今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
■体罰考(1) 異常なことと、考えなければならないこと
今から10年ほど前に、小学生の自殺が「流行」したことがありました。毎日のように小学生の自殺が報道され、「自殺など報道するから、それをまねる小学生が出るのだ」との批判もでたぐらいでした。
その時、私は「社会現象とは、ある分布の中での特別な状態を示すと全体像がわかるから」という解説をしたことがあります。少し難しいので解説をします.
たとえば「世の中がすさんでいるか」とか「小学生は幸福か」ということを調べようとすると、一つは、小学生全体にアンケートを出して調査するという方法があります。でも、理想的なように見えてあまり成功しません.
もう一つは、小学生全体では無く、特殊に不幸な例(たとえば自殺)を調べて、それが増えれば小学生の幸福度が下がっていると判断する方法です。この方法は「小学生の幸福度に関する「分布」が変わらない限り、特殊な例から平均的な動きを知ることができる」という原理に基づいているので、学問的にも間違ってはいません。
「スポーツが盛んか」と言うことはオリンピックのメダルの数である程度はわかりますが、その時に、特殊な補助金制度などができると、これもまた素直に比例しているかどうかはわかりません。
いずれにしても、直接全体を調査するのと、一部の特別な例を見るのと二つの方法がありますが、いずれも「本来は特殊な例を無くそうとしているのでは無く、全体を良くすれば自然に特殊な例も無くなっていく」という考えが健全なのです.
全体を良くする方法として私が推薦しているのは「芋ずる方式」で、「特殊な悪い人」を罰するのはほどほどにして起き、「特殊に良い人」を目立つようにすると、全体が「良い方に引きずられる」」と言うことです。
2013年が明けてすぐ、問題になった高校2年生の体罰と自殺の問題について、現在の日本では問題となった先生のバッシングが盛んですが、特殊な例ですから、それを通じて現代の日本のスポーツの教育問題の変化を考え、むしろ「芋ずる式の議論」をする方が良いと思います.
時間があればシリーズでこの問題を考えていきたいと思っています.
執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
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