今回はふとい眼鏡さんのブログ『誰かが言わねば』からご寄稿いただきました。
■右傾化する人達が根本的に分かっていない一つの事実(誰かが言わねば)
太平洋戦争を全面的に総括しようとすると、どうしても納得できないことにブチあたってしまいます。
それは、なぜ敗戦国の戦争責任だけが問われて戦勝国の戦争責任が問われないのか?という話です。
太平洋戦争のアメリカ軍による日本への空爆は、最初は軍事施設や軍需工場だけをターゲットにしたものでした。しかし日本側がなかなか音をあげないために、民間人の家屋も空爆の対象に加えました。アメリカ軍は日本の木造家屋を燃やすための焼夷弾と呼ばれる爆弾をわざわざ開発しました。そうやって意図的に、非戦闘員を街ごと焼き殺した行為が罪でないとはどうしても思えません。
従軍慰安婦の話も同様です。日本軍の従軍慰安婦制度には一部で軍関係者による強制があったことは間違いないでしょうし、それはもちろん罪です。しかし第二次世界大戦当時、軍隊が性犯罪をまったく犯していない国はありません。慰安所という仕組みを作ったのは日本やドイツ等の一部の国に限られますが、慰安所を作らないかわりに兵士の強姦を見て見ぬフリで済ませていた国々には罪がないなどと言えるでしょうか?にも関わらず、戦勝国側の性犯罪について触れることはタブーとなっています。これはどう考えても公平ではありません。
右傾化しつつある人達は上記のような点に納得できないため、戦勝国側の主張をすべて受け入れるのは売国的行為であるように感じてしまいます。
しかしここにひとつ大きな事実誤認があります。
つまり右傾化する人達は、自分達が生きている世界は「正しいことが正しいことと認められる完成された公正な世界」であるはずだと勘違いしているわけです。残念ながら我々が生きている現代の世界は「欧米を中心とする偏った価値観が幅をきかせている世界」であり、「第二次世界大戦の戦勝国側が第二次世界大戦から得た利益を手放そうとはしない程度の野蛮な世界」なのです。
彼等は牛を食べるのは残酷ではないがクジラや犬を食べるのは残酷で非人道的だ、と彼等の主観を押しつけてきます。野生動物を食べるのは残酷だが家畜を食べるのはかまわないというのも彼等の主観に過ぎません。客観的に考えれば、生まれる前から食べられると決まっている状況も十分に残酷です。そして彼等は敗戦国のおこなった人道に反する行為は明らかにするべきだが戦勝国がおこなった人道に反する行為については触れるべきでないと考えています。
我々敗戦国の側が戦勝国の戦争責任の話をほじくり返すと、欧米各国は日本を強く警戒します。それは彼等にとって触れられたくない古傷なのです。もし我々が「正しいことが正しいことと認められる完成された公正な世界」に生きているのであれば、欧米各国は自分達の戦争責任についても認めてくれるでしょうし、日本の右傾化よりも中国の軍事費の膨張の方がより危険な問題だということにも気づいてくれるでしょう。しかし「第二次世界大戦の戦勝国側が第二次世界大戦から得た利益を手放そうとはしない程度の野蛮な世界」では、欧米各国は中国の軍事費の膨張よりも日本の右傾化の方をより強く警戒します。
今現在の世界では、たとえ正しいことであっても主張の仕方やタイミングを間違うと国際的に孤立するということがありえます。残念ながら現状では、戦勝国の戦争責任を堂々と問うことはできません。今は「我々はまだ、その程度の野蛮な時代に生きているのだ」と飲み込むしかありません。
この不完全な世界でいかに生き抜くべきかを考えるなら、ムキになって靖国神社に参拝しても国際的な立場を悪くするだけで何のメリットもないと分かるはずですし、国際世論を味方につけるためにはどう振る舞うべきかも分かるはずです。隣国の挑発には毅然とした態度で冷静に対応し続けるしかありません。汚い言葉を吐いても、下品な報復をしても、こちらの立場が悪くなるだけなのですから。
さて、あなたはどう思いますか?
「右傾化のメカニズムを三段階に分けて説明」へ続く
「右傾化のメカニズムを三段階に分けて説明」 2014年04月19日16:15 『ガジェット通信』
http://getnews.jp/archives/556369
(※上記の時間以降に閲覧いただけます。)
執筆:この記事はふとい眼鏡さんのブログ『誰かが言わねば』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2014年04月18日時点のものです。
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