたり、破壊現場を見て歩いたりしたそうなのである。
では、ご覧ください。
(※個人特定を避けるため、文言を多少はいじってある。また、(カッコ)内は内容を補足するために当方で加えた部分である。)
<ある奥様の報告>
――――――――――――――――――――気になって、月曜に商業街みてきました^^;
どの店にも毛沢東が貼られて、正直、文革を連想させるうすら寒い感じがします。
あと、商業街には、蘇州弁とは別の強いナマリのある奴らが暴れていたそうです。
近所の●●社の駐在員△△さんは、暴動直後に写真撮影に行ったそうですが
「先頭集団が印をつけた店だけを襲撃していたらしい」
「両脇が破壊されてても、印のない店はまったくの無傷だった」
「毛沢東の写真は、破壊組が置いて行った」
「地元の子が、バスで連れて来られた連中が暴れたと言ってる」
という話でした。
事実、私が見て歩いたところでも(日系資本ではない店舗は)銀行も貴金属店も煙草屋、CDショップ、公衆トイレまで無傷です。
以下、自転車で流し見て来た観察ですが……
・中国人経営者の店ながら、日本人を意識したオーダー服屋はショウウィンドウ1枚割られて略奪なし。
・中国人経営の日本料理メニューのある飲食店は1F壊滅。
・中国料理店の日本語ネオン文字や看板は破壊。店内は無傷。
・唯一の日本人経営の「むさし野」は執拗に襲われ、3階まで入られて徹底的に破壊。
という感じです。
あと、私的な見解および確認不能な情報ばかりですが^^;
<商業街>
・印と日本語以外を破壊すると、同じグループの人に制止されていた。
・デモ隊の暴れ方があまりに激しく、蘇州人唖然。混ざる事も出来ず、遠巻きにぞろぞろついて回る。
・デモ隊は商業街の南から入り、北に抜けたが、南のT字路には国慶節後に移転開始となる日本語学校の新校舎があるが無傷。
・南から順に破壊が始まるが、中央エリアに位置する「むさし野」で暴動最高潮となった後も決められたように破壊の程度に差があり、(破壊停止を指示するタイミングなど)明らかに選別している。
<行動面>
・商業街から現日本人学校に続く道沿いの日本語ネオンや日系スーパー店は目もくれず。
・デモ隊は、商業街を破壊後、歩いて現日本人学校前に移動。シュプレヒコールなし。暫く門の前居たが土曜で無人だったためか、「日本人学校」の日本の文字だけ消すように落書き。かくの日系百貨店泉屋に向かい、シャッターを下ろしていたにもかかわらず襲撃・破壊。
・破壊活動は一部の「暴徒」が行ったが、略奪いっさいなし。悪乗りした蘇州人が一部しっけい程度。
・警察は通報を受けて、別のデモ地の勧善街から移動してきた。(日本人学校に入っていた当日のデモルート予告は中心街の観光地「勧善街」)
・バスから降りてきたグループだけが暴れていた。<人間像>
・襲撃後~翌日。同じく目つきの鋭い男性が多数徘徊。こっちはたぶん私服警官。挨拶すると微笑む。
・襲撃隊はジモピーが武漢ナマリ?重慶ナマリ?とイロイロ言っていたが、蘇州人とは明らかに違う。
・襲撃隊は、目つきが異様でちょっと薬で飛んでそうな風貌のヤクザ。明らかに組織。でも軍的ではない。
・襲撃時、蘇州の人は異常を感じていて、取り巻く野次馬のようになって止めず傍観。煽るでもなく直接破壊にも手は出していないが、日本人を擁護すれば、自分たちが狙われる知れないので、関わらないようにしていた。騒動がデモと判り、黙って後に続く。
・翌日曜日も「動員されたやから」が残って獅山路付近を徘徊。しかし翌日から姿を見ず。
<その他>
・月曜日は蘇州人が「動員された人」と言っていたヤクザの姿は無くなっていたが蘇州新区は人の姿も少なく、明らかに異様な雰囲気。でも翌火曜日は早朝から街の雰囲気が普段通りに戻る。理由を尋ねると「動員された人」が帰ったためらしい。
それでホッとしたとの事。いやね、独身時代なら、カメラ抱えて叩き壊しの現場に飛び込めたんですけど、流石に旦那のビザで帯同している状況からするとムチャ出来ない(;ω;)
チキンでスマソ。
私が出せる情報って、こんな程度なのに、メールしちゃってすみませーん><
――――――――――――――――――――
奥様、お疲れ様。
蘇州において、デモはどうやら勧善街と商業街の少なくとも2ヶ所でおこなわれ、勧善街がいわゆる狭義の官製デモくさいというか、お行儀よく実施されたようである反面、商業街ではヤクザの外人部隊みたいな連中がバスから組織的にバラバラと降りてきて展開。日系店舗をピンポイント襲撃し、毛沢東の写真を置いて去っていったようなのだ。
地元民はそれを見てポカーン、という感じだったらしい。
実はこの蘇州のでも現場の一部と思しき動画が、youtubeに上がっている(破壊行為のシーンはなし)。
映像を確認すると、隊列の最初のほうで、スローガン叫びながら歩いてるガタイのイイ野郎どもと、後にぞろぞろついてくる、チャリのガキとかそこらのおばはんでは明らかにテンションや言葉の感じが異なるため、もしかしたら前者が、破壊行為上等の「外人部隊」、後者が「ポカーン」側の市民なのかもしれない。
『youtube』より
https://www.youtube.com/watch?v=QD0ID11gq4w&feature=player_embedded
一方、例えば同じ日に上海で反日デモを見聞した複数の日本人からも報告をもらっているのだけれど、こちらは総じてユルいもので、
・緊張感ゼロで、ダレていた。・デモ隊の休憩中に、なんか食ってる彼らに「俺、日本人なんだけど」と話しかけにいったところ、「おー、日本人か」「まあ、これは国のことだから個人レベルだと関係ないわな」と、お菓子をくれたりした。
・現地の上海人は「いや、政府がやってることに興味ねえっしょw」みたいな冷めたやつが多かった。
とまあ、そんな調子だったようだ。
さすが国際都市上海というか、比較的お上品かつ無気力にデモが組織されたらしい。
同じ反日デモでも、地域によってかなり熱量が違う(というか、同じ蘇州でも場所によって違う)ので、なかなかいっしょくたにはできそうにない。
多分に推測を交じえて語ると、今回(特に今月15~16日)の反日デモはおそらく、「官製」といっても共産党のいろんな派閥や軍や警察や、とにかくいろんな勢力が絡んでいると思われ、そのケツ持ちの性質や、現場の責任者の性格によってカラーが違ったりもするのかもしれない。
また、これらは市の一部で荒れ狂っている反面、市内の他地域では一切無関係に日常生活が営まれていたりもする。
ちょうど、官邸前で反原発の人が騒いでいても、都民の圧倒的多数はそんなのに興味を持たず(どころか、デモの存在を知りもせず)に暮らしているのと
ある意味で似た感じでもあるだろう。
※ただし、この記事のコメ欄にもあるように現地社会がピリピリしているのは事実なので、現地の中国人を「反日=動員=特別な人」「非反日=非動員=一般市民」と過度に二極化して理解するのは危険だが。
まさに群盲象をなでるという感じである。
ほかに、中国人からの非常に興味深い報告もある(後半に続く)。
執筆: この記事は安田峰俊さんのブログ『大陸浪人のススメ ~迷宮旅社別館~』からご寄稿いただきました。
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