去る8月28日、国内では69年ぶりにデング熱に罹患する患者が発生した。
その後、ヒトスジシマカによってデングウイルスを媒介されたと推測される罹患者は、増加の一途をたどり、9月5日には59人にまで罹患者が増加した。
このうち、代々木公園の近隣に勤務するNHK職員2名が含まれており、感染の拡大が懸念されている。
東京都は、これらの事態を受けて、代々木公園でデングウイルスを保有してるヒトスジシマカについて調査を行った。
代々木公園での採集箇所は10カ所。合計276匹のヒトスジシマカを採集したが、公園内の10カ所のエリアのうち、4カ所からデングウイルスを保有したヒトスジシマカが見つかった。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2014/09/20o94700.htm
ところで、デングウイルスに感染した罹患者の増加についてだが、ある一つの疑問が浮上する。
「樹洞の貯まり水が本来の発生場所であるヤブカ類は、イエカと違い移動分散能力が低く、ヒトスジシマカでせいぜい100メートル程度なんですよ」
国立感染症研究所に関与する生物学者は、前述の疑問を呈する。
デングウイルスを媒介するヒトスジシマカが、羽化した場所からさほど遠い距離を移動しないことを考えると、デングウイルスに感染した人の血液を吸った後、他の人の血を吸う際に、新たにデングウイルスを保有したこととなる。
ヒトスジシマカは、羽化してからの寿命は30~40日程度とされている。その間に、産卵の前に人の血を吸うとされているが、羽化したヒトスジシマカが人の血を吸う回数は、せいぜい3~4回である。
その生態から考えれば、羽化したヒトスジシマカが、デングウイルスに感染している人間の血を吸える環境が無ければ、ここまでデング熱は広がらないのではないか。
つまり、今回の代々木公園でのデング熱の感染は、公園内にデングウイルスに感染した人が常に遊びにくる状態でなければ、ヒトスジシマカがデングウイルスを保有しにくいということになる。
もちろん、デングウイルスが、ヒトスジシマカの卵に伝達されるという疑いはあるようだ。だが、現時点では医療者の意見は分かれている。
そうなると、成虫になったヒトスジシマカが、デングウイルスを媒介した可能性についてのみ絞ったほうが、今回の感染拡大については実像が見えやすくなるはずだ。
今回の感染者拡大については、ここ1~2ヶ月くらいの間に、タイミングよくデングウイルスに罹患している人が代々木公園を訪ねたため感染拡大が起きたか、不顕性患者(ウイルスに感染したが症状が出ない患者)が、代々木公園に日常的に訪れていて、感染拡大が発生しているということであれば説明はつきやすいが、現実にそのようなことが起こるかと言われれば少々不自然である。
代々木公園の近隣にあるNHKの職員が感染したことを考えると、不顕性デング熱罹患者が毎日出入りするオフィスのごく近くで、ヒトスジイエカが発生する環境があり、罹患が増えている可能性は考えられないだろうか。羽化した場所からさほど遠くへ移動せず増えるヒトスジシマカの生態を考えると、もしそのような常態があるとしたら、感染拡大につながっている可能性は想像できるように思える。
まずは、代々木公園のヒトスジシマカの駆除を急ぐべきだが、不顕性デングウイルス感染者とヒトスジシマカの接触が増えやすい下水道、オフィスビル周辺の蚊が発生しやすい場所、地下街などについて検証や防疫措置を行うべきかもしれない。
※画像は『足成』より
http://www.ashinari.com/2011/01/19-344825.php
※この記事はガジェ通ウェブライターの「松沢直樹」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
■関連記事
デング熱、海外渡航での感染は年間112例 爆発的な感染拡大の可能性は低い?
ついに厚生労働省が本腰を 国税庁データ利用でブラック企業の徹底取り締まり開始
コメント
コメントを書く