今回はココロ社さんのブログ『ほのぼの四次元ブログ』からご寄稿いただきました。
※すべての画像が表示されない場合は、http://getnews.jp/archives/285272をごらんください。
■企業もブラック風味がすぎると顧客が引いてしまう
(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
http://getnews.jp/img/archives/2145.jpg
いま実施中のマクドナルドの「60秒以内に提供できなかったらハンバーガー無料券プレゼント」のキャンペーンがインターネットのヘビーユーザーの間で不評です。頭で考えると、「早く提供できると回転率が上がって売り上げが増えるし、お客さんも待たずにすむし、もし待つことになってもお客さんは得をすることになるし、みんな得をする」企画のように思えますが、どうも反応がよくない。日本全体としてはどうかというと、必ずしも評判が悪いとは言えないかもと思います。満足しているお客さんは、あえて普段使っているチェーン店について「よかった」などと口にしないからで、インターネット=巨大なお客様相談センターだからです。とはいえ、企業がお客様相談センターで承ったご要望を無視すべきでないのと同様、ネットでの声も一聴に値すると思うので、今回はその話をさせていただきます。
今回の件に関してまずひとつ意外だったのは、インターネットのヘビーユーザーは忘れっぽいということです。2ちゃんねるのスレッドで、それなりに人がいるだろうに、10年前に同じキャンペーンがあったことを指摘する人がほとんどいませんでした。マクドナルドがカレーを出してて山田邦子がCMに出てたよねー山田邦子って昔『幸せにしてよ』という番組をしていたが今だったらフェミニストにしばかれるようなタイトルやな、とか、マックチャオとかいうチャーハンもあったなぁとか、そこまで思い出すのは難しいにしても、10年前にマクドナルドを利用していた人の方が多数派だっただろうに不思議な話です。忘れていたにしても、過去のキャンペーンについてちょっと検索すれば出てくるはずですが、健忘症を装うことで文句を言う権利を得られるのですから思い出すだけ損なのかもしれません。
10年前のキャンペーンも当然ながらインターネットでは叩かれていました。今回実施したということは、当時もまた評判は悪くなかったんだろうなと思いますが。叩かれているといっても、いまとはちょっと論調が異なります。わたしは当時のキャンペーンは「本当にやってるんだー」と思ったくらいで、特に嫌な気持ちはしませんでした。当時の2ちゃんねるのスレッドはこちら*1です。
*1:「【経済】砂時計置いて「60秒サービス」 マクドナルドが開始」 『2ちゃんねる』スレッド
http://mimizun.com/log/2ch/newsplus/1054303960/
忙しい人のためにざっとまとめると、このときは、「マクドナルドはまずい。安いだけなので早く出されても行かない」という意見が多かったのです。「アルバイトの人かわいそう」という意見もありますが、まだ少なめです。
わたし自身はマクドナルドが特にまずいと思うことはなくて、月に1回くらい食べたくなる、カップヌードルや天下一品と同じ位置づけの食べ物で、まずいという人がふだん何を食べているのかを知りたい気がしますし、おそらくマクドナルドの基本メニューの味を変えたら、たとえおいしくなったとしても、小さいころから慣れ親しんでいたお客さんが来なくなってしまいます。それはともかく、前回のキャンペーン、60秒を超えたらポテトの無料券がもらえましたが、今回のキャンペーンは「バーガー類はなんでも」で、サービスはかなりグレードアップしていますが、むしろ評判はよろしくない。ここなどの反応をざっとまとめると、
・ 早く出そうと思うあまり作るのが雑になっている
・ 社長は何を考えているんだ
・ アルバイトの人がかわいそう
というところでしょうか。「作るのが雑になっている」話については、明らかに日本のものではない写真を載せている人もいたりするので、キャンペーンがないときと比べてどれくらい雑なものが増えているのかなと思いますが、問題なのは2番目と3番目。2番目については、10年前は原田社長はまだアップルにいたころで、原田社長のジャストアイデアというわけではないし、自分が経営者だったら「久しぶりにあれやるか」という話をしたと思いますが、10年前の反応とは違って集中砲火を浴びています。客としてはそんなに損しない話だというのに。
そして3番目については、わたしも同じ意見で、最初にこのサービスについて聞いたときに、「なんか店の人がかわいそう」と思ってしまいました。10年前にはそこまで思わなかったのに。10年前というと、まだ「就職氷河期」という言葉が使われていて、つまり間氷期がこの後にくることが前提のネガティブでありながらも実はポジティブな言葉が使われていた時代です。
つまり、ここ10年で、客という立場のときでもお店で働く人の気持ちを考える人が増えてきているということだと思います。それは優しい人が増えたという話とはちょっと違います。てんてこ舞いで働く姿を見て、他人事とは思えないという気持ちに近いです。どの仕事でも労働環境は悪くなっているので、この60秒サービスに従業員としての自分の姿を見るような気持ちになってしまうのだと思います。
実際、わたしは、マクドナルドでちゃきちゃき働いている老齢のアルバイトさんを見て、「もし将来この仕事についたら、ここまでちゃんとできるだろうか……」と不安になってしまいます。
利潤の追求と同じくらい顧客満足を優先するがゆえに従業員に負荷をかける会社は少なくないのですが、いくらサービスを厚くしても、その結果として従業員がつらそうに見えてしまうのであれば、かえって顧客満足度が下がってしまう……という話でした。
執筆: この記事はココロ社さん(http://d.hatena.ne.jp/kokorosha/)からご寄稿いただきました。
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