今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
■通貨安競争という幻
日本が円安誘導すると、世界中の国が自国通貨安誘導を行い、果てしない競争になる…そういう主張をする人々がいる。これって本当に懸念すべきことだろうか?
まずひとつは、他の国がやってもあまりそういう懸念は出ない。EUもアメリカもリーマンショック以来、通貨供給量を増やしているのに。それゆえ円高になってるのだが。なぜか日本がやると日本のマスコミは通貨安競争が起こると批判する。
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また通貨安競争というのはそれぞれの国内にインフレをもたらす。国内的にインフレに耐えられる範囲でしか通貨安競争は起きないはず。
つまり通貨安に誘導したくても国内がとてつもないインフレになってしまったら、それ以上は通貨安に誘導できない。無限に各国が自国通貨の供給競争をするわけではない。ある時点で止まるはず。
そして経済規模の大きな国で一番デフレに悩んでいるのは日本だから、おそらく日本が一番現時点から通貨安誘導をできる。勝てる…という表現がいいかはともかく、日本が有利な戦いに持ち込んで悪い理由がない。
どうも日本人は自分たちが有利に戦える都合のいい土俵で戦うことを、後ろめたく感じる傾向がある。有利な戦いではなく、わざわざ不利な土俵で戦うことを美徳だと思っている。困ったものだ。
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そもそもEUやアメリカなど主要国は低金利&デフレ傾向なのだから、通貨安競争によりインフレになるなら、それはむしろ良いことだろう。各国の通貨安競争は、ゼロ金利でコントロール不可能になった21世紀の経済の、新たなコントロール方法となるかもしれない。経済の仕組みというのはときとして大きく変わるものだ。金本位制の廃止とか。
先進国が通貨安競争をしたら、途上国が困るのではないか?という懸念については、現在先進国が軒並み低金利&デフレに見舞われているのは、中国経済の発展と中国政府が自国通貨(元)の切り上げをしないから。中国は実質的に固定相場で、自国の経済のために自国通貨安にしている。本来元はもっと通貨高になってしかるべき。
そのため相対的に先進国がデフレ圧力に見舞われているのだから、先進国がインフレになれば、中国は為替相場を現状のレベルに維持するには、さらに元を大量供給しなければならず、結果的に中国国内がインフレになる。現状でも中国はインフレ傾向だから、中国はこの選択は安易にできないはず。つまり適正な為替相場になる(はず)。それが中国の変動相場への移行のきっかけになるならなお良い。
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中国以外の途上国については大勢に影響ないのではなかろうか。現状がそうであるようにこれからもドルとゆるやかな連動をしていくはず。良くも悪くも中国のように無理な相場を維持する力もないわけだから。
通貨安競争というとなんとなく不毛なイメージの禁じ手のように言われるが、低金利(ゼロ金利)時代のあらたな金融政策の手段になるかもしれない。日本に限らず、ね。
繰り返しになるが世界経済のあり方は、しばしばダイナミックに変わるということ。金本位制からの離脱だって、当時の常識から見れば暴挙以外の何者でもなかったはず。先進国が軒並み低金利&デフレに悩まされる事態に陥っているのは、世界経済の形が再び大きく変わらざるをえない時期に来ていると考えるべきだろう。
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前に進むことが大事。前人未到な領域ではあるが、進歩というのはそういうものだ。旧ソ連の大改革を行ったゴルバチョフは、着陸できる場所があるかわからない状態で飛び立った飛行機と形容された。ソ連は崩壊してしまったが、それでもそれによって世界は一歩前に進むことができた。EUの結成もまさに未知の大海原に漕ぎ出したボートのようなものだ。中国では天安門事件もあった。
1990年代は世界は激動の時代だった。日本だけが(アメリカもだが)そういう変化の蚊帳の外にあった。日本もそういう未知の領域へ踏み出さざるをえない時期なのだ。安全や成功が保証された未来などない。進みながら危機を乗り越える方法を模索するしかないのだ。
大胆な改革、根本的な問題解決というのは、リスクが伴うものだ。そういうことを先送りにしてきた日本を日頃批判している人たちが、いざそういう方向に日本が踏み出そうとすると、「○○になったらどうするんだ」「うまくいく保証があるのか」と言い出す。日本の先送り体質の元凶は自分たちだろうに。
EUの結成とかゴルバチョフ改革とか、やらない方が面倒でなかったし、リスクもなかったかもしれない。そもそもレーニンの共産主義国家の建設だってハイリスクだった。明治維新だってうまくいくかわからなかった(結果的に軍国主義に向かってしまったし)。フランス革命だってロベスピエールの恐怖政治や王政復古など大変な混乱を招いた。
大きな改革は必ずしも良いことばかりをもたらすわけではない。しかしそれをはじめなければ次のステップに進めなかった。問題に前向きに取り組むということは、相当なリスクを伴うこと。当たり前。リスクがないならみんなとっくにやっている。リスクに耐えることが前向きな問題解決なのだ。日頃日本政府や企業を「問題先送り」と批判している人たちは、まさかノーリスクで問題解決ができる魔法のようなものを想像しているんですかね。
●追記
なんかレスが。
「根本病とリフレ」 2013年01月19日 『vgobpaの日記』
http://d.hatena.ne.jp/vgobpa/20130119/1358545707
どの点が気になったのかと興味津々で読んだのだが、「改革にはリスクがつきもの」という部分らしい。う~む、こんな一般論的な部分にこだわられても(苦笑)。
ってか、要するに何かを根本的に変えようとかいう人は、2.26事件やヒトラーのような方向に世の中を導くから、けしからんという思想らしい。各論についてもなんかごちゃごちゃ書いてるけど、全然掘り下げてないんだよね。浅いというか。くだらなすぎて、途中から読む気がなくなった。
そもそも2.26事件を否定的に捉えているのが気に入らないし。というかすべての人がそうとしか捉えないと思い込んでいるのが気に入らない。そんなに2.26事件が心配なら、各論こそ力を入れて正当性を検証すべきだと思うのだが、この人にはそういう能力がないので、不毛な総論に頼ってるのだろう。
なにか気に入らに→戦争に結びつける→戦争は悪いことだ→だから最初の事柄もわるいことだ、という非常に安直な論法を使っていて、その恥ずかしさの自覚もない。(ちなみに気に入らないことを馬鹿の一つ覚えのように「税金の無駄遣い」に結びつけるパターンもある)。
だいたいにおいて俺のこのエントリも前半部分が主で、後半は個人的意見であり付け足しみたいなもの。主観なんだから議論をしたところで水掛け論にしかならない。その部分だけ批判するというのが、まあなんというか、具体的な議論ができない人なんだろうなぁ、と。
うっかり他人の寝言に耳を傾けて時間を無駄にしてしまったようだ。
執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
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